開館50周年

私の地域史研究の原点

私が大学セミナーハウスを最初に利用させてもらったのは、1968年の事なので、すでに半世紀近い歳月が経過した。
東京経済大学の4年時で、色川大吉教授のもとで近代日本史を学ぶゼミナールの合宿であった。ゼミ長として宿泊交渉をしたが、東経大は会員校としてまだ登録されていないことが判明し、戸惑ったことを思い出す。東経大としては最初の利用だったかもしれない。この年の夏の色川ゼミの調査は、八王子の西部に隣接する五日市町の深澤家土蔵調査で「五日市憲法」を発見する機会に恵まれ、それを卒論としてとりあげた私にはいまでも強烈な記憶として残っている。

以来、八王子を中心にした地元研究者の集まりの多摩史研究会でも、利用する機会が増え、夜を徹しての報告や議論の場が思い出される。疲れると、そっと抜け出して多摩の夜空に満天の星を見た。

今、多摩史研究会の同志の訃報が次々と届いているが、私の地域史研究の原点がセミナーハウスである。
専修大学元教授、千人会会員
新井 勝紘