セミナー・イベント

憲法を学問するⅨ
司法の消極性と積極性
~違憲審査のLegitimacy~

実施報告

期間 2025年11月22日(土)~23日(日)
会場 大学セミナーハウス(東京都八王子市下柚木1987-1)
主催 公益財団法人大学セミナーハウス

参加状況

会場参加:学生20名、社会人 23名、計43名 東京大学(含む大学院)10名、早稲田大学(含む大学院)4名、東京都立大学(含む大学院)2名、東北学院大学3名、法政大学大学院1名
 

開催趣旨

「憲法を学問するⅡ」以来、久方ぶりに、「判例」をテーマに採り上げることになった。当時、4人の講師がそれぞれの判例解釈方法論の違いについて討論するパネル・ディスカッションを、フロアで聴いていた樋口陽一教授が思わず立ち上がって、「いま、歴史に残るような議論が行われているんですよ、皆さん!」と発言されたことは、記憶に新しい。「歴史的な議論」とは過褒の言であるが、合宿セミナーならではの率直な議論の応酬は、講師それぞれにとって学ぶところ多く、心地の良い体験であった。アンケートをみる限りでは、参加者のみなさんにとっても、知的興奮をよぶ時間になったようである。
 さて、今回の趣向は、「裁判官」である。前回の二番煎じにならぬよう、講師の間で討論をした結果、おのずから主題として浮かび上がってきた。戦後日本では、違憲審査制を採用しながらも、裁判官が民主的正統性を欠くために消極的な姿勢が目立ち、「顔のない裁判所」と呼ばれてきた。しかし、「トランプのアメリカ」にみられるように、混迷がめだつ海外の裁判所を尻目に、日本の裁判所は近年、着実に成果を挙げ始めているようにみえる。世界の立憲主義における「周回遅れのフロント・ランナー」になる日も近いのかもしれない。
かつて日本の最高裁を憲法判断積極主義かつ違憲判断消極主義と評した名著『司法の積極性と消極性』の著者も、現在では、「職業裁判官を担い手とする下級審の判断をきっかけとして憲法の意味が示されるという名誉ある実験」に注目している。その際、成功の軌跡を仔細に検討すると、当該事件が係属した小法廷には、必ず注目すべき裁判官がいて重要な役割を果たしていることがわかる。今回の「憲法を学問するⅨ」では、講師がおのおの注目する「裁判官」を具体的に念頭におきつつ、各々の主題を設定した。誰が念頭におかれているかは、フタを開けてみてのお楽しみ、というところである。
 
 
(「憲法を学問する」企画委員長 石川健治)

樋口陽一先生特別講義(参加申込者に事前配信)

仙台の樋口先生の仕事場にて

今回の「樋口陽一先生特別講義」は樋口先生と石川先生との対談でした。
参加申込者にはセミナー開催前に視聴していただきました。

参加者から次のような感想が寄せられています。(一部抜粋)
「お歳を重ねられてなお、随所に鋭い視点を示される姿に、改めておどろかされました。」
「樋口・石川両先生の対話内容については、興味深く聞き入ってしまいました。話が交錯しつつも昇華していくのも先生方ならではの対話の妙かと思います。」


 

開会の挨拶
大学セミナーハウス理事長 荻上紘一

大学セミナーハウスは本年、創立60周年の節目を迎えます。
50周年の記念事業としては、当時の館長のご発案のもと、樋口先生ならびに現在もご登壇いただいている4名の講師の先生方をお招きし、第1回憲法セミナーを開催いたしました。
以後、このセミナーは着実に歩みを重ね、本年で第9回を迎えるに至りましたが、第1回以来、一貫して同じ4名の先生方にご指導を賜っております。
また、参加者の皆様から高い評価を頂戴し、リピーターの多いセミナーとしても広く知られております。

講師によるパネルディスカッション  - 分科会へのプロローグとして -

憲法を学問するⅣ 講師

講師の先生方

4名の講師による、分科会へのプロローグとしてパネルディスカッションが行われました。
人に注目する時代、キャラが立ち始めた最高裁の裁判官。先生方が教えてくださる様々なエピソードに惹きこまれました。
参加者から次のような感想が寄せられています。(一部抜粋)
「木村さんの突っ込みが新鮮」
「4先生の四者四様の発言はとてもエキサイティングでした。」
「毎回、このパネルディスカッションを拝聴すると、続く2日間への期待が一段と高まります。」

