セミナー・イベント

古田武彦記念古代史セミナー2023

セミナー実施報告

期間 2023年11月11日(土)~12日(日)
場所 大学セミナーハウス (東京都八王子市下柚木1987-1) ・
Zoomミーティングルーム
主催 公益財団法人大学セミナーハウス
共催 多元的古代研究会 東海古代研究会 東京古田会 古田史学の会
参加状況 58名(会場参加者36名・オンライン参加者22名)

【趣旨説明・開会挨拶】「倭国から日本国へ」

荻上紘一実行委員長
(セミナーハウス理事長/館長職務代行) 

 「古田武彦記念古代史セミナー」は、今回が6回目になります。近年のテーマは、卑弥呼の時代(3世紀)、倭の五王の時代(5世紀)、「日出づる処の天子」の時代(7世紀)と続き、今回は「倭国から日本国へ」をテーマにしました。
 「卑弥呼が何処にいたか」、「倭の五王が何処にいたか」、「日出づる処の天子が何処にいたか」などは、それが完全に解明できているか否かはともかくとして、客観的な議論が可能な設問です。
 それに対して、「倭国から日本国への移行は何時どの様に行われたか」は政治的要素を含む複雑な設問です。国際的に日本列島を代表していた国は、3世紀には倭国であり、8世紀には日本国であったことは客観的な事実(史実)ですが、倭国と日本国との関係については、「倭国の版図」、「日本国の誕生と版図」などまだまだ客観的には解明されていない難問が多く、今後の研究の進展が待たれます。このセミナーがその一助となることを願っています。
 物語として古代を語るのは夢がありこの上なく楽しいのですが、古代史学においては科学的な「史実」の解明が基本であり、その作業即ち「証明」は客観的且つevidence-basedでなければなりません。「それでも地球は回っている」は科学的ですが、「それでも邪馬台国は近畿にあった」は科学的ではありません。
 今回のセミナーでは「倭国」と「日本国」に焦点を合わせることにより、7〜8世紀の真実の歴史に迫りたいと思います。セミナーは、『邪馬台国の滅亡 大和王権の征服戦争』(吉川弘文館 2010)や『謎の九州王権』(祥伝社 2021)で知られる若井敏明先生の特別講演をお聴きした上で、古田先生の古代史学の研究方法と研究成果を再確認しながら、倭国から日本国への移行に関するevidence-based historyについて建設的な議論が盛り上がることを期待しています。そのために設定した2つのセッションは、講演とパネルディスカッション及び質疑応答を組み合わせる構成にしてみました。
 このセミナーは、研究者のみならず、古代史に関心を持つ全ての人を歓迎します。このセミナーが、若い人々が真実の古代を覗く窓になれば幸いです。
 このセミナーは、大学セミナーハウスと多元的古代研究会、東海古代研究会、東京古田会及び古田史学の会が共同で開催します。 
実行委員長 荻上紘一

【特別講演】「『日本書紀』よりみたる古代ヤマト王権の成立と発展」 若井敏明先生

 いわゆるヤマト王権の成立と発展については、これまで中国の史書や考古学の成果をもとに論じるのが一般的だった。その一方で、ヤマト王権の後身である律令国家も、『古事記』や『日本書紀』という史書を編纂して、みずからの来歴を記しているが、それらの伝える情報はあまり重視されてきたとはいいがたい。たしかにそれらが編纂されたのは、問題としている時代から隔たった時期であり、また多分に伝説化した記述もあり、年代も実際よりは古く編年されているなど、問題点も多い。またその編纂に政治的意図をみようという見解も根強い。しかしながら、それでもなお、律令国家が伝えるみずからの歴史を顧みないのは、ただでさえ資料の乏しいこの時代を考えるうえで、けっして望ましいことではないと私は考える。本講演では、日本側の史書、とくに『日本書紀』の記述からヤマト王権の歴史を復原し、その有効性について、その限界も含めて示してみたいと思っている。

若井敏明先生プロフィール:
 関西大学・神戸市外国語大学非常勤講師。1958年生まれ。博士(文学)。著書に『平泉澄』(ミネルヴァ書房、2006年)、『邪馬台国の滅亡』(吉川弘文館、2010年)、『仁徳天皇』(ミネルヴァ書房、2015年)など。

