セミナー・イベント

第14回新任教員研修セミナー「生成AIによって拓かれるデジタル拡張下のアクティブ・ラーニング」

実施報告

開催形式・日程 ①オンラインセミナー(Zoom)  8月1日(木)13:00~15:00
②オンデマンド講義 視聴        7月31日(水)配信開始
③対面セミナー(1泊2日)    8月19日(月)~20日(火)
対象 国公私立大学で授業を担当する新任教員(年齢不問),
新任以外の大学教員、非常勤講師
会場 オンライン:Zoomミーティングルーム
対面:公益財団法人大学セミナーハウス(東京都八王子市下柚木1987-1)
主催 公益財団法人 大学セミナーハウス

参加状況 : 12校(19名)

青山学院大学(1名)、沖縄県立看護大学(2名)、大阪物療大学(1名)、国士舘大学(3名)駿河台大学(1名)、創価大学(1名)、多摩大学(1名)、中央大学(2名)、東京都立大学(1名)、防衛大学校(2名)前橋工科大学(2名)、明星大学(2名)

開催趣旨

生成AIによって拓かれるデジタル拡張下のアクティブ・ラーニング
  デジタル技術の急速な進化は、教育のあり方にも革命をもたらし続けています。特に、ChatGPTをはじめとする生成系AIの登場は大学教育にも大きなインパクトを与えています。新型コロナウイルス禍でより活用されるようになったオンライン授業に加えて、生成系AIを活用することで、大学教育はさらなる変容を見せる可能性があります。
 一方で、我々が日々向き合う「学生」も新型コロナ禍を経て、かつての学生から変容をみせています。学生は高等学校や予備校等でオンライン授業を当たり前のように受講しており、通学して対面授業を受けることの意義、特に「対面で一方向的な講義を受けることの意義」についてシビアな目を向けるようになっています。対面授業の意義が問い直されるようになる中で、「なぜ今、対面授業をするのか?」、「授業でどのような活動を行うべきなのか?」という問いに私たちは答えを模索し続ける必要があります。その答えとなり得る1つの方法としてデジタルに拡張された新たなアクティブ・ラーニング型授業の展開があります。
 第14回新任教員研修セミナーでは、「生成AIによって拓かれるデジタル拡張下のアクティブ・ラーニング」をテーマとし、これを体験的に学ぶことができるように、オンラインでの事前学習を経てから、1泊2日の合宿研修を行うという形式で実施します。オンラインと対面の良さを組み合わせ、参加者と講師陣が重ねる熱い対話の先に、まだ見ぬ未来の学びが姿を現わすことでしょう。
 大学セミナーハウスでは、大学教員間の交流促進を通じて、日本の大学教育の質の向上と発展に貢献することを目指しています。今年度も、国公私立大学の垣根を越えた新任教員研修セミナーを企画しました。皆さまの積極的な参加を心からお待ちしております。 (運営委員長 菊地滋夫・運営委員 福山佑樹)
 
 

チャットツールSlack:講師と受講生の情報共有の場を活用

講師と受講者の情報交換の場(チャットツールSlack)をご提供しました。
Slack上に予めチャンネルを用意し、参加と同時に各チャンネルのメンバーとして参加していただきます。
◇「〇セミナー関連連絡」:セミナーに関するご連絡、変更事項等を掲載。
◇「〇自己紹介」:参加いただいたら、まずはこちらで簡単な自己紹介をお願いしました。
◇「~-講師名」:オンデマンド講義のURLをはじめ、各講師に対する質疑応答用のチャンネルです。

チャットツールSlackを使用した情報共有について、
受講者からは、「Slackを見れば、学びのログをすべて確認できるようになっていますし、新しい連絡の通知もわかりやすかったです。」「事務連絡や研修のナビゲーションに効果的であったと思う。」「チャットツールSlackを初めて使いました。新しいツールを使ってみる面白さがありましたし、いずれ自分も導入してみようか…と思える示唆をいただきました。」などの感想をいただきました。

オンデマンド講義

 7月31日(水)10:00~、SlackよりYouTubeのURLを公開しました。(動画は限定公開)
 講義資料と課題も併せて公開しました。
 ※講義5については、対面セミナーでのセッションを行いません。
 

【講義1】大学生が通ってきた環境、出て行く社会
藤井恒人(東京農工大学グローバル教育院教授)

いわゆる“Z世代”の最近の大学生が育った環境、受けてきた教育、入試制度を整理し、その特徴を確認する。一方で、やがて彼らが出て行くことになる社会、特に就職活動の状況をふまえ、大学生活を通して身につけるべき能力について議論したい。高校で始まっている「総合的な探究の時間」や、社会で求められる主体性、コミュニケーション力など、大学入学前と卒業後をふまえた大学のALの目指す学習スタイル、育成しようとする能力を参加者の皆さんと考えていきたい。

