セミナー・イベント

古田武彦記念古代史セミナー2025

セミナー実施報告

期間 2025年11月8日(土)~9日(日)
場所 大学セミナーハウス (東京都八王子市下柚木1987-1) ・
Zoomミーティングルーム
主催 公益財団法人大学セミナーハウス
共催 多元的古代研究会 東海古代研究会 東京古田会 古田史学の会
参加状況 61名(会場参加者37名・オンライン参加者24名)

【開会挨拶】【開催趣旨】「卑弥呼はどこにいたか」

開会の挨拶の様子:荻上紘一理事長

今年も論理的、科学的、客観的に史実に迫ろう
 「古田武彦記念古代史セミナー」は、今回が8回目になります。近年のテーマは、卑弥呼の時代(3世紀)、倭の五王の時代(5世紀)、「日出づる処の天子」の時代(7世紀)と続き、前回と前々回は「倭国から日本国へ」をテーマにしました。今回は、3世紀に戻り、テーマを「卑弥呼はどこにいたか」に絞りました。
 古代史学においては史実の解明が基本であり、そのための作業即ち証明は論理的、科学的、従って客観的であり、当然のことながらevidence-basedでなければなりません。史実にはWhen、Where、Who、What、Why、Howなどの要素が含まれますが、今回のテーマはWhereを解明しようというものです。Whereは客観的情報であり、論理的、科学的かつ十分な説得力を持つ証明が求められます。
 古代史学は、先ず客観的に史実を確定し、それを各自の歴史観に基づいて解釈したり評価したりすべきです。屡々歴史観が史実に先行する議論が行なわれているのは何としたことでしょうか。当然のことながら、議論の前提は客観的でなければなりません。客観性のない前提から出発する議論には、その前提を認める者しか関心を示さないからです。客観性のある前提から出発して、論理的、科学的で誰もが理解出来る議論の結果として史実に迫ることが期待されます。
 今回のテーマは非常に長い議論の歴史があるにも拘わらず、いまだに史実に到達していません。この議論は専ら『三国志』魏志倭人伝を拠り所にして展開されてきましたが、客観性のない読み方や論理的でない解釈までもが百出して今日に至っているといえます。一つの文献だけに依拠しようとすると往々にして起きることです。魏志倭人伝とは独立な情報(例えば風土記、伝承など)があれば良いのですが・・・。勿論、もう一つの極めて重要な情報源が考古学的成果であることはいうまでもありません。
 今回のセミナーは、古代史学と考古学に関する4つの講演とパネルディスカッションを中心に構成します。古代史学と考古学の有機的な融合により、卑弥呼のいた場所に少しでも近付きたいと期待しています。研究者のみならず、古代史に関心を持つ全ての人を歓迎します。若い人々にとって真実の古代を覗く窓になれば幸いです。
 このセミナーは、大学セミナーハウスと多元的古代研究会、東海古代研究会、東京古田会及び古田史学の会が共同で開催します。                                  実行委員長 荻上紘一
 

【講演1】東アジアからみた卑弥呼王権-公孫氏政権と魏王朝- 仁藤敦史先生

講演1:仁藤敦史先生

 「魏志倭人伝」の記述や最新の考古学的成果を基礎として、近年有力となった畿内説の立場に立ちながら、東アジア史の観点から卑弥呼の王権と公孫氏や魏王朝との外交関係を論じる。鬼道を駆使する卑弥呼は、普遍性を有する鏡の祭祀により、倭国乱により疲弊した大人層の支持を得て「共立」される。そこでは、「一大率」「大倭」「都市」などの国を超えた官職を設定することで、鉄資源や先進文物の流通をコントロールし、倭国王としての求心性を維持したと考えられる。

仁藤敦史先生プロフィール:
国立歴史民俗博物館歴史研究部教授(2008~2025年)
主な著書:『古代王権と東アジア世界』(吉川弘文館、2024)、『加耶/任那』(中央公論新社、2024)

仁藤敦史先生講演模様

【講演2】「伊都国」・「奴国」の遺跡と出土遺物からみた3世紀の「倭国」と
     「邪馬台国」について               久住猛雄先生

講演2:久住猛雄先生

 「邪馬台国」時代の3世紀(弥生時代終末期~古墳時代初頭)の北部九州の最有力国である「伊都国」と「奴国」の遺跡と遺物を紹介する。この2国を統べた「倭国」の都がある「邪馬台国」は、この2国と同等かそれ以上のレベルの地域でなければならない。そうすると北部九州に「邪馬台国」は存在しえず、当時興隆中であった畿内大和地域がやはりその筆頭候補となる。また博多湾岸に「邪馬壹国」を求める意見も承知しているが、糸島から福岡平野の範囲に「伊都国」「奴国」「邪馬壹国」の3大国を入れ込むことはできない。また畿内に「邪馬台国」があっても、外交と物流の上では「伊都国」と「奴国」が未だに最重要地域だったことを示す。

