セミナー・イベント

第37回国際学生セミナー
日本はどこへ―世界の中の日米中関係―

実施報告

期間 2010年10月23〜24日
場所 大学セミナーハウス (東京都八王子市下柚木1987-1)
主催 財団法人大学セミナーハウス
参加状況 <大学等別>
早稲田(14)、慶応義塾(4)、東京外国語(4)、法政(4)、東京(3)、青山学院、亜細亜、宇都宮、学習院女子、金城学院、埼玉、首都大学東京、神戸、成蹊、筑波、東京女子、武蔵野、名古屋市立、名古屋、明治、北京大学OG、(各1)計44名
講演会 八王子いちょう塾(19)、東京大学(1)

企画委員

委員長・東京外国語大学大学院総合国際学研究員教授 渡邊啓貴
法政大学経済学部教授 絵所秀紀
早稲田大学国際学術院教授 太田 宏
立教大学法学部教授 佐々木卓也
東京大学大学院情報学環教授 園田茂人
慶應義塾大学法学部教授 山本信人
東京大学名誉教授 中兼和津次

趣旨

一昨年の北京オリンピックに続き、今年は上海で万博が開催されています。中国の経済は急速に成長し、先進諸国にとって魅力ある市場となっています。同時に、その政治的スタンスは日本やアメリカにとっても今後のアジアの国際関係を考える上で重要な要素です。今回はこうした中国の動静とそれをめぐる日米中三国関係を中心に考えてみたいと思います。同時に、その背景となる今日の国際社会の枠組み、日米中関係に強く影響される東南アジア諸国の今後についてもあわせて考えてみたいと思います。
(国際学生セミナー企画委員長・渡邊啓貴)

実施報告

10月23日~24日、年に一回の1泊2日の国際学生セミナーは開催された。今年のテーマは「日本はどこへ―世界の中の日米中関係」です。全体会の基調講演は東京大学教授、かつて「日中歴史共同研究委員会」の日本側座長(2006年12月1日-2009年)、鳩山由紀夫政権下で日米間の密約を調査するための外務省の有識者会議の座長の北岡伸一氏であり、セクション講演は五つのテーマに分けた五人の講師がなされた。
北岡氏は近年、首相の私的諮問機関や「外交政策評価パネル」座長、日本政府国連代表部次席大使等を担当されただけに目下の日米中関係に対する見識は透徹で奥深かい。氏は講演のなかで、世界構造はどのように変わるか、中国はどのような発展を続けるか、アメリカは将来どのようになるのか、そのなかで日本は取るべき政策はなにか、日中、日米の今後の在り方について話された。そのうえ、中国国内問題に関連して今後の世界秩序を分析し、今後相手国との橋をかける前にまず距離を図らねばならないと指摘した。
五つのセクション講演は、「中国外交と米国・日本」(青山学院大学教授 高木誠一郎氏)、「アメリカ外交と日本・中国」(立教大学教授 佐々木卓也氏)、「日本外交と中国・アメリカ」(法政大学教授 河野康子氏)、「東アジアからみた三国関係」(慶應義塾大学教授 山本信人氏)、「世界からみた三国関係」(早稲田大学教授 太田宏氏)をテーマに講演され、各講師がそれぞれの観点から学生に問題を提起し、それについて各分科会で徹底的に討論を行われ、分科会で議論したことが2日目の全体会で報告された。

講演会

基調講演 北岡伸一氏、司会 国際学生セミナー企画委員長渡邊啓貴氏

講演会場模様

セクション講演

Aセクション講師講演「中国外交と米国・日本」(青山学院大学教授 高木誠一郎氏)

Bセクション講師講演「アメリカ外交と日本・中国」(立教大学教授 佐々木卓也氏)

Cセクション講師講演「日本外交と中国・アメリカ」(法政大学教授 河野康子氏)

Dセクション講師講演「東アジアからみた三国関係」               (慶應義塾大学教授 山本信人氏)

Eセクション講師講演「世界からみた三国関係」(早稲田大学教授 太田宏氏)

