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颱風・青空・初合宿~1970年代初めの思い出~

夜を徹した議論が一段落した早朝、ユニットハウスのセミナー室の扉を開けると、颱風一過、初秋の冷気の向こうに高く澄んだ青空が拡がっていた。
入口の斜め前の立木が、少し見上げる程の位置で折れて倒れ、眼前の小径をふさいでいる。
昨夜の嵐はとても激しかったが、私達の仲間で、倒木に気付いた者は誰一人いなかった。

あれは1970年代初めのことだから、1965年開館のセミナーハウスが7周年を迎えた頃だったろうか。
文系・理系を問わず集まった1~2年生が半年間参加したのは、松尾浩也先生(刑事訴訟法)主催の≪生命の尊厳と法律≫という「自主ゼミ」で、その1泊2日の合宿が、私にとっての今でも忘れられぬセミナーハウス初体験となった。
当時は出雲から上京するのにほぼ丸一日を要したが、都心から一時間程の移動で、野猿でも出そうな自然の中で徹夜の議論を交わす合宿が出来ることだけでも、大きな驚きであり、この上もない幸せだったことを想い出す。
津田塾大学英文学科教授、千人会会員
村上 健