パネルディスカッションの様子

【分科会】

分科会は1日目2時間半、2日目1時間半、合わせて計4時間行い、4人の講師の下で各テーマを論じていただきました。

参加者の方からは、以下のような感想が寄せられました。(一部抜粋)
「様々なバックグラウンドの方々の意見も伺えて有益なでした。」
「精神的自由をテーマにしてくださり、採用された判例も「表現の自由」をめぐる内容で、すごく刺激的でした。3回目の参加ですが、今回の分科会はとりわけ印象深いものでした。」
「多くの参加者にとっては日常の思考の延長なのかもしれませんが、私にとっては毎回、手の甲をかすっただけで脳みそから汗が吹き出るかのようで、しかし大変聞き応えのある内容でした。」
「今年もとても刺激的でした。参加者とのやりとりの中で、先生がいろいろと考えを発展・展開してくださるので、とても心地よく、ゼミに参加しているような楽しさが毎年あります。」

第1分科会「行政法学者の立憲主義」            
石川 健治(東京大学 法学部教授)

憲法を学問するⅨ 第1分科会

第1分科会

歴代の学者出身判事には、行政法学者が選ばれることが少なくなく、(御本人は職業裁判官としての自意識をおもちだったにせよ)京都大学や筑波大学・成蹊大学で行政法を講じた園部逸夫判事をカウントすれば、私の研究者人生を通じて、最高裁の第3小法廷にはコンスタントに行政法学者がいたことになる。
けれども、「法律による行政」の原理の実現に半生をかけてきた行政法学者が、憲法解釈論のイディオムに習熟しているとは、必ずしもいえない。日本公法学会という同一の学会を構成し、少なくとも年に一度は相互乗り入れの機会をもっているとはいえ、憲法学と行政法学にはカルチャーの違いがある。
なぜ2つの公法学にはカルチャーの違いが存在するのか?そうしたなか、憲法問題に直面した行政法学出身の裁判官は、どのようにふるまってきたのか?それを、具体的な最高裁判例を取り上げながら、一緒に考えてみようというのが、本分科会の狙いである。
 

第2分科会「精神的自由と客観法原則」
蟻川 恒正 (日本大学大学院 法務研究科教授)

憲法を学問するⅨ 第2分科会

第2分科会

司法の消極性と積極性という主題を日本の最高裁に即して検討する場合、精神的自由の領域の裁判例を取り上げることは、一つの重要な切り口になると思われる。
例えば、精神的自由にかかわる論点のなかでも、最高裁が、どのような論点に対して厳しい審査で臨み、どのような論点に対して緩やかな審査にとどめているかを問い、その差異をもたらしているものが何かを探ると、近時その「活性化」が指摘されることが多い最高裁の司法審査の動向の基底にあるものに迫ることができるかもしれない。
なお、考察を進めるに当たり、本分科会は、「主観的権利」と「客観法原則」という対抗概念を分析の座標軸として援用することを(目下のところ)考えている。
 

第3分科会「救済する司法」
宍戸 常寿 (東京大学法学部教授)

憲法を学問するⅨ 第3分科会

第3分科会

人権の最後の砦、弱者を守る法の番人としての役割が、裁判所には期待されています。その反面、まさに憲法の定める国家権力である「司法」として、裁判所の働きには制約が伴います。このような人権救済の限界への意識は、優れた職業裁判官ほど、強く感じているようです。この矛盾は、裁判所に違憲審査権が認められるのは何のためか、救済のための道具立てが不十分でないかなどといった、憲法訴訟の根幹に関わる問題です。一票の較差、夫婦別姓事件、性同一性障害特例法事件などの近時の最高裁の個別意見から、そうした課題を乗り越えて救済を実現しようとする、法律家らしい議論を捉えて、議論してみたいと思います。
 

第4分科会「家族と自然」
木村 草太 (東京都立大学 法学部教授)

憲法を学問するⅧ 第4分科会

第4分科会

この分科会では、憲法問題としての家族を扱います。フランス1791年憲法、そしてそれに続く欧州の諸憲法は、家族についての規定を設けました。1919年のワイマール憲法、1947年の日本国憲法もまた、家族規定を持っています。これらが何のための規定なのか。最新の最高裁判例のテキストを素材に掘り下げます。
この分科会のもう一つのテーマが、「制度と自然」です。憲法上の権利の中には、憲法以前から存在する人権のように見えるのに、法律で法制度を創設しないと存在し得ない権利があります。その謎めいた権利を、どう整理すべきなのか。みなさんと一緒に考えましょう。
 

