セミナー・イベント

第8回 EUセミナー
「再生するEUと世界」

実施報告

期日 2019年12月13日(金)~15日(日)
会場 大学セミナーハウス
主催 公益財団法人大学セミナーハウス
後援 駐日欧州連合代表部

趣旨

EUはその幹部の任期満了に伴い、秋から新体制になります。 トランプ政権のアメリカ第一主義に翻弄される世界ですが、10月末を期限とするイギリスのEU離脱、米国との関税摩擦、イラン核合意問題に直面しながら、EUは新たに共通防衛政策や共通予算などの次の統合段階に進もうとしています。 新しい布陣となったEUは今後どのように進んでいくのでしょうか。皆さんと考えたいと思います。
(EUセミナー企画委員長 渡邊啓貴)

開会式  12/13

開会会場模様


 

大学セミナーハウス鈴木康司館長挨拶

大学セミナーハウス鈴木康司館長挨拶

鈴木館長挨拶全文
回EUセミナーに参加された皆さんを心から歓迎いたします。当セミナーハウスはグローバルアカデミーセミナーとしてアメリカ、中国、EUと、現在の世界政治で最も重きをなしている3つの存在を取り上げております。今年度はアメリカ、中国は既に終わりました。最後を飾るEUセミナーの成功を大いに期待しております。
いつものように企画委員長の渡邊啓貴先生をはじめ、委員、公使の先生方の全般的なご協力の元、このセミナーが立派に成立したことを感謝申し上げます。
今日のメディア報道によりますと、イギリスの総選挙はどうやらEU強硬離脱派のジョンソン首相が率いる保守党の勝利によって1月末のBrexitは決定的になったようでありますが、EU側から見ても今更なんだという感じはぬぐえないのではないでしょうか。
今年はちょうどEU首脳部の任期満了に伴う交代期に入り、先般、今後のEUのかじ取りともいうべき新首脳部が決まりました。このうち、EU理事会議長、すなわち実質的にEU大統領になった元ベルギー首相のシャルル・ミシェルが、先頃、フランスの新聞ル・フィガロのインタビューに答えた記事を、たまたま読みましたので、ご紹介してみましょう。ただし、日本のどこかの新聞と同じくフィガロ紙も最初の総括記事以外は定期購読者しか読めないようになっておりますので、大づかみなことしか言えませんが、フィガロの記者の「EUは国際舞台においていかなる一を占めるべきか?」という質問に対して彼は大要次のように答えておりました。「EU理事会はイギリスの総選挙だとか、アメリカ大統領のツイートだとか、移民や難民に関するトルコの強引な主張などに対するだけでよしとはしない。我々自身、EU圏外の政治日程を次々と展開してゆくべきである。例えば貿易面では中国とアメリカの不確定で副次的な約束事の犠牲になるわけにはいかない。我々の力を基盤として公正な条件下での競争の保証が必要だ。EU圏には5億人の消費者がいるのだから。」
シャルル・ミシェルはこのように強い意志を示しておりますが、まだ就任早々で、彼とそのスタッフを待ち受ける政治・経済情勢がどのような展開を見せるか、イギリスのBrexitの影響次第でこれもまた不確定ではないかと思います。
このセミナーで講師の先生方がいろいろな可能性についてお話しくださると期待しております。参加者の皆さんどうぞ素晴らしい成果を手にされてお帰りになってください。ありがとうございました。

【渡邊企画委員長趣旨説明】

【パネルディスカッション】 12/13

前左から、田中素香先生、武田健先生、福田耕治先生、小久保康之先生、蓮見雄先生、明田ゆかり先生、渡邊啓貴先生)

パネルディスカション会場模様

【分科会討論】12/13~15

EUセミナーは毎回各分科会の講師の先生から事前課題と参考資料を出します。参加者がセミナー開催まで、資料を調べ、課題を考えたうえセミナーに参加します。分科会討論は日のEUセミナーの中の時間割が一番長い。参加者が分科会の主題を解くため、一緒に関連情報を調べ、議論をし、再終的には根拠のある結論を結ぶようにして、全体会で発表します。今年は次のように四つの分科会に分けて議論を展開しました。
 

第1分科会

テーマ

世界経済の中の転換とEU

指導講師

田中 素香(中央大学経済研究所客員研究員、東北大学名誉教授)
太田 瑞希子(亜細亜大学国際学部講師)

第1分科会討論模様

主旨: EUは今、米国トランプ政権の反EU行動(発言や関税賦課など)、中国の「一帯一路」戦略と中国企業の進出によるEU分断、BREXIT(英国のEU離脱)が引き起こしかねない混乱という3つの困難に直面している。米中英3カ国の行動は世界の新時代到来を意味しており、EUは短期的および長期的に対応していかなければならない。第1分科会では米中英3カ国とEUの関係を多次元的に分析し、EUの立場と発展の方向性を探る。

第2分科会

テーマ
EUの新体制と市民社会
指導講師
福田 耕治(早稲田大学政治経済学術院教授)
武田 健(東海大学政治経済学部講師)

