セミナー・イベント

出会いの丘学長懇談会2024

大学セミナーハウスでは本年度初めて取り組みとして、全国の大学学長を対象とした『出会い丘学長懇談会2024』を11月15、16日の2日間に亘って開催しました。“本音で語り本気で動く”という本会の主旨通り終始活発に話し合いがされ、大変熱のこもった会となりました。
以下に詳細をご報告いたします。

実施報告

テーマ:大学経営の現状と課題 ~本音で語り本気で動く

  主 催:公益財団法人大学セミナーハウス
  日 時:2024 年 11 月 15 日(金)~11 月 16 日(土) 1泊2日
  会 場:大学セミナーハウス(東京都八王子市下柚木1987-1)
  参加者:24名 ※22大学(学長、理事長、教授、等)、2団体(理事)

【開会挨拶・開催趣旨】白井克彦 実行委員長

開会の挨拶をする 白井克彦 実行委員長

近年の急速な社会環境の変化に伴い、大学界には多くの新たな課題が山積しております。
同時に、 教育・研究活動を通じた社会貢献という根本的使命を果たすために、大学はこれまで以上に柔軟かつ迅速な動きが求められています。このような状況を踏まえ、大学セミナーハウスでは、大学の学長を対象に、 現状の課題を、これまでの大学改革論議に必ずしも囚われずに本音で議論し合い、実効性ある解決策を模索する場として大学セミナーハウス「出会いの丘」での「学長懇談会」開催を企画いたしました。
「出会いの丘学長懇談会」では、経営問題、政策課題、教学運営などの広範な分野の中から、今回は特に学生募集に焦点を当て、大学経営の現状と課題について深く議論いたします。基調講演と参加者間の意見交換を通じて、各大学の発展に寄与する実りある議論の場となることを目指しております。 (実行委員長 白井 克彦)

【講演Ⅰ】教育プログラムの魅力化〜教育を変え、教員を育て、成果を出す
     北陸大学教授 山本 啓一(YAMAMOTO Keiichi)

山本啓一先生

現在、大学教育の変革が迫られる一方で、改めて大学のあり方の再定義が求められている。本講演では、地方小規模私立大学で学部教育改革を実践してきた登壇者が、その経験から得た成果を3つのポイントとして紹介する。第1は、大学進学の意義や大学教育の価値を再定義し、多くのステークホルダーと共有することである。第2に、教育プログラムの魅力を向上させると同時に、特に若手教員の育成に注力し、協働体制を構築することである。第3に、その成果を基盤として、カリキュラム改革など組織的な教育改革を推進することである。リーダーシップとマネジメントを基盤に、“教育の魅力化”をいかに推進するか、具体的な方法を本講演で共有したい。
 
講演者プロフィール
1999年一橋大学法学研究科博士課程修了。2001年九州国際大学法学部に着任し、2008~2012年まで同大学法学部長をつとめる。2016年度より北陸大学に着任。2017~2020年度に経済経営学部長をつとめ、4年間で同学部の志願者を4.0倍、入学者を2.5倍に増加させた。初年次教育学会理事、広島大学高等教育研究開発センター客員研究員、日本看護学教育評価機構委員、河合塾研究顧問。全国で高校魅力化を手掛ける株式会社Prima Pinguinoとともに大学の教育魅力化支援にも携わる。

山本啓一先生 特別講演模様

【講演Ⅱ-オンライン-】高等教育の未来と学生募集の新戦略 ~社会的転換期における人材育成と地域活性化の視点~
     関西国際大学 学長 濱名 篤(HAMANA Atsushi)

濵名篤先生

昨今、弱小私大の退場促進政策ばかりが強調されているように感じる。退場する大学は不可避であろうが、大学が少なくなることだけが問題解決の途なのだろうか。日本社会全体を見渡せば、少子高齢化による人口減少、人手不足、地域間格差と地方の持続可能性、DX化をはじめとする技術革新に対応した新たな人材育成の必要性など、大きな社会的転換期にある。高等教育政策は単なる教育問題ではなく“社会政策”であるということが見落とされている。
 本発表では、学生募集を伝統的年齢層の日本人を巡る地域内での“ゼロサムゲーム”の発想から、新たな対象層への拡大のために必要な視点と対策について分析・提案する。第1に、収容定員に基準がシフトしたことに伴う転編入の活用。第2に留学生の受け入れの現状と課題、そして対応策。第3に、社会人の受け入れについてである。
 