【フリートーク】

1日目の夜は先生方を囲んで2時間のフリートークが行われました。
各テーブルを先生方が30分づつ順番に回っていただきました。
先生方の話を熱心に聞く参加者の方々の姿が印象的でした。

参加者の方からは、以下のような感想が寄せられました。(一部抜粋)
 
「適宜ファシリテートしていただき素敵な雰囲気のサロンになったと思います。 部会混成の座席指定にしていただけるともっと多岐にわたる話題になって面白いと思いました。」
「可能であれば、もう少し長い時間場所を用意していただき、さらに自由に行き来してお話を聞けるような形にしていただけるとより嬉しい。」
「席を固定して講師がまわる時間と、席を固定しない自由歓談の時間の両方を設けていただきたいです。」
「30分ごとに区切っていただけてとてもよかったようにおもいます。」

 

【分科会報告】

2日目に行われた分科会報告は、議論の成果を各分科会から発表していただきました。

参加者の方からは、次のような感想が寄せられました。(一部抜粋)
「報告を担当された方は皆さん立派で頭が下がります。」
「参加者のみによる報告と講師による報告があり、そのばらつきは気にならないのですが、 できれば、分科会ごとに参加者と講師の両者による報告があったほうが、論点とその受け止めも含んで、内容がより深く伝わるのではないかと思います。」
「分科会の直後に報告があるので、考えをまとめるのに少々苦労する。」
「他の分科会のことも参考となります。」

第1分科会

第2分科会

第3分科会

第4分科会

【総括討論・質疑応答】

 2日目、最後のプログラムになる「総括討論」が行われました。
講師の先生方の丁々発止のやり取り、それぞれのお考えや生活まで垣間見える貴重な時間となりました。

参加者の方からは、以下のような感想が寄せられました。(一部抜粋)
「特に昼休みの木村先生と蟻川先生の夫婦別姓の議論が面白かったです。」
「先生方の筋書きのない意見交換を拝聴できて刺激的でした。」
「全体の質疑応答の時間がもっとあったほうがよかったかもしれません。」
「今年は共通の前提が共有されていたため、議論が非常に追いやすく、拝聴していてとても楽しい時間でした。石川先生が指摘されていた、法廷意見が薄れ裁判官個々のキャラクターが前面に出る傾向が今後も続くのか、また続いた場合に「判例」ではなく「裁判官」を学者がリアルタイムで評価することがどのような影響を及ぼすのか、興味深く感じました。」

【閉会】

リピーターの多い本憲法セミナーでございますが、4名の講師の先生方の深いご見識と熱心なご指導、そして参加者の皆様の高い向上心によって支えられているセミナーであることを、改めて実感しております。
以下、参加者の方々からのご意見、ご感想です。
「たいへん濃厚な議論で有意義でした。多くを学びました。ありがとうございます。」
「これからもぜひ継続開催をしてほしいです。次回も参加します。」
「来年度も楽しみにしています。石川先生の分科会がいつ終わるかが基準になっている気もするので、石川先生の分科会が終わったら教えていただけるとうれしく思いました。」
「4人の講師の先生方の個性が垣間見える点が多くあったことが非常に面白かったです。法学を専門としている方からそうではない方まで様々な方と議論をし意見を交換することで、法が社会と共にあることが重要であるという点を確認することができ、非常に有意義な時間でした。」
「参加費が内容に比べて安すぎると感じる程に非常に有益で貴重な時間でした。今後も機会があればぜひ参加したいと思いました。」

憲法を学問するⅨショートムービー

(画像をクリックしてご覧ください。)

憲法を学問するⅧ  企画委員会

<委員長> 石川 健治 東京大学法学部教授  
<委 員> 蟻川 恒正 日本大学大学院法務研究科教授  
       宍戸 常寿 東京大学法学部教授  
               木村 草太 東京都立大学法学部教授  
<特別講義>樋口 陽一 東京大学・東北大学名誉教授  
 

開催状況

お問い合わせ

公益財団法人 大学セミナーハウス・セミナー事業部
 TEL:042-677-0141(直)FAX:042-676-1220(代)
 E-mail:seminar@seminarhouse.or.jp
 URL:https://iush.jp/
 〒192-0372 東京都八王子市下柚木1987-1

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2026