セミナー・イベント

第41回国際学生セミナー
「アジア・太平洋の歴史と未来―国際関係論と地域研究の視点から―」

実施報告

実施日 2014年11月22日(土)~23日(日) 1泊2日
会場 大学セミナーハウス(東京都八王子市下柚木1987-1)
※交通案内はこちら
主催 公益財団法人大学セミナーハウス
後援 富士ゼロックス株式会社

開催趣旨

今回の学生セミナーは、2000年から2006年にかけて大学セミナーハウス理事長を勤められ、昨年ご逝去された中嶋嶺雄先生(東京外国語大学元学長・国際教養大学前理事長)の追悼セミナーです。中嶋先生は中国の内外政の研究をはじめとして、アジア・太平洋地域の国際関係研究の発展に大きな貢献をなされたわが国を代表する研究者であり、教育者でありました。本年の国際学生セミナーは、故中嶋先生を偲び、先生が輩出された門下生を中心に企画いたしました。表題は中嶋先生が主催されたゼミ誌『歴史と未来』から来ています。アジア・太平洋地域を広範にカバーした議論が期待されます。
                  (第41回国際学生セミナー企画委員長 渡邊啓貴)

開催模様

開会式

開会の辞
(館長 鈴木康司)

開催主旨説明
(企画委員長 渡邊啓貴先生)

基調講演

「日中・日韓関係をどう見るか―国際秩序観念について」
                    拓殖大学総長 渡辺利夫先生

分科会講師講演模様

第1分科会「二十一世紀中国の戦略―習近平政権の狙いと将来」

濱本良一先生

(テーマ主旨)
屈辱の近代の克服を念頭に置いた「中華民族の偉大な復興」、「中国の夢」の実現をうたう習近平政権は、発足から2年余を迎えた。党、国家、軍の最高指導者である習近平へのさらなる権力集中と治安機構・軍の強大化の一方で、汚職摘発の推進や「テロとの戦い」を強調するポピュリズム的手法も顕著である。GDP世界第2位と実力をつけた巨大国家・中国の内政・外交を分析し、近未来を予測する。

第2分科会「変容する台湾と中台関係」

山崎直也先生

(テーマ主旨)
台湾では、民主的な総統(大統領)選挙による二度目の政権交代を経て2008年に成立した馬英九政権が対中接近を強める中で、今年3月、中国とのサービス貿易協定の批准をめぐり、政策決定過程の不透明性に異議を唱える学生らが立法院(国会)の議場を占拠するという異例の事態が発生した。日本を含め海外でも大きく報道されたこの出来事は、我々に政治における市民の役割という根源的な問題の再考を促す一方、中台関係、ひいては台湾という存在そのものの複雑性を改めて印象づけた。本分科会では、ポストコロニアル、国家分断、経済発展、民主主義への移行と定着、市民社会の成熟、多文化主義、ナショナル・アイデンティティと、様々な普遍的問題に独特の示唆をもたらす台湾の歴史・現在・未来を、「台湾とは何か?」という問いの答えを求めて発展してきた台湾研究の最新の知見を踏まえつつ議論していきたい。

第3分科会「中国の経済発展と香港の変容」

曽根康雄先生

(テーマ主旨)
中国の「改革開放」が進行する中で,本土と香港の相互依存関係も深化し,80年代末には「華南経済圏」と呼ばれるような経済圏が形成された。それは本土の経済発展を促すと同時に,香港の域内経済・社会構造にも影響を及ぼし,英国植民地下のレッセ・フェールの原則も変容してきている。1997年の中国への主権返還後も「一国二制度」の枠組みのもとCEPAの締結等により中国との共存共栄を図っているが,近年,2017年の行政長官の直接選挙の方法をめぐる議論も活発化している。中国の経済発展に果たしてきた香港の役割を認識した上で,香港の経済・社会構造の変化と政治的民主化への動きを分析し,香港の経験が「大国となった中国との付き合い方」のモデルとなり得るかについて,経済・社会の面から議論する。