【講義2】反転授業のデザイン・生成AIと評価
澁川幸加(中央大学文学部特任助教/教育力研究開発機構研究員)

いつでも、どこでも、どんなことでも学びやすくなった現代では、集まる目的と学びの価値を明確にした大学教育が不可欠である。これからの大学授業のあり方を考える手がかりとして、本講義では反転授業及びブレンド型授業、そして生成AIの教育活用に焦点を当てる。授業内外を通じた授業デザインと、生成AIを考慮した評価方法について解説する。皆様には、授業でどのような価値を提供するかを再考するきっかけにしていただきたい。
 

【講義3】アクティブ・ラーニングの理論と実際
福山佑樹(関西学院大学ライティングセンター教授)

アクティブ・ラーニング (AL) は高等教育において定着してきていたが、新型コロナ禍を経て一方向的な講義に逆戻りしてしまうケースも散見される。高等教育を一方向的な授業に逆戻りさせないためには、ALが求められるようになった背景など基本的な考え方を理解し、その必要性を再確認することが重要である。本講義ではAL の理論と実践例を紹介し、ポストコロナ時代の授業に効果的にALを取り入れるためのヒントを提供する。
 

【講義4】生成AIの登場によって、学習デザインはどのように変わるのか?
田原真人(IAF JAPAN 理事、参加型社会学会理事、デジタルファシリテーター)

教育は、一人ひとりの個人と社会とを結びつけるインターフェースの役割を持つ。個人を取り巻くメディア状況の変化、新しいテクノロジーの登場、社会状況の変化などにより、インターフェースの学習デザインは必然的に変化を求められる。生成AIの登場により、個人を取り巻く学習環境や、社会における産業構造などが激変する。そのとき、学習デザインはどのようになるのだろうか?先端事例をもとに議論する。

【講義5】困難を抱える学生の理解のために~大学におけるダイバーシティと発達障害のある学生支援~
村山光子(明星大学非常勤講師、明星中学校・高等学校事務長) 

障害者差別解消法が改正され、2024年4月1日より、これまで努力義務とされてきた合理的配慮の提供が私立大学等において義務化されることとなり、「学生支援」は大きな転換期が訪れている。障害学生数は増加傾向にあり、2022 年度には過去最高の49,672 名、発達障害学生はこのうちの約20%、約1万人が大学等に在籍し、年々増加傾向にある。本講義では、発達障害を中心とする困難を抱えた学生支援について、大学におけるダイバーシティという視点から検討を行い、充実した大学生活を送るための支援について皆さんとともに考えたい。

オンラインセミナー(Zoom)<8月1日(木)13:00~15:00>

今回のテーマ「生成AIによって拓かれるデジタル拡張下のアクティブ・ラーニング」の主旨説明、およびワールドカフェを通して参加者と運営委員の顔合わせを行いました。

◇基本的ルールについて
意見の集約を目的としないこと、ブレインストーミングのグランドルールを守ること
①批判をしない ②自由に発言する ③質より量 ④連想と結合

◇ワールドカフェの各ラウンドテーマは以下の通りです。
  ラウンド➀対面とデジタルを組み合わせてうまくできたこと
  ラウンド②対面とデジタルを組み合わせてうまくいかなくて困っていること
  ラウンド③生成AIをめぐる試行錯誤(試み・成果・失敗・戸惑いなど)

課題や悩みアイデアを出しあい意見交換することで、徐々に和やかな雰囲気になりました。次回対面セミナーに繋がる良い機会となったようです。
ファシリテータを務めていただいた運営委員講師の皆様に感謝申し上げます。
受講者からは、「miroとブレイクアウトルームを使いながら、議論を深めることができた」「受講生≒学生の立場でブレイクアウトセッションに参加するのが新鮮でした。」「対面合宿前に多くの先生と知り合うことができた。「チェックイン」をやったことがなく、戸惑っている先生にも丁寧にフォローしてくださっていたので安心した」

★なお、他のグループの方の内容をご覧いたけるよう、ワールドカフェの各ラウンドの録画をSlackのチャンネルに掲載しました。

 

ご参加の皆様と記念撮影!! いい笑顔です♪♪♪

対面セミナー<8月19日(月)~20日(火)>

【開会式】

挨拶
大学セミナーハウス 山本眞一担当理事

趣旨説明
新任教員研修セミナー 菊地滋夫運営委員長

【セッションA】
アクティブ・ラーニングに向けた関係性作り
SPAファシリテータ 佐藤順子

佐藤順子氏

アクティブラーニングに向けた関係性作りのため、アイスブレイクとしていくつかのゲームを行いました。
特に受講生の中で好評だったのは「ゴジラが来たぞ!」
ゴジラ役の佐藤先生がゴジラのテーマに合わせて、一つだけ空いた椅子にゆっくり移動。受講生は、その席をゴジラに取られないよう他の椅子から順に移動します。メンバー同士で声を掛け合い、作戦を立てて、30秒間ゴジラに椅子を取られないよう頑張りました。

