セミナー・イベント

第38回大学職員セミナー
大学職員の役割をあらためて考えてみよう

実施報告

期間 2018年10月18日(木)~19日(金)
場所 大学セミナーハウス
主催 公益財団法人大学セミナーハウス
協賛 公益社団法人学術・文化・産業ネットワーク多摩
後援 大学コンソーシアム八王子

参加状況 :27名・19校(順不同)

相模女子大学(4)、筑紫女学園大学(3)、尚絅学院大学・福岡大学(各2)、安田女子大学・弘前学院大学・皇學館大学・高崎経済大学・桜美林大学・札幌市立大学・静岡産業大学・静岡福祉大学・大阪保健医療大学・大東文化大学・中央大学・東京女子大学・日本女子体育大学・日本体育大学・梅光学院大学・防衛大学校(各1)
                                                  

趣旨

 大学セミナーハウス主催の「大学職員セミナー」は、今回で第38回を迎え、近年においては「大学職員の可能性を広げよう」を共通テーマに、先駆的な活躍をされている職員の方の事例発表や、学生支援、大学のグローバル化、入試、広報といった具体的な課題を掲げてセミナーを開催してきた。
 一方で、文部科学省をはじめ教育に関わる多くの機関で「大学職員の役割」について再確認され、望むべき「教職協働」の在り方について活発な議論がなされるようになってきた。
 2018年度は、近年における当セミナーの一つのまとめとして、「大学職員の役割についてあらためて考えよう」をテーマに大学職員の存在自体を再認識することを目的にした。
 今回は、山本眞一教授による職員の役割の変化に係る講演に引き続き、職員自身で職員の役割を考え直すディスカッションを行う。日ごろの仕事を離れた環境で、あるべき職員像を考える機会にしたい。ディスカッションの間には、大学運営の中枢で頑張っているリーダー層の職員によるパネル・ディスカッションを挟んで、より建設的なディスカッションを進めたい。迫りくる新時代において、私たち大学職員がどのような力を持たなければならないか。そうした議論の中から大学職員のアイデンティティを見直す機会にしたい。

開会にあたり
                       大学セミナーハウス館長 鈴木康司

 大学セミナーハウスが主催する「大学職員セミナー」も今回で38回目を数えます。公益財団法人、学術・文化・産業ネットワーク多摩の協賛、大学コンソーシアム八王子の後援をいただきながら、毎年夏・秋に開いておりますが、今年は7月に法政大学で開き、田中優子法政大学総長による講演のおかげで大いに盛り上がりました。秋は場所を本拠のセミナーハウスで開くのが慣例ですので、「大学職員の役割をあらためて考えてみよう」というテーマで行うことにいたしました。
 いつもながら企画委員長の法政大学常務理事近藤清之さんをはじめ、委員の方々の労を惜しまぬご協力のおかげをもちまして、開催されましたことを感謝申し上げます。
 大学、それも特に私立大学において、職員が占める重要度は年々増しております。学問上の指導をする教員と、学生生活全般にわたって協力、助言を行い、必要に応じて指導もする職員、今回はその職員に何が期待されているのか、その役割は何かについて長年の経験豊富な講師の方々にお願いいたしました。
 まずは基調講演として桜美林大学大学院教授の山本真一先生にお話をして頂き、さらにパネル・ディスカッションとしてリーダー職員お三方に、大学職員の役割についてそれぞれの大学におけるお立場から述べていただきます。
 山本先生は大学アドミニストレーション研究科教授という肩書をお持ちですが、東京大学法学部をご卒業後、文部省に入られて高等教育局、初等・中等教育局に勤められたのち、大学の教員として埼玉大、筑波大、広島大を経て現在は桜美林大学の大学院で教鞭をとっておられます、社会の変化に対応すべき大学、その行政やマネージメントをどう改革してゆくべきか、職員の仕事はどう変化してきたかなどご著書は多数ございます。
 パネルディスカッションでは、まず上智大学は、当セミナーハウス評議員の高祖敏明先生や、かつてカンボジアのポルポト政権下で壊滅的打撃を受けたアンコールワット遺跡の研究員たちの再教育や遺跡の修復に最大の貢献をされた元学長石沢良昭先生のおられる大学であり、学長補佐の三輪義彦さんはその間、大いに働かれたことと存じます。法政大学はこのところ大きな発展を遂げておりますが、その中心におられた総長、理事長清成忠男先生や、後を継がれて現在社会的にも大活躍の田中優子総長のもと常務理事として総長を支える近藤清之さんのご努力の一端を伺えればと存じます。
 さらに中央大学は八王子移転後、幾多の困難と闘いながら、変わらず法科の中央としての名声を保っております。今日の講師、 眞島和己さんは、実は、当セミナーハウスの外村幸雄専務とともに、学長室秘書課長として私の学長時代、陰ひなたなく支えてくれた方であります。現在は職員トップの事務局長兼理事として活躍中です。
 お三方、どなたを見ても、本日の講師として最高の方々と私は信じております。どうぞ皆さん今日、明日のセミナーで実りある成果を身に付けていただきますよう、願ってやみません。
 