久住猛雄先生プロフィール:
1995 年 早稲田大学大学院文学研究科博士前期課程修了、同年より福岡市教育委員会・市役所に文化財専門職として入庁・在職
主な著書:2008年「福岡平野 比恵・那珂遺跡群~列島における最古の「都市」~」『弥生時代の考古学』8「集落からよむ弥生社会」同成社
2012年「奴国とその周辺」『季刊考古学・別冊18 邪馬台国をめぐる国々』雄山閣
2023年「弥生時代の「板石硯」『季刊考古学・別冊43 九州考古学の最前線(1)』雄山閣

久住猛雄先生講演模様

【講演3】大和ではありえぬ邪馬台国            関川尚功先生

講演3:関川尚功先生

 奈良県内で長らく発掘調査をしていると、弥生時代から大型古墳の出現に大きな画期があることが実感される。そして箸墓古墳出現以前の大和には、邪馬台国のような国が存在することを証明できる遺跡や遺物というものは存在しない。つまり銅鐸はあっても鏡はみられないし、楽浪郡や帯方郡から来るような土器もほとんどない。大きな弥生墳墓もみられない。大和の弥生遺跡は大きくとも、その性格はこのようなものであることが、今ではわかってきた。大和のこの状態を九州と比較すれば、誰でもその差というものは理解できるはずである。邪馬台国大和説の根拠は鏡や古墳であり、大和の遺跡や墳墓の実態とは正反対である。これだけでも大和説は初めから成り立たないといわざるをえないのである。

関川尚功先生プロフィール:
橿原考古学研究所で奈良県内の発掘調査を長年行ってきた。現在も奈良県葛城地域の文化財調査とその普及にたずさわっている。これまで纒向遺跡をはじめ多くの遺跡・古墳・宮跡の調査に加わってきたので、邪馬台国から大和王権の時代までがテーマである。

【記念撮影】

講演講師を囲んで、記念撮影

【パネルディスカッション】

 ――「魏志倭人伝」の遺物・遺構から卑弥呼の所在地をもとめる――をテーマとして、
パネリストに3人の講演講師を迎え、大墨実行委員の進行のもと議論していただきました。
※講演4の谷川清隆先生がご欠席のため、プログラムを変更しております。
11:15~12:30 パネルディスカッションⅠ (各講演講師への質疑応答)
13:30~16:00 パネルディスカッションⅡ (上記テーマについての議論)

パネリスト:仁藤敦史先生、久住猛雄先生、関川尚功先生
司会進行 :大墨伸明実行委員

左から順に、パネリストの仁藤敦史先生、久住猛雄先生、関川尚功先生
      司会の大墨伸明実行委員

パネリストの皆様との質疑応答

【情報交換会】

 今年度は、情報交換会➀会場とオンラインの皆様で、最初の30分をスライドショー
      情報交換会②会場参加の皆様のみ、情報交換会の場を設けました。
 
 4つのテーブル(A・B・C・D)に各講演講師分かれてお座りいただき、先生を囲んで参加者の方にお座りいただきました。
 自由に歓談していただき、25分ずつ3回、参加者の方に移動していただきました。
 講師の先生ともお話が弾み、皆様楽しんでいただけたようでした。
 

情報交換会➀スライドショー

情報交換会②

情報交換会②

情報交換会②

情報交換会②

情報交換会②

【閉会】

荻上紘一実行委員長


 今年度は、仁藤敦史先生、久住猛雄先生、関川尚功先生の3人の講演講師をお招きし貴重なお話を聴いていただきました。(4人の先生をお招きしましたが、残念ながら谷川清隆先生は、ご欠席されました。)
また、各講師をパネリストとして迎え、―「魏志倭人伝」の遺物・遺構から卑弥呼の所在地をもとめる― と題して議論していただき、ご参加者とともにさらに活発な研究交流が行われました。
最後に、荻上紘一実行委員長から総評と来年度に向けてのお話をいただき閉会となりました。

 当セミナーの開催に当たって事前の企画立案から当日の司会進行及び講演まで務めていただいた11名の実行委員の方々に感謝申し上げます。
今年度も、会場参加とオンライン参加のハイブリットセミナーという形で開催させていただき、全国から多くの方々にご参加いただきました。ご参加の皆様に心より御礼申し上げます。
また、「古田武彦記念古代史セミナー」は来年も開催を予定していますので、是非ともご参加ください。