若井敏明先生との質疑応答

【記念撮影】

若井先生を囲んで、記念撮影

【講 演】

 古田武彦先生が他界された後も先生に学んだ方々が各地で研究を継続されています。
今年度は、「倭国から日本国へ」テーマに7世紀後半から8世紀にかけての謎に迫りました。
 若井敏明先生の特別講演をお聴きし、古田先生の業績に基づく論点整理を大越邦生氏により再確認した上で、5名の方に講演をお願いしました。

 第1日目
 ・若井敏明先生の特別講演「『日本書紀』よりみたる古代ヤマト王権の成立と発展」
 ・大越邦生氏の論点整理 「そうだったのか『倭国から日本国へ』」

 第2日目
【セッションⅠ】 理系から見た「倭国から日本国へ」
【セッションⅡ】 遺構に見る「倭国から日本国へ」 

 その詳細は、講演原稿(各講演タイトルをクリックすると表示されるPDFファイル)をご覧ください。
 尚、講演原稿は、事前に各参加者に配布したものと同じものをご覧いただけます。

特別講演司会 大墨伸明氏

【論点整理】大越邦生氏

【古田武彦氏の業績に基づく論点整理】 

【セッションⅠ】 理系から見た「倭国から日本国へ」………司会 大墨伸明氏

谷川清隆氏

川端俊一郎氏

谷本茂氏


【パネルディスカッション】
谷川清隆氏、川端俊一郎氏、谷本茂氏、大越邦生氏、大墨伸明氏(司会)

パネラーの皆様との質疑応答

【セッションⅡ】 遺構に見る「倭国から日本国へ」………司会 橘髙修氏

セッションⅡ司会 橘高修氏

新庄宗昭氏

古賀達也氏


【パネルディスカッション】
新庄宗昭氏、古賀達也氏、谷本茂氏、和田昌美氏、橘髙修氏(司会)

パネラーの皆様との質疑応答

【情報交換会】…………司会 西坂久和氏

 今年度は、会場参加とオンライン参加の皆様で、第1日目夕食後に情報交換会の場を設けました。
 
 初めに古田光河氏より「古田武彦古代史研究会」のご紹介と「古田武彦の方法論について」と題する講演がありました。
 その後、初参加の方を中心に、ご紹介とコメントをいただき、皆様楽しんでいただけたようでした。
 

古田光河氏

情報交換会でお話しいただいた皆様

【閉会】

荻上紘一実行委員長


 今年度は、特別講演に若井敏明先生をお招きし貴重なお話を聴いていただきました。そして、古田武彦先生の研究業績について改めて確認し活発な研究交流が行われました。
 最後に、
荻上紘一実行委員長から総評と来年度に向けてのお話をいただき閉会となりました。

 当セミナーの開催に当たって事前の企画立案から当日の司会進行及び講演まで務めていただいた8名の実行委員の方々に感謝申し上げます。
 今年度も、会場参加とオンライン参加のハイブリットセミナーという形で開催させていただき、全国から多くの方々にご参加いただきました。ご参加の皆様に心より御礼申し上げます。
 また、「古田武彦記念古代史セミナー」は来年も開催を予定していますので、是非ご参加ください。

【参加者アンケート紹介】

 ご参加者の方から沢山の感想とご意見をいただきました。今後のセミナー開催の参考とさせていただきます。アンケートにご回答いただきました中から、一部をご紹介させていただきます。


【特別講演】「『日本書紀』よりみたる古代ヤマト王権の成立と発展」(若井敏明氏)について
・日頃、書紀を否定する資料を読むことが多く、新鮮だった。
・津田左右吉の話は、とても面白かったと思います。
・一般の研究者の中から、魅力的な研究をされている講師を、お招きしてくださってありがとございます。
・倭国から日本国への移行時期については、古田先生の見解と異なるが、研究姿勢・方法については、ほぼ同様な姿勢である と理解しました。異なる意見にも耳を傾け、また翌日のセミナーにも参加いただき、良い印象を持ちました。
・素晴らしい。書紀の重要性について改めて目を開かされた。