■事前レポート発表・意見交換

 セミナーの参加者には事前にレポートの提出が課されている。その課題は3つ――①あなたが考える「大学職員が果たすべき役割」とはどういうものか、②「教職協働」という言葉が盛んに使われ、文科省の各種答申でも職員の役割の重要さが強調されているが、あなたが考える職員と教員との関係、役割分担はどうあるべきか、もし本来あるべき関係がうまく機能していないとしたらそれは何故か、どうすれば機能するようになるのか、③あなたの大学の誇れる点を3項目。
 提出されたレポートは『事前レポート集』としてまとめられ当日配布される。これをもとに、グループごとに初対面の参加者の自己紹介が行われた。

 

■基調講演
 大学職員に期待されること――職員論のパラダイム・シフト――
       桜美林大学大学院・大学アドミニストレーション研究科教授 山本眞一

 基調講演では、近年の大学改革の進行の中で、大学のあり方も「生き残り」という厳しい局面の中で、多様化・高度化を含む新たな論点が生まれつつある。職員のあり方も例外ではない。この困難な時代を乗り切り明るい展望を開くには、職員の能力の高度化は不可欠だが、同時に大学の日々の運営を着実に支える体制も見落とすことができない。職員の多様な役割をどのように考えればよいのか、職員論のパラダイム・シフトに関わる講演があった。
 参加者からは「職員は単なる”ジム”ではない、というキーワードが特に印象に残った」「大学を取り巻く環境はどのような経過を経て現在の形になったのか。詳しく解説していただいた」「「大学職員の役割について改めて考える機会となった」との感想が寄せられた。

■<特別企画>パネル・ディスカッション
 リーダー職員の語る大学職員の役割
                          上智大学学長補佐 三輪義彦
                       中央大学事務局長・理事 眞島和已
                          法政大学常務理事 近藤清之

右から三輪氏、眞島氏、近藤氏

 各大学において職員を牽引するリーダーポジションで活躍する3氏を招き、それぞれの経験や現状を踏まえ、大学職員の役割を再検証するとともに、競争性がより高まりかつAIをはじめとするICT技術の急速な普及が予想されるこれからの大学において、大学職員にどのようなパフォーマンスが期待されるか、パネル・ディスカッションを行った。
 短時間ではあったが、とても貴重な体験談とそれを踏まえた大学職員の在り方について多くの示唆に富む話題提供であった。いまはリーダー職員だが参加者と同様かつては「新入職員」。入職当時の体験や大学紛争当時の貴重な経験などの話は、これからの大学を担う若手職員のキャリア形成にとっても大いに参考になるものであった。「実際に経験された具体的事案を聞けて大変に参考になった」「これからの大学職員に必要とされる能力や人材のお話を噛みしめながら業務をしたい」「新しいものを生み出す、制度を作ることが楽しい、というお話が印象に残った。常に頭を使い汗をかき、大学を運営することを楽しめる職員でありたい」との感想が寄せられた。

■グループディスカッション、中間報告、総括討論

 各グループに課された課題は、今後、大学がどのように変化するかを考察し、その中で職員が牽引すべき大学改革とその中で果たすべき役割を考えること。議論に際しては、①(教職協働及び教職員の棲み分けを明確にしたうえでの)職員の役割の整理、②従来型(ルーチン)業務をどのように効率化していくか、③どのような領域・業務で活躍すべきか、④どのような能力・スキルを身につけ、経験を蓄積すべきか、の4点を踏まえて、さらに近い将来(5~10年後を想定)と遠い将来(20年後を想定)に分けて具体的な提案をまとめること。
 セミナーでは、中間報告を入れて延べ5時間10分にわたりグループディスカッションを行った。
「充実し過ぎて時間が足りなかった」「他の大学の人と意見交換ができてよかった」
「大きなテーマだったので議論の方向がうまくまとまらず苦労しましたが、その苦労もとても貴重な経験でした」「自分の業務の振り返り、今後の大学、職員の在りかたについて深く考える機会になった」
 最後に、各グループごとに話し合った結論を全員でプレゼンテーションした。長いようで短いグループワークのなかで「自分たちのグループからはでなかった意見・考えを聞くことができてよかった」「多方面からの大学職員の役割を積極的に考えることができた」と感想が聞かれた。

大学職員セミナー企画委員

<委員長>法政大学常務理事・近藤 清之 
<委 員>高崎経済大学教育グループキャリア支援チーム・青木加奈子
       慶應義塾大学総務部主任・黒田絵里香
              中央大学入学センター入学企画課課長・大久保陽造
              桜美林大学大学院・大学アドミニストレーション研究科教授・山本 眞一