古田武彦記念古代史セミナーショートムービー

古田武彦記念古代史セミナーショートムービー

右の写真をクリックすると   35秒のショートムービーをご覧いただけます。

【参加者アンケート紹介】

 ご参加者の方から沢山の感想とご意見をいただきました。今後のセミナー開催の参考とさせていただきます。アンケートにご回答いただきました中から、一部をご紹介させていただきます。

1. 【講演1:仁藤敦史氏】 東アジアからみた卑弥呼王権-公孫氏政権と魏王朝- について
論旨が分かりやすく説明されていた。
近畿説を採るプロの古代史学者たちの立ち位置が明らかになった、という意味ではとても有意義だったと思う。
当時の中国支配者の世界観、東アジアの政治状況も調査、理解の上で考察を進める事の重要性を改めて認識できました。

2. 【講演2:久住猛雄氏】 「伊都国」・「奴国」の遺跡と出土遺物からみた3世紀の「倭国」と
  「邪馬台国」について について

  ご研究の実績に目を見張りました。長年のご研究のご苦労に対して深くご尊敬申し上げます。
ご研究に基づく膨大な資料をご提示いただきましたことに厚く感謝申し上げます。
 専門用語を使い、細部にこだわる説明のため、やや難しく感じられた。
  久住氏は素晴らしい考古研究をされており、今回も豊富な資料を準備していただいて感謝しています。
久住氏の論文はネットにあるのでかなり読みました。関西へ来られた時の講演も何回か聞きました。
素晴らしい研究をされています。氏の本音は「ヤマタイ国=九州説」ではないかと思います。
ただ行政の意向に逆らえないのかと残念に思いました。
内容についてわかりにくい点もあるが、安易な態度を排し厳しく考古学に向かい合う姿勢に接したことは有益だった。

3. 【講演3:関川尚功氏】 大和ではありえぬ邪馬台国  について
  誠実にご研究結果をお話しいただき感謝申し上げます。今後のご活躍をお祈り申し上げます。
久住氏との対立軸では もう少し畿内説を戦って欲しかった。
話の筋が(論理が)纏まっている
分かりやすく資料もきれいで、素晴らしい講演でした。
長年、考古学の最先端で活躍された立場からの畿内説否定は迫力があり、論理的にも納得がいった。
わかりやすい非大和論で、特に弥生と古墳の峻別、社会体制までがまるで変ったことが実証されている点は感銘を受ける。年代について久住氏との矛盾を後のシンポジウムで詰められなかったのが残念で、一般人には古墳時代の始まりのどちらの年代が正しいのかわからない。
 
4.パネルディスカッションⅠ・Ⅱについて
おおむね満足しているが、次回以降のことも考え、気になった点を書かせて頂く。
パネルディスカッションⅠでは、ほとんど講師と司会者とのやりとりを聞かされるだけのことで終わってしまった。
司会者は会場からの発言と盛り上がりを期待すると述べられていたが、多くの参加者が意見を述べる機会や時間は与えられなかったように思える。
質問者が、講師の見解を踏まえずに自説を展開することは問題である(聞いてる方も嫌になる)が、多くの参加者に感想なり、意見を述べさせる機会や時間を与えるべきなのではないかと思える。
一方的に聞いて終わりというのであれば、わざわざ会場にまで足を運ぶ必要もなく、リモート参加で十分ではないかと思われはしないか、との懸念が生じた。
最後に、一元史観論のプロの先生方を招かれたことは、非常に良かったと思われる。今後とも彼らが何をどのように考えているかを知ることは、極めて重要なことと思われた。主催者側のご努力に感謝致します。
谷川先生の病欠は残念でした。早いご回復を祈ります。谷川先生が参加させてれば、より厚みのある議論が期待出来たと思います。
よくわからなかった北部九州の弥生土器について、オンラインでの質問で久住さんからそのポイントをきっちりと教えて貰えました。久住さんが準備して下さった資料をしっかり勉強したいと思っています。
 質問をたびたびさせて頂けたので満足している。
 司会の進行がお上手でした。パネラー同士の質問が適切でまとまりがありました。
 パネラーによる質問に対する回答がとても明快なものが多く、参考になりました。
 一問一答の進行が大変良かったです。不規則発言が減ったことに感謝です。