【論点整理】「そうだったのか『倭国から日本国へ』」(大越邦生氏)について
・古田先生の話をわかりやすく解説してもらえて、よかったです。
・古代史には全く興味のない愚妻も、このビデオは熱心に見ていました。古代史に造詣の深い方も愚妻のような素人にも楽しい映像でした。まとめるのは大変だったと思います。ありがとうございました。
・分かり易く、とてもよかったです。 ぜひ、インターネット等での公開を検討して下さい。
・極めて客観的かつ冷静な分析・表記であったように思われた。
特に,白村江の戦いから701年の日本国成立の間を,古田先生の「筑紫の君薩夜麻を利用するため倭王として帰還させた」との見解をのせずに,あえて「空白期間」としたことは,今回の議題との関連もあってのことだとしても,十分納得できるものであった。

【情報交換会】について
・活発な討論が展開されました。
・古田光河さんの 「古田武彦 古代史研究会」ホームページの紹介は、よかったです。

【セッションⅠ】「理系から見た『倭国から日本国へ』」(講演:谷川清隆氏、川端俊一郎氏、谷本茂氏、パネルディスカッション)について
・データを積み重ね、日本古代史に新たな光を、与え続けられていらっしゃいます。ディスカッションを聞き今まで知らなかったことなど、大変勉強になりました。一般の方にも、公開できないものでしょうか。
・聞いたことのないような話題の連続で、驚いたり楽しさを感じたりしました。内容が専門的に過ぎて分からないところが多かったのですが、楽しかったです。
・谷川先生を、谷本様を、来年も発表者・パネリストとして招待してください。
・講演者の時間が30分では短く、40分ぐらい必要ではないかと思います。パネルディスカッションの企画は素晴らしく、来年度も続けて下さい。
・谷川さんの天群・地群の話し参考になりました。

【セッションⅡ】「遺構に見る『倭国から日本国へ』」(講演:新庄宗昭氏、古賀達也氏 、パネルディスカッション  )について
・もう少し、時間があるとそれぞれの講師の発表が最後まで聞けたと思います。セッション1でも思いました。内容が濃かったです。今後の研究が楽しみです。
・私の学習がまだ十分でなく、考古学が絡んだ発表になると理解がついていけない所があります。
しかしながら、こうしたお話の中で、新たな知識も得られました。満足しています。
・これについても,発表内容やその後のデスカッションを聞いても,遺構解釈の問題にとどまり,当初司会者が三つの論点に絞っての討論とされていましたが,「倭国から日本国へ」の主題には辿りつかなかったかのような印象でした。
・セッションⅠの議論と絡めた議論を期待したいです。

今回の「古田武彦記念古代史セミナー2023」を総合評価してください。
・今回の「倭国から日本国へ」の解明はまだ不十分と思います。更なる進展を望みます。
・開催されたことに敬意。出席できたことに感謝。願わくば、次回も出席させていただきたい。
・パネルディスカッションも楽しい企画で大満足です。時間が足りなくなるのは仕方ないですね。
・時間制約のなかでも、一同が集まりデスカションする事に意義を感じます。

他にどのような課題を取り上げてほしいと思いましたか。
・1,「倭国から日本国へ」更なる進展。2,国号の変化と政権内部人事の変化
・倭国の事象をヤマト王権のこととしていることがあるように思います。その当たりのことを詳しく解析して欲しいです。
・古田先生が取り扱ったテーマについての、最近の研究動向。学会や学者による古田先生の著作参照の状況。
・①古田武彦先生の方法による万葉集の解読。②壬申の乱③古代船・古代馬・古代の人口論
・〇古代船、古代馬、古代の人口論の研究者の方のお話が聞きたいです。万葉集も古田先生は再解釈しています。〇古田説にもとづく万葉集の話をしていただける方はいかがでしょうか?〇壬申の乱
・倭国→日本国への推移はよくわかりました。更に分かりやすく発表できればと思います。
・①九州年号と書紀 ②天皇名と旧名の関連は

実行委員会

【実行委員長】
 荻上 紘一
【実行委員】 
 大越  邦生
   大墨  伸明
 橘高 修
 畑田 寿一
 西坂   久和
 冨川 ケイ子
 和田   昌美

開催状況

お問い合わせ

公益財団法人 大学セミナーハウス・セミナー事業部
 TEL:042-676-8512(直)FAX:042-676-1220(代)
 E-mail:seminar@seminarhouse.or.jp
 URL:https://iush.jp/
 〒192-0372 東京都八王子市下柚木1987-1