第4分科会「日本と朝鮮半島の現在・過去・未来」

伊豆見元先生

(テーマ主旨)
来年(2015年)は6月に日韓基本条約締結50周年、8月に日本敗戦/朝鮮解放70周年を迎える年である。ところが、昨今の日韓間の政治・外交関係は良好とは言い難い状況である。韓国ドラマ「冬のソナタ」の大ヒット(2003~04年)に象徴された韓流ブームが想像できないほど、両国間の国民感情も平穏ではない。いっぽう、北朝鮮は核兵器開発を放棄する姿勢を見せておらず、金正恩体制には不透明さを拭えない。日朝関係の方向性も未知数だ。こうしたなかで2015年を迎えるにあたり、韓国と北朝鮮の情勢をどうとらえればよいのか、朝鮮半島との関係で日本は何にどう対処したらいいのか、日韓あるいは日朝のお互いの認識の溝はどこにあるのか。本分科会では、こうしたことを考える場としたい。

第5分科会「中国の膨張と東南アジア」

五島文雄先生

中国は、いまや「台頭する中国」ではなく「膨張する中国」と形容する方が良いのではなかろうか。本分科会では「南シナ海」と「大メコン圏」に対する中国の影響力増大とそれに対する東南アジアの対応を歴史的に振り返りつつ、その現状と未来をグローバル、リージョナル、ローカルな視点から考えたい。そして、日本が「膨張する中国」にどのように対処すべきかを議論したい。

第6分科会「ロシアの復活と東アジア」

名越健郎先生

「中露関係は史上最良」と中国、ロシアの指導者は盛んに強調する。確かに、両国は困難な国境問題を決着させ、二国間貿易は過去最高を更新。米国の一極主義に対抗する多極化外交でも一致する。だが、ロシア側には、貿易構造や中国人の流入、中国の中央アジア進出、中国軍の膨張などへの警戒感や不満が増幅しつつある。中露関係はソ連時代から複雑な歴史をたどり、長年対立を極めたこともある。かつてソ連が兄貴分だったが、現在は力関係が逆転し、ロシアが妹になったといわれる。本分科会では、中露関係の歴史と現状を分析し、将来を予測しながら、中露両国の対日政策も検討する場にしたい。

第7分科会「アメリカの新アジア戦略と中国の反応―米中両国民の相互認識の発想の原点も探る」

井尻秀憲先生

21世紀の世界情勢が刻々と変わるなかで、各地域の状況を分析するに際には米中関係のありようをベースにしておく必要がある。アメリカのアジア戦略はオバマ大統領のマレーシア訪問で「同盟国重視」が明らかとなった。かたや中国は、従来の「新型大国関係」のみならず、習近平政権が最近になって、「新アジア安全観」という政策を打ち出し、「多国間協力で米国に対応する」という従来にない発想でアメリカに対峙しようとしている。「二国間で対応する」ことにこだわってきた中国の発想は、なぜそのように切り替わったのか。アメリカの新アジア戦略はこれでいいのか。そして、常に米中関係のはざまにある日本は、いかなる戦略を打ち立てるべきか。本セクションでは、こうした問題を議論する。

分科会討論の模様

第1分科会

第2分科会

第3分科会

第4分科会

第5分科会

第6分科会

第7分科会

中間報告会模様

最終報告会模様

閉会

今年の第41回国際学生セミナーは中国、台湾、香港、韓国・朝鮮、東南アジア、ロシア、米・中等、テーマ通りの「アジア・太平洋地域」に焦点をしぼった分科会に分かれ、熱心な議論が展開されました。各分科会で議論の結果を全体会の報告によって共有することができ、視野をひろげるとともに、今後の各自の専門研究に質することが有益なセミナーでした。

参加状況

<大学等別>
国際教養大学21名、静岡県立大学22名、法政大学7名、日本大学5名、早稲田大学4名、拓殖大学3名、東京外国語大学4名、筑波大学2名、茨城大学1名、群馬県立女子大学1名、神戸大学1名、城西国際大学1名、東京理科大学1名、東京女子大学1名、中国天津師範大学1名、社会人6名、八王子都市大学いちょう塾7名