セミナー・イベント

世界の中の中国と日本-現代中国理解Ⅵ
―習近平政権三期目の課題:自己認識と外からの目線―

実施報告

期間 2024年12月7日(土)~8日(日)
会場 大学セミナーハウス(東京都八王子市下柚木1987-1)
主催 公益財団法人大学セミナーハウス

参加状況 7校 26名 社会人3名 合計29名

学習院女子大学(16名)、早稲田大学(3名)、慶応義塾大学(2名)、東海大学(2名)、東京大学、法政大学大学院、麗澤大学(各1名)、社会人(3名)

【趣旨】

 2024年、中国は依然として世界から厳しい目を向けられているが、中国国内でも様々な不協和音が生じている。脱コロナが進んでも原状回復しない経済、不動産価格の低迷による地方財政の問題、高齢化が進む中での社会保障問題、「国家の安全」の名の下での社会管理の徹底と閉塞感などがそれであり、また国際場裡においても西側先進国からの圧力が高まり、また開発途上国からもインドやトルコなどがリーダーシップを発揮し始め、また中国はロシア支援国として批判が強まっている。ただ、だからと言って習近平政権の地盤が揺らいでいるわけでも、また政策の方向性を変更しているわけでもない。それでは中国国内では何が問題とされていて、政府や社会はそうした問題をどう認識し、対処しようとしているのだろうか。この研究会では、政治、経済、社会、国際関係(外交)の四面から、3期目を迎えた習近平政権下の中国について、それぞれのチームで、また全体で議論し、考察する。その際には、日本から見た外からの視線と、中国に即した見方、考え方はどのように異なるか、ということを大切にしたい。
(川島真企画委員長)

【開会】
開会の挨拶:大学セミナーハウス 荻上紘一理事長

開会の様子

開会の挨拶:荻上紘一理事長

【基調講演】
テーマ:「習近平政権三期目の課題:自己認識と外からの目線」
講演者: 川島 真(東京大学大学院教授・当セミナー企画委員長)

「世界の中の中国と日本-現代中国理解Ⅵ」 基調講演

東京大学大学院教授・企画委員長川島真先生

【講師紹介】川島 真(かわしま しん)東京大学大学院 教授
1968年東京生まれ。東京外国語大学卒、東京大学大学院人文社会系研究科(東洋史学)修士課程・博士課程修了。博士(文学)。1998年に北海道大学法学部助教授、2006年に東京大学大学院総合文化研究科准教授を経て、2015年より現職。専門はアジア政治外交史。

 

【トークセッション】

 企画委員長の川島真先生から、開催趣旨に基づく講演があり、 4人の分科会講師による論点説明がありました。
下記4つのテーマを念頭に置いて、次の分科会討議に移行するにあたっての論点整理となりました。
◇テーマ1(第1分科会)
「政治」
◇テーマ2(第2分科会)
「社会」
◇テーマ3(第3分科会)
「経済」
◇テーマ4(第4分科会)
「国際関係+台湾」

参加者の方からは、「包括的に中国自身また日本との関係性について説明いただき、導入としてしかるべきお話をきくことができました。」「川島先生の重厚かつ常にアップデートされたご講演は、八王子を訪れる大きな原動力となっています。」「現在における中国の立ち位置や自己認識・習近平政権に関する内容など中国をあらゆる面から考察することが大いに興味深く、自分の中国に関する考えや視野が広がりました。」との感想をいただきました。

右から
第4分科会講師 川島真先生、
第1分科会講師 小嶋華津子先生、
第2分科会講師 金野純先生、
第3分科会講師 内藤二郎先生

トークセッション:会場の様子

【分科会討論】12/7(土)・12/8(日)

第1分科会

テーマ 「政治」
担当講師 小嶋 華津子先生(慶應義塾大学教授)

第1分科会主旨
 この分科会では、習近平政権下で、経済政策、社会政策、外交政策が、どのような政治力学の中で決定され、実施されているのかを検討し、議論する。税制改革、少子化対策、愛国主義教育、少数民族政策、台湾政策…本分科会では、中国の将来を方向づける重要な政策を一つ選び、その政策の決定や実施をめぐって、党、軍、政府、地方、団体、企業、世論などがどのような利益関係、権力関係の下、どのような政治を繰り広げているのかを、それぞれの立場に身を置いて考えてみたい。 
 

第2分科会

テーマ 「社会」
担当講師 金野 純先生(学習院女子大学教授)

第2分科会主旨
 この分科会では、現代中国社会が抱える諸問題と共産党による社会統治の観点から、今の中国について考えてみたいと思います。躍進/停滞など経済面から報じされる中国ですが、そこには多種多様な社会問題(人口減少と社会保障、環境破壊、民族対立、世代による政治的価値観の変化…等々)が存在しています。
本グループでは、講師が準備したコースパックに基づいて、こうした社会の諸課題についてより深く理解する機会を提供したいと考えています。最終的にはいくつかのグループに分かれて複数の社会問題を考察することで、一党独裁体制下における中国社会の持続的発展の可能性について、多様な視点から議論したいと思います。

第3分科会

テーマ 「経済」
担当講師 内藤 二郎先生(大東文化大学教授)