講演者プロフィール
現職は学校法人濱名山手学院理事長・学院長、関西国際大学学長、専門分野は高等教育論、教育社会学。2005年より文部科学省大学設置・学校法人審議会(大学設置分科会)特別委員、中央教育審議会臨時委員を務め、現在は学校法人運営調査委員。
その他、(一社)学修評価・教育開発協議会理事長、(一社)大学都市神戸産官学プラットフォーム監事、(一社)大学コンソーシアムひょうご神戸理事、国際大学間の未来ネットワーク副会長を兼務。
(2024/07/01現在)

濵名篤先生 講演模様

【講演Ⅲ】学生募集のこれまでとこれから~定員割れ克服の軌跡と2040に向けて~
     共愛学園前橋国際大学 学長 大森 昭生(OMORI Akio)

大森昭生先生

共愛学園前橋国際大学は典型的な地方小規模大学で、約20年前に定員割れを経験しました。充足率60%台というシビアな状況でした。その後、ビジョンの再認識、マーケットの選択と集中、受験生視点・学生本位の学びの見直し、覚悟を持った入試戦略などにより、現在は小さいながらも過去最高の学生数となっています。
 しかし、現状が続くはずもないことはデータが教えてくれます。副部会長を務める中教審の特別部会では、2040年を目途に高等教育の在り方の議論を続けていますが、このままの形で皆が残ることは絶対にできません。受験生の視点に立ってアクセスを確保するためには、もう、一人で藻掻いている場合ではないのかもしれません。
 
講演者プロフィール
1996年に学校法人共愛学園に入職、共愛学園前橋国際大学国際社会学部長、副学長等を経て、2016年より学長。
文部科学省や内閣官房など政府の各種委員のほか、中央教育審議会では大学分科会、同高等教育の在り方に関する特別部会(副部会長)、教育振興基本計画部会をはじめ各種委員を歴任。
地域では群馬県青少年健全育成審議会会長、群馬県教育振興基本計画策定懇談会座長、県都まえばし創生本部有識者会議座長等各種公的委員を多数務める。
群馬県総合表彰(男女共同参画分野)、群馬県男女共同参画社会づくり功労者表彰。全国の学長が注目する学長ランキング3年連続1位(『大学ランキング』)

大森昭生先生 講演模様

【講演Ⅳ】大学経営の現状と課題~本音で語り本気で動く~
     ウニベルシタス研究所所長  大工原 孝(DAIKUHARA Takashi)

大工原孝先生

大学にとってこの大きなテーマは、なにが問題で、どう解決してくか、「議論のための素材の提供」を試みつつ、「今までの大学とこれからの大学」についてフォーカスしていきます。
項目としては、最近の志願者動向、中教審等の考え方、大学の特性、職員の特質とその変容、風土病からの脱出、学校法人会計基準の保守性、志願者の減少と金融資産、二極化する大学、地域アクセス権の確保、他人事から「自分事化へ」、教職学協働と教育研究実施組織、DX・AIの流れ、「3.5%ルール」と七つのアイデア・ヒント、学習する組織等を概観していきます。
 
講演者プロフィール
1978年3月日本大学大学院法学研究科修了(法学修士)。
同年、日本大学採用、芸術学部庶務課、本部総務課、情報センター開設準備室、秘書・人事各課長、学部事務長、学務部次長等を経て、総務部長・研究推進部長等を歴任。
2011年9月(~2014年9月)学校法人日本大学理事。
2019年2月日本大学を退職後、【ウニベルシタス研究所】を主宰。
外部では、大学行政管理学会会長、私大連調査委員、大学基準協会評価分科委員、文科省『教職協働』先進的事例調査協力者委員、私立大学外部評価委員、内部監査室主査等を歴任。
著作に「プロフェッショナル職員への道しるべ」他。

大工原孝先生 講演模様

【学長懇談会トークセッション】

 2日間にわたって4人の講師の先生にご講演いただき、講演ごとにグループディスカッション、全体ミーティングなどのトークセッションが行われました。
ここには学長だけでなく、理事長、副学長、名誉教授、現役の教授、他の法人の理事、懇談会の実行委員が参加し、本懇談会のコンセプトの通り、「本音」の意見が交わされました。
 参加者の所属する大学は地域、収容定員、学部構成、その他(女子大、短大など)が異なり、抱える課題も解決のためのアプローチも大きく異なります。
 それでも、各講演に熱心に聞き入り、その後の自由なトークセッションには「特定のテーマ設定ではないことで多様な課題が見えてきた」との意見もありました。懇談会の全体ミーティングで話題に上がった課題と交換された意見は多岐に亘り、全てを掲載することはできませんが、その一部を4つの項目に分けて紹介します。なお、これらはそれぞれの大学での事例として発言があったものです。
 

