「世界の中の中国と日本-現代中国理解Ⅱ」セミナー
実施報告
期日 | 2019年12月7日(土)~8日(日) |
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会場 | 大学セミナーハウス |
主催 | 公益財団法人大学セミナーハウス |
趣旨
【趣旨】
現在、世界は大きな転換期にあるのかもしれません。米中対立は、覇権交代の可能性を視野に入れたものでしょうし、論点の核心のひとつは技術に置かれています。中国は確かに西洋近代がもたらした多様な制度や価値に対して、新たな問題提起をしています。しかし、中国を例外、特殊として既存の秩序の埒外において事足りるということでもなく、中国の提起する諸問題を受け入れ、同調する国や人々もいます。もちろん変化しているのは中国だけではなく、アメリカも、そして日本も変化しています。こうした新たな世界の変化を踏まえ、昨年に引き続き、中国について、また日本や東アジアについて一緒に考える場を設けたいと思います。具体的には、その中国を内政、外交、経済、社会から考察し、日本の中国への関わり方をあらためて考えたいと思います(企画委員長 川島 真)
【まえがき】
グローバルアカデミーセミナー「世界の中の中国と日本―現代中国理解」は昨年、東京大学大学院教授の川島真先生に企画して頂き、大変好評を頂き、今年は第2回目を開催することになりました。今年の「世界の中の中国と日本―現代中国理解Ⅱ」も四つの分科会・政治、社会、経済、外交に分け、参加者の皆様が課題を設定したうえ、議論を展開し、それぞれの分科会でまとめた結論をセミナー参加者全員が共有するようにといったプロセスでセミナーを進行しました。
実施概要
開会式 12/7
大学セミナーハウス鈴木康司館長挨拶
皆さん今日は。現代中国理解を目的とするセミナー その2にご参加くださりありがとうございます。当セミナーハウスでは現在の世界で極めて大きな存在であるアメリカ、中国、EUの三者について、グローバルアカデミーセミナーと名付け昨年から足並みをそろえてセミナーを開催しております。それぞれのセミナーは専門の先生にお願いし、モチヴェーションにあふれた参加者の方々によって支えられております。今年も東京大学の川島真先生を中心に、昨年同様、慶応大学の小嶋華津子先生、学習院女子大学の金野純先生、大東文化大学の内藤二郎先生を講師にお迎えして開催できましたことは我々の大きな喜びであります。
今年はなんと申しましても香港情勢に象徴されますように、法律の上に共産党がいると言われるほど厳然たる一党独裁政治が支配している中国において、今後、どのように政治、社会、経済が推移してゆくのか、また中国の指導部が目指す国内外の秩序とはどういうものなのか、さらにそれは世界全体の秩序とどのようにかかわり、どのような影響を与えるのか、あるいは影響を被るのか、隣国日本としては重大な関心を以て注視せざるを得ない状況にあると思います。
私事で恐縮ですが、私の娘がパリ第7大学時代に仲の良かった中国の女性,この人は生まれも育ちもフランスで民主主義が当たり前の環境に育った方ですが、現在、イギリス人の夫、娘とともに3人で香港に暮らしております。一国二制度を保証された香港での暮らしが、中国政府の方針でどのように変わるのか、ちょうど大学生になる娘さんを含め、家族の安否を心配しておりますが、今のところ悪い知らせは入っていないようであります。今後、中国政府がどのような措置に踏み切るかによって、香港情勢がどうなるか、まさに世界が注目しております。
川島先生がテレビでいろいろと解説してくださいますが、まだ情勢は流動的で確実な予測ができない段階のようであります。
混沌とした香港の政治だけではなく、経済的にもアメリカのトランプ大統領対中国の習近平国家主席の対立がどのような結果をもたらすのか、これも世界一位の経済大国対二位の大国の対立ですから、影響の大きさはまさにグローバルそのものでありましょう。
今回は政治、社会、経済の大きな問題についてのセミナーであります。参加者の皆様には日ごろの疑問を少しでも解決できますよう、心から願って、私のご挨拶といたします。
【川島真先生基調講演】 12/7
テーマ:習近平政権下の中国をどう見るか
【内藤二郎先生「一帯一路」事情紹介】12/7
【分科会討論】 12/7~8
第1分科会
テーマ | 中国の政治—「党が全てを支配する」体制は何をもたらすか— |
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担当講師 | 小嶋 華津子先生(慶應義塾大学) |
第19回党大会で、習近平は「党政軍民学、東西南北中、党が全てを指導する」という方針を明らかにしました。中国では、国内政治のみならず、外交も、経済も、社会も、一党支配の権力構造によって規定されており、党の統制は、ここ数年ますます強まりつつあります。この分科会では、習近平政権が、各領域にどのように権力の浸透を図り、中国を統治しようとしているのかを、監察や公安、ビッグ・データの掌握と利用、新しい社会階層の取り込みなど、様々な側面から検討し、中国の将来と世界への影響を展望したいと思います。
第2分科会
テーマ | 中国の社会一党独裁体制下の社会問題を探る― |