セクション討論模様

Aセクション「中国外交と米国・日本」

Bセクション「アメリカ外交米国・日本」

Cセクション「日本外交と中国・アメリカ」

Dセクション「東アジアからみた三国関係」

Eセクション「世界からみた三国関係」

全体会討論結果発表

2日目の全体会では、各セクションの報告は極簡潔で明確なものでした。
Aセクション議論の結果、日中両国の歴史事実の認定がむずかしく、互いに考えることに溝があること、そのために互いの距離を測ることが必要になる。ゆえに民間レベルの交流については土台が違い、距離があることを知ることが重要になってくる。また、知的交流の際、相手国の文化だけではなく、政治体制を理解するのも大切だ。政治体制・思想がまったく違った大国とどう付き合っていくか、学生の一人は、中国とつきあうリスク、回避するか、経済を含めて摩擦が起こらないようにちょっとずつ、解決していくのが、ベストであるとの認識を示した。しかし、いくら人と人の付き合いを大切にしても、いくら個人的に親しくなっても尖閣諸島の問題が出た場合は、互いに距離が感じてしまうとの意見もあり、最近の尖閣諸島問題は日中の外交関係にも民間レベルの交流にも影響している。互いに理解しあい、問題を解決するにはやはり市民交流は重要で、外交だといろんな層を通してやらねばならない。外交より自分のみじかにかんじるところで自分の言いたいことを何回も何回も続けて言い、受け入れてくれると、一番いい方法だとの結論になった。
学生発表の後、Aセクションの高木誠一郎先生は、民間レベルの交流について話された。民間レベルの交流については限界があるが、とめてほしくない。対外に腹がたつが、互いに話すべき。どっちがただしいか、どういう基準できめるのか、どういう処理の仕方がもっとも妥当であるか、喧嘩にならず、本当の友達を作ってほしい。反日デモ連中を日本に招待しよう。立場の違う人を遠ざけていくではなく、話し合うべきだとの見識を示された。
Bセクションは「アメリカ外交と日本・中国」のテーマをめぐる議論の結果を発表された。問題提起としてアメリカはこれからもリードの位置にいるか、オバマ政権はこれから対中・日のなかで中国を重視するだろう。日米中の関係、深まっていく中、対立になるものが多いだろう、対極的な人間が必要になるだろう。民間交流の中でそのような方がでてくるだろう。
講師の佐々木先生は、文化等のソフトパワーについて具体的な定義はまだない。民間交流は、両国関係がいい時はいいが、問題は相手国のことをどれくらい知っているかが大事だと指摘された。
Cセクションは日本の対米中外交問題について議論された。日本の問題としてあまり外交が上手ではないこと、アメリカ、中国の二大国に信頼関係をまだ築いていない、日本外交は不安定、政権が変わるたび、外交もかわる。日本は世界的に存在感薄くなる、などの問題をあげた。日本外交はどうしたらいいかについて、官僚・民間人は政治家に情報を提供し、メディアも責任を負わなければいけない。民間人の中から外交の知識がある政治家を出すべきで、政治家は国益にそった外交をすべき。
河野先生はCセクションの議論について内容を付け加えた。Cセクションは普天間と尖閣諸島を例にして議論した。米中関係はよくなればなるほど、日本を軽視されていくではないか、ならないように日本外交を構築していく必要がある。学生の議論はたんたんと冷静になり、意見交換のなかで政党と外交の関係はなんなのか、ポストモダンの社会へ移行しつつある中国とは距離を測ることが必要だが、簡単に計れるものではないかもしれない。地域外交を有効的に迎えること、成熟した行動様式で行うべきであるなど。
Dセクションはまず「僕立ちはアジア人ですか」との質問をし、中国人、日本人、シンガポール人、ロシア人がそろったセクションで、参加学生の意見がそれぞれ違うことを明かされた。これでアジア共同体はつくれるか?共通ってなんだろう?共通の意識を持つため、共通の利益、目的が必要で、個人レベルに落としていると、普通に付き合うために何が必要なのか、を考えるべきではないか。
学生の質問に対して講師の山本先生は、ソフトパワーをきちんとした定義はないが、外交、国内政治、どうやって行うか、国家間の関係について一緒にルールを作っていく必要があり、皆さんには他者の幸福を考える市民になっていただきたいと話された。
Eセクションは世界からみる三国関係について討論を進めた。ソフトパワー、技術、バランスとの三要素を提起された。環境問題において発展途上国は、環境を壊す分だけ補修する義務があること。現在の国際社会は国益を重視されているが、国益上でみれば、責任という形は難しい、みな自分の利益に応じて動く。国益の対立があるときに日本はどのようにするか、日本の技術をよりいかせる方法を考えるべき。環境問題は国益の問題に影響される。
講師の太田先生は国の違いを知ることは重要で、国際規範、人権、アジア的価値が成熟したなかで、中国は国際社会で責任をになすことになる等を指摘された。
◆終わりに
今年の国際学生セミナー参加者のなかに留学生と日本人学生はほぼ半々でしたので、共通のテーマについて違う立場で意見交換を行われた。議論のなかで互いに譲らなく、意見をぶつけ合う場面もありましたが、一泊二日間よく話し合うなか互いの理解が深まったことは間違えがありません。

員写真(ようこそ広場にて/2010年10月23日)

(文責:孫 国鳳)