1時間半があっと言う間に過ぎ、セッションが終了する頃には、共通の目的に取り組む「仲間」になっているようでした。

受講者からは、「ワークをしたことで、その後2日間のセミナー期間中を通じて、参加者間の親密度やコミットメント、安心感が増した。」「アクティブ・ラーニングは何でも相談できる関係性作りが最も大切であるということを、改めて知った。」「本当に素晴らしかった。完全に計算されたプログラムで、まさにプロフェッショナルであると感じた。」等の感嘆の声を多数いただきました。

ナンジャモンジャ

ブロックス

ゴジラ

【セッション1】
大学生が通ってきた環境、出て行く社会
藤井恒人(東京農工大学グローバル教育院教授)

藤井恒人氏

様々なデータを提示しながら、“Z世代”の大学生が育った環境、受けてきた教育、入試制度を整理し、その特徴を解説していただきました。それを基に、「ALの目指す学習スタイル」「育成しようとする能力」について、グループワークの中で意見交換がありました。

受講者からは、「学生の特徴をデータを使って整理していて理解が深まった」「現在の学生たちの精神状態についてよく理解できた。」「本セミナーに参加するにあたり、知りたかったテーマの一つです。多くの資料を用いて丁寧に解説して下さり、勉強になりました。」等の感想をいただきました。

【セッション2】
反転授業のデザイン・生成AIと評価
澁川幸加(中央大学文学部特任助教/教育力研究開発機構研究員)

澁川幸加氏

「反転授業の設計」についての解説後、予想される困難とその対策についてを、グループワークで意見交換をしていただきました。各グループの発表は、Slackに掲載されました。
続いて、生成AIの教育活用に焦点を当て、授業内外を通じた授業デザインと「生成AIと評価」についての解説後、こちらもグループワークで意見交換の後、発表はSlackに掲載されました。

受講者からは、「反転授業と生成AI両方の内容をコンパクトに学べて有意義な時間でした」「反転授業も生成AIも包括的に学ぶ場が少なかったので、教育学の理念から整理されていて、応用的に考える基盤になった」「講義・演習の進め方はもちろん、Q&Aでのお答えがすばらしく、澁川先生の実力を感じました。」との感想をいただきました。
 

◇◇夜は情報交換会で交流を深めていただきました◇◇

【セッションB】
多様性と共生・協働のための探究型アクティブ・ラーニング
諏訪茂樹(東京女子医科大学統合教育学習センター准教授)

諏訪茂樹氏

自分とは異なる他者とも相互理解を深め、単に共生するだけではなく協働することにより、課題を効果的に解決する探究型アクティブ・ラーニングの方法を解説していただきながら、受講者にはワークで実際に体験していただきました。

受講者からは、「ワークが楽しいだけでなく、参加者同士の距離を縮める工夫がされていました。」「今回の研修で一番、自分の授業への導入がすんなりいきそうだったのがカンファレンストレーニングです。」「目的を明確にして緻密なデザインをした上で行うグループワークを体験できたことは、今後の自分自身の授業デザインを再考する上で、とても参考になりました。」等の感想をいただいています。

【セッション3】
アクティブ・ラーニングの理論と実際
福山佑樹(関西学院大学ライティングセンター教授)

福山佑樹氏

AL の理論と実践例を紹介しながら、授業に効果的にALを取り入れるためのヒントを解説していただきました。

配布のワークシートに、自分が担当する講義の1コマをイメージし、その内容に取り入れて見たいアクティブ・ラーニング活動と変更後の授業案を個人ワークで作成。その後、各グループのメンバーと自由に提案しあうワークを行いました。

受講者からは、「実際に自分の教案を他の先生と検討する機会はとてもありがたかった。」「アクティブ・ラーニングについてわかりやすく解説されており理解に役だった」「うまく活用し有効に使いたいと思います。」等の感想をいただきました。

【セッション4】
生成AIの登場によって、学習デザインはどのように変わるのか?
田原真人(IAF JAPAN 理事、参加型社会学会理事、デジタルファシリテーター)

田原真人氏

生成AIの登場により、個人を取り巻く学習環境や、社会における産業構造などが激変するとき、学習デザインはどのようになるのかを、受講者と共に考え、Chat GPTの利用をワークに取り入れながら、解説していただきました。

ワークでの感想や意見を、セッション進行と同時にSlackに掲載していただきました。

受講者からは、「私には高いハードルを感じました。同時に必要な情報かとも感じました。」「今後のゼミ等でのグループワークに活用できそうだと思いました。色々まだルールも定まらない中だと思いますが、倫理面や著作権の面で、問題がないのかという点には、田原先生から言及していただく方がよかったかもしれません。」というご意