第2分科会討論模様

主旨:2019年、EUでは欧州議会選挙が行われ、欧州委員長、欧州理事会常任議長、外務・安保政策担当上級代表といった主要ポストの陣営も変わった。このEU新体制の重要課題の一つに、市民との間に強固な繋がりを築くことがある。欧州の人々はEUを遠い存在だと捉えがちである。EUに批判的な勢力は、その点につけこみ、EUに対する人々の懐疑心を煽ってもいる。EU新体制は、いかにして市民社会との繋がりを強化し、EUとしてのガバナンスの基盤を強化することができるのか、その方策をこの分科会は探ることとする。

第3分科会

テーマ

ブレグジット後のEU

指導講師

小久保康之先生(東洋英和女学院大学国際社会学部長・教授)
渡邊 啓貴先生(帝京大学法学部教授、東京外国語大学名誉教授)

第3分科会討論模様

主旨: 10月末に予定されているイギリスのEU離脱がまずどのような結果をもたらすか。①「合意なき離脱」となった場合のイギリス外交・対外的経済関係の行方、②北アイルランド問題、③排外主義的極右勢力が台頭するイタリアや東欧諸国の反EU勢力の台頭、④対中国政策・イラン合意をめぐるアメリカとの角逐など、多岐にわたる問題に直面するEUの将来について皆さんと一緒に考えてみたい。

第4分科会

テーマ 新たな日欧関係
指導講師 蓮見 雄先生(立教大学経済学部教授)
明田 ゆかり先生(獨協大学経済学部非常勤講師・元外務省経済局国際経済課課長補佐) 

第4分科会討論模様

主旨: 経済活動は易々と国境を越えて広がり、ルールの調和が求められている。だが、各地で狭い国益を強調するポピュリズムが台頭し、国際ルールの前提となるはずの民主主義や法の支配が軽んじられている。こうした中で、2019年2月、日EU間で経済連携協定(EPA)と戦略的パートナーシップ協定(SPA)が発効したことの意味は大きい*。日本とEUは、民主主義、法の支配といった価値を共有しているからだ。両協定は、「生きている(LIVING AGREEMENT)」と形容されるように出発点にすぎないが、日本とEUの人々が新たな国際秩序を共に築いていく新たな機会となる。こうした視点からEPA・SPAを具体的に検討していく。

【分科会中間報告】12/14

第1分科会中間報告

第2分科会中間報告

第3分科会中間報告

第4分科会中間報告

【分科会最終結果発表】12/15

最終報告会の司会・タイムキーパーは
立教大学の臼井康記さん、早稲田大学の青木佑馬さん、日本大学の岸知秀さんで交替で担当してくださいました。

第1分科会最終結果発表

第2分科会最終結果発表

第3分科会最終結果発表

第4分科会最終結果発表

【特別講演】12/14

テーマ The EU as a Global Actor-A new era for EU-Japan relations-
講演者 駐日欧州連合代表部副代表・公使 Mr. Francesco Fini(フランチェスコ・フィニ)氏
同時通訳 鬼頭真理

大学セミナーハウス理事長挨拶

講演中のフランチェスコ・フィニ氏

特別講演会場

【フィニ公使さんを囲む食事会】12/14

駐日欧州連合代表部副代表・公使フランチェスコ・フィニ氏を囲む昼食の模様

特別講演後の記念写真

【修了書交付】12/15

閉会式においては第8回EUセミナー出席証明書を参加者全員に配られました。参加者の皆様はそれぞれの講師を囲み、出席証明書を手に記念写真を撮影しました。

第1分科会

第2分科会

第3分科会

第4分科会

荻上紘一理事長より閉会の挨拶

【参加状況】計65名

慶應義塾大学1名、白百合女子大学大学院1名、創価大学1名、東海大学9名、東洋英和女学院大学17名、日本大学5名、立教大学22名、早稲田大学1名、高校生3名、社会人3名(特別講演参加者2名)

【参加者アンケート紹介】

<全体会について>
★今起きているEUにおける問題や現状を知る機会になり、学びの多い全体会でした。
★先生方の体験、本や他のメディアに出ていないことを知ることができてよかった。
★様々な教授から多画的な面でのお話がきけて有意義だった。

<分科会について>
★批判的なアドバイスも必要かなと感じた。
★EUとイギリス、EUと中国の関係の現状を学ぶだけでなく、今後の課題と私たちが何をすべきか、ということを考えるきっかけになった。
★知識不足だったけど、他大の人と意見交換し新しい視点を身につけられた。

<分科会中間報告について>
★少し準備時間が不十分であると感じたが、中間発表後に各分科会で話し合えたのは良かった。
★今後、どう研究をすすめたらよいかわかるように先生方が質問してくださった。
★発表するとき、うまくしっかりとした説明やはっきり話すことができなかった。

<特別講演について>
★貴重なお話を聞けて光栄だった。興味深かった。
★EUについて直接仕事されている人にお話しを伺うことができた。
★「自分の英語力がもっと高ければ、公史の回答を理解しながらきけたのに」と英語力のなさを痛感した。

<最終報告について>
★中間よりグレードアップできた。
★中間討論よりハイレベルな討論ができた。
★パワーポイントがとても見やすくなり、内容の理解に役立った。質疑応答では、あまり質問をすることができなかった。