5.情報交換会について
席を移動する形式がよかったです。
会話の機会がない講師、幹事の方々と自由な議論が出来て、時間が早く感じられました。
初めての試みでよかった。しかし、各講師の方との情報交換の時間が少なく、もう少し時間が欲しかった。
進行方法について何かもう一工夫、アイディアが欲しかったです。
①塊は三つぐらいでいいのではなかったでしょうか。
②講演者を中央に置いて、周りから質問や意見を述べるのであれば、ラウンドテーブル。
③講演者にさらに意見を追加して聞くなら、教室形式。
④あるいは、書籍を出版した人が解説する場を設けるとか。
⑤発表したい人に場を提供してお話いただくとか。配布資料には、何のために配ったのかわからない書面が1、2ありま した。これなど解説して欲しかったですね。
⑥学術学会の総会のように、ポスター発表の場があれば面白いのかもしれません。
時間不十分ではあったが、回転式はありがたい。いろいろな先生・委員と交流できる。
昨年よりは良いと感じています。
リラックスして飲んで、話して、翌日に向けてのエネルギー補給になりました。

6.今回の「古田武彦記念古代史セミナー2025」を総合評価
荻上実行委員長の開会・閉会の挨拶で述べられた「理論的・科学的・客観的な姿勢を基調とするセミナーでありたい」という主張に感動しました。これからもこの姿勢を堅持したセミナーに期待します。
 残念なのは、谷川氏の講演が聴けなかったことです。病床にあることを実行委員会が把握したのはいつ頃だったのでしょうか。代替者を見つけることはできなかったのでしょうか。もし、レジュメが間に合っていたのであれば、いただけるとうれしいのでが。仁藤氏との対話に期待していたものですから。そんなことからも、「どちらかというと、不満である」としましたが、実行委員会の皆様には、今回のテーマ設定並びに講師選定には大変感謝申し上げる次第ですし、その点では「満足している」ことをお伝えします。どうもありがとうございました。
新しい試みとしてのセミナーであり、先生を囲んでの情報交換会は良かったと思います。
 異なった主張の先生方の選定の難しさを感じました。
プロの一元史観論者の先生方を招いて話を聞く場合、多元史観に立つ多くの参加者からは、異論が出ることが予想されます。ただ、そこで丁々発止の議論をしても当然埒があきません。また、長々その議論を聞かされる方もたまりません。
結果として一元史観論の先生方も、このセミナーにでることを断る方向に行くのではないかとも思います。
今回の司会者の仕切りもそうしたことを懸念してのことと思われます。講師の先生方の面子をつぶさず、かつ参加者にも意見を述べる機会を与える方法の一つとして、今回の四班に分けてのグ ループ制の意見交換は画期的な方法だと思われました。
1日目のZOOM音声が小さく聞き取りづらかった。できれば1日目分だけでもアーカイブ配信して頂きたいです。
 オンライン参加者に情報交換会②を聴講させてほしかった。
今回は中途半端に終わりましたが、しかし、古田武彦記念セミナーとしては大きな果実が得られたのではないかと思います。それは、黙殺され反論がない世界から、論客を引っ張り出して、古田説に対する反論を聞く。さらにその根拠を聞く。
そうすれば古田説の現在地が判断できる。この手法を得たことが大きいと考えます。「学の世界で反論がなかった」しかし、こうすれば多元史観が一元史観と共存できる可能性が生まれるわけです。
ポイントは「引っ張り出すこと」であると思います。大学セミナーハウスのブランドの大きさをあらためて思いました。
1.複数の現役の研究者を招聘しお話をいただいたのは非常に有益で刺激的であった。実行委員の方のご苦労を思う。総合評価は期待以上である。
    2.半面、せっかく先生をお呼びしての討論なのに、その会場全体の状況すら考えられずに自分のことだけを考えている質問者は厳しく規制すべきであろう(このような質問者は「参加の資格がない」といっても過言ではない)。
老耄してい るからというのは理由にならない。対応としては質問は一人一回一問、質問時間は30秒までなどを徹底して行うことであろうか。繰り返すが有益な質疑応答の時間を奪う害悪であるし、このような劣悪な質問が出ていれば若い人は幻滅し、無益な集まりと判断し参加しない。参加者全員の質の向上が課題と思う。
    3.若い人にセミナーに参加してもらうためのカギは「彼らの将来に役立つのか」ということだと思う。趣味や道楽で参している高齢者と違って、彼らには将来の研究生活が懸かっている。それだけのものを体験し、持ち帰られる素晴らしい場になることを目指したい。
  

実行委員会

【実行委員長】
 荻上 紘一
【実行委員】 
 大越  邦生
   大墨  伸明
 橘高 修
 谷川 清隆
 畑田 寿一/宮澤 健二
 西坂   久和
 冨川 ケイ子
 和田   昌美

開催状況

お問い合わせ

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