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担当講師 | 金野 純先生(学習院女子大学) |
この分科会では中国のさまざまな社会問題について議論します。一党独裁体制下の中国は一見すると「強大」にみえますが、その社会には急速な少子高齢化、悪化する環境、貧富の格差、脆弱な社会保障など、多くの課題が山積みにされています。本分科会では、こうした諸問題に関して、いくつかの文献や資料を手掛かりとしながら、皆で議論したいと思います。
第3分科会
テーマ | 中国経済の行方-構造改革と経済減速の狭間で- |
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担当講師 | 内藤 二郎先生(大東文化大学) |
国内外の情勢が不安定化するなかで、中国経済の成長鈍化が鮮明化しています。高度成長が終わりを迎え、経済の発展パターンを転換しなければならず、構造改革が避けて通れない課題です。一方で、経済の底割れを回避するためには、足元の景気対策も重要です。景気対策を優先するのか、構造改革を断行するのか、政策運営は非常に難しい舵取りを迫られています。それに対し、現政権は習主席に様々な権限を集中して党主導で対応する姿勢を強めています。こうした手法で果たしてこの難局を乗り切ることができるのでしょうか。この分科会では、基礎的データに基づいて中国経済の現状を把握したうえで、経済政策の内容や方向性、手法など様々な角度から問題点や課題を精査し、議論を深めていきたいと思います。
第4分科会
テーマ | 中国の外交―中国の目指す秩序とは- |
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担当講師 | 川島 真先生(東京大学) |
中国の外交政策は2018年にさらに調整されました。自らを発展途上大国と位置づけ、西側の先進国と異なる立ち位置で新たな国際秩序の形成を目指している点は従来と同じですが、アメリカとの対峙を優先しつつ、他の大国とは個別的に関係を調整しようとしています。この米中対立の時代、中国の対外政策をどのように理解すればいいでしょうか。この分科会では、中国の国内状況や経済も踏まえつつ、中国の外交を考察します。
【分科会での「問題設定」の報告】 12/7
第1分科会
第2分科会
第3分科会
第4分科会
【分科会討論の結果発表】 12/8
第1分科会
第2分科会
第3分科会
第4分科会
【修了書交付】 12/8
参加者全員写真(12月8日)
参加状況
アイオワ大学1名、中国天津師範大学2名、八王子市学園都市大学1名、杏林大学1名、横浜国立大学1名、学習院女子大学10名、慶應義塾大学1名、創価大学1名、早稲田大学1名、大東文化大学1名、東京大学11名、東京海洋大学1名、東京外国語大学1名、日本大学1名、社会人12名
開催を終えて
1、基調講演について
★新たな知識や考え方を習得できました
★現代中国を学ぶ良い機会になりました
★米中対立の構図がよくわかった
2、分科会について
★幅広い年齢の方たちと、中国についての理解を深めることが出来た。小嶋先生が「発表持ち時間守る」ことを強調されたのも、緊張感があってよかったです
★ディスカッションがとても役立った
★参加者間、講師からも適格なコメントを数多く頂き、有意義だった
3、分科会の問題設定について
★時間に追われながらも自分たちの意見をまとめることができました
★先生は非常に良かったが、“参加者レベルの差”を埋めて何とか発表の形に持っていくために、一部の人に当日の負担がかかりすぎているように感じる
★色々な意見が少しずつまとまっていく所が興味深かった
4、分科会議論結果発表について
★多くの調査結果先生方の情報の捉え方を聞くことが出来た
★プレゼンテーションを通して、新たな気付きがありました
★質疑応答、講師のコメントが充実していた
5、セミナー全体について
★私にとっては得ることの多い知的刺激を十二分に味わえた
★分科会間の交流の機会を増やしたらいいと思います
★中国共産党の立場から現代の課題を考えきっかけができたことは良かった。国民が共産党を支持していることが理解できた
6、本セミナーに参加しての感想について
★色々な方のお話をお伺いできたのでとても勉強になりました
★第一線で活躍されている研究者のご指導の下、議論をすることが出来、非常に短い時間でありながらとても刺激を受けました。楽しかったです。しかし、正直に申し上げるとタイムスケジュールには大分無理があるなという気もしました。なので、全員の知識レベルをある程度担保する為にも必読書など前もって提示して頂いていたら、多少議論を円滑に行えたかもしれないなと思いました。
★時間制限のある中で発表制作、先生方の具体的なお話など非常に参考になります、テーマによってはまた参加を希望する予定です。質問が少ないのは、皆さんやる気あんの、と思いますけど(日本のセミナーではありがち)
★普段会えない先生方にあえてよかったです
★中国研究の最前線を直に聴くことが出来たのは大変に良い勉強になりました。今後も自分の研究に生かしつつ、日々精進して参ります
★グループディスカッションなどを通じて、現代中国政治に対して、一層理解を深めることが出来ました。懇親会の時間も満喫できました。色々とありがとうございました