【懇親会】

歓迎の挨拶 荻上紘一理事長

DiningHallやまゆりで立食パーティー形式での懇親会を行いました。
荻上紘一理事長の歓迎の挨拶の後、参加者の皆様と講演者、実行委員がグループディスカッションでの熱い語り合いの勢いそのままに、語り合う姿が見られました。
約3時間という長い時間を予定していましたが、前半2時間は立ったままでグループディスカッションで話ができなかった方と語り合い、更に、最後の1時間は椅子に座って語り続けていらっしゃいました。
また、パーティの後に場所を変えてお話をしていただく場を設けましたが、約半数の方がこちらにも参加されていました。

【集合写真】

【閉会式】

閉会挨拶 鈴木将史先生

2日間に亘って行われたプログラムがすべて終了し、最後に創価大学学長であり本会の実行委員を務められた鈴木将史先生より閉会の挨拶をいただきました。

【参加者アンケート紹介】

 ご参加者の方から沢山の感想とご意見をいただきました。今後の参考とさせていただきます。アンケートにご回答いただきました中から、一部をご紹介させていただきます。

講演について
・育成する人材の明確化をし教育の質を高めて、中退予防を強化することで、結果的に学生募集に繋がること、国際的な情勢を踏まえた留学生対応の必要性、教職員を巻き込んだ開かれた大学づくり、教職学協働の重要性など、どのご講演も、大変有意義な内容でした。
・各講演ともに説明が具体的かつ説得力があった。
・教員コミュニティ作りからカリキュラム改革に取り組む山本先生の事例と、市場動向から学生募集戦略を考える濱名先生の事例と、どちらも大変参考になりました。学長としてはどちらの方向性(現場視点、経営視点)にもアンテナを貼り、両者をつなぐ役割があると感じました。


懇親会について
・グループディスカッションでお話できなかった先生方とも親しくお話させて頂くことができました。
・共通の悩みを抱える者同士が、ある程度腹を割って対話ができる環境作りに感謝いたします。Off Campusの効用です。
・人数も多すぎず、ゆっくりと懇談できたのが良かったです。

出会いの丘学長懇談会 全体について

・理事長及び学長のリーダーシップを再考する良い機会となるので継続して参加させて頂きたい。
・講演内容に特に目新しいテーマはないものの、話題提供としてはそれぞれ優れており、司会進行の山本眞一氏のソフトな口調でサマライズする流れが会場の開かれた雰囲気作りに大きく貢献。
・こういう機会を設けることこそが大事。中身はあとから付いてくるのではないか。本音で語り本気で動く、というキャッチフレーズはよく考えられた字句であると、あとになってから思うようになった。

 

【プログラム】

■ 1日目 11月15日(金)
時 間 内 容
13:00~13:20 受付
13:20~13:30 開会式・主旨説明(白井克彦実行委員長)
13:30~14:20 講演Ⅰ(北陸大学教授 山本啓一先生)
14:20~15:20 質疑応答/全体ミーティング①
15:20~15:30 大学セミナーハウス紹介映像放映①
16:00~17:00 講演Ⅱ(関西国際大学学長 濱名篤先生)  ※オンライン
17:00~17:30 質疑応答                ※終了後、濵名先生退席
17:30~18:20 グループディスカッション①
18:20~18:25 集合写真撮影
18:40~21:30 夕食(懇親会) 歓迎の挨拶(荻上理事長)
■ 2日目 11月16日(土)
時 間 内 容
07:30~08:50 朝食
08:50~09:50 全体ミーティング②
※前日のグループディスカッションの内容を共有
09:50~10:00 大学セミナーハウス紹介映像放映②
10:00~10:50 講演Ⅲ(共愛学園前橋国際大学学長 大森昭生先生)
10:50~11:50 質疑応答/グループディスカッション②
11:50~13:00 昼食
13:00~13:50 講演Ⅳ(ウニベルシタス研究所所長 大工原孝先生)
13:50~15:45 質疑応答/全体ミーティング③
15:45~16:00 閉会式・閉会挨拶(鈴木将史先生)

【実行委員会】

 委員長 白井 克彦 当法人常務理事、元早稲田大学総長
 委 員 荻上 紘一 当法人理事長、元東京都立大学総長
     鈴木 将史 当法人監事、創価大学学長
     山本 眞一 当法人理事、筑波大学・広島大学・桜美林大学名誉教授
     外村 幸雄 当法人専務理事・事務局長

お問い合わせ

公益財団法人 大学セミナーハウス・総合戦略室
 TEL:042-670-2731(直)FAX:042-676-1220(代)
 E-mail:comp1965.f@seminarhouse.or.jp
 URL:https://iush.jp/
 〒192-0372 東京都八王子市下柚木1987-1

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