第3分科会主旨
 不動産市場の低迷が大きな要因となり、中国経済は厳しい状況が続いています。伸び悩む国内需要、少子高齢化の加速、地方経済・財政の悪化、若者の失業、長期化する米中摩擦など、経済・社会を取り巻く問題が山積しています。ただ、こうした状況に陥った原因は、必ずしも実態経済の循環要因によるものだけではなく、習政権下での政策的要因の影響が決して小さくないと考えられます。一方で、中国は先端技術を含め、いくつかの分野で国際社会でのプレゼンスを高めるなど、更なる成長余地や発展可能性も秘めています。足元の経済情勢や政策動向を確認しながら習政権の「改革」の意味や課題について考察し、中国経済の実態に迫りたいと思います。
 

第4分科会

テーマ 「国際関係+台湾」
担当講師 川島 真先生(東京大学大学院教授)

第4分科会主旨
 この分科会では、そもそも中国の対外政策の目標はどこに設定され、そのために何をしようとしているのか、世界をどのように認識しているのかということを、長期的、短期的な観点から明確にした上で、そこでの問題点、課題などを考察する。他方、台湾統一は中国の最重要国家目標の一つだ。それは単純な外交問題ではないが、国際関係とも深く関わる課題である。特にウクライナ戦争勃発以降、国際社会の台湾問題への注目は高まっている。それでは、台湾問題は国際関係から見ていかに捉えられるのか、また台湾という主体はこの問題をどう見ているのかということを含めて考えてみたい。
 

【各分科会討論結果発表・総括講師コメント】12/8(日)

 分科会毎に、2日間討論した結果報告(20分)と質疑応答(15分)が行われました。

 参加者の方からは「講師のきめ細かなご指導は、何にも代えがたい魅力である。」「今回の分科会では同じ大学の人以外にも一般の方も参加されていて、そのような普段違う場で生活されている方の意見を聞いて新たな考え方を得ることが出来たり、中国の社会について自分で論文を読み込み、他人に説明するなど、自分だけでなく他の人と協力して活動を行うことができて大いに充実しました。」「積極的に質問している方が多く、聞く側としても発表者側としても発表内容がより充実したものになったと思います。」「自分たちがまとめ上げたものを発表することで大いに達成感を感じました。また、質問も新たな気づきや課題を得ることが出来て今後の勉強や研究に大いに役立って良かったです。」などの感想が寄せられました。

第1分科会最終報告

第2分科会最終報告

第3分科会最終報告

第4分科会最終報告

 
【講評】
最後に、各講師に報告の補足コメントと、全体の講評をいただきました。
参加者の方からは、「どの先生方も短くかつ的確に総括してくださりました。設定時間も適切だったと思います。」「講師全員から、後進を育てる温かい眼差しとエネルギーを感じる。参加した学生諸氏は本当に幸せだと思います。」「同じ問題でも、異なる専門分野の講師のみなさんの考え方があらゆる角度から行われていて、どれも興味深く感じました。自分も中国を政治や経済、社会、国際関係など様々な面から見る必要があるなと感じました。」「先生方のお言葉一言一言がなるほどと思えることばかりで、今回の経験をこれからにしっかり活かしていこうと思いました。」などの感想をいただきました。
※左から 川島真先生・内藤二郎先生・金野純先生・小嶋華津子先生

【閉会】
閉会の挨拶:大学セミナーハウス 外村幸雄専務理事
修了書交付

閉会の挨拶:外村幸雄専務理事

大学セミナーハウス外村専務理事より閉会の挨拶があり閉会となりました。
その後に各分科会講師より、参加者に修了証書を交付していただきました。
参加者の皆さんはそれぞれの分科会講師を囲み、修了証書を手に記念写真を撮影しました。

参加者の方からは「とても楽しかった。この一言につきます!」「参加する前は、中国に関する知識が浅かったため不安でしたが、今回のセミナーを通して中国の現状を政治、社会、経済、国際関係の4つの面から知ることが出来て大いに充実した2日間でした。また、懇親会などを通して他大学の方や一般の方とも交流が出来て、新たな考え方を得ることもできました。今後は、自分がこのセミナーで学んだことを今後の研究に活かしていきたいと考えました。短期間で報告資料を作成するなどハードな面もありましたが、それ以上に学んだことが多くて、参加して良かったと感じました。」「大学生活の中でも貴重で濃密な時間を過ごすことができ、思い出に残る合宿となりました。」などの感想が寄せられました。

今回のセミナーには多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました。
また、セミナーの企画から運営までご尽力いただき、2日間にわたって熱心に参加者と向き合っていただいた4人の講師の先生方に心より感謝申し上げます。

【記念撮影】12/7(土)

初日の基調講演・パネルディスカッションの後に講師の先生を囲んで

【参加者懇親会】12/7(土)

【各分科会毎に記念撮影】12/8(日)

第1分科会「政治」

第2分科会「社会」

第3分科会「経済」

第4分科会「国際関係+台湾」

現代中国理解セミナー企画委員会

川島 真【委員長 】(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
小嶋 華津子(慶應義塾大学法学部 教授)
金野 純(学習院女子大学国際文化交流学部 教授)
内藤 二郎(大東文化大学経済学部 教授)

お問い合わせ

 公益財団法人 大学セミナーハウス セミナー事業部
〒192-0372 東京都八王子市下柚木1987-1
TEL:042-676-8512(直)FAX:042-676-1220(代)
E-mail:seminar@seminarhouse.or.jp
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