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大学セミナーハウスの思い出

松田智雄(東大)、大野英二(京大)の両先生のお供をして、セミナーハウスにはじめてお邪魔したのはいまから半世紀も前、開館直後の、まだ本館しかなかった頃のことだ。
それ以来ずいぶんお世話になったのだが、一番思い出深かったのは1990年代に、気の合った3人の若い友人たち(鈴木健夫[早大]、小島修一[甲南大]、佐藤芳行[新潟大])とウェーバー「ロシアの外見的立憲制への移行」の研究会を長期にわたって開催したことだ。
閑静な環境の中で朝から自由闊達に議論し、午後には疲れると散歩し、夜に入っては氷片の浮かんだウィスキーも加わって、作業は快調にはかどったものだ。
その成果を訳業として上梓することができた(マックス・ウェーバー『ロシア革命論II』名大出版会、1998年)。
翻訳の共同作業の成功にはメンバーの人選が決定的に重要であることをこの時に知ったが、同時にセミナーハウスの環境の良さもそれに劣らず重要であったと思う。
東京大学名誉教授、千人会会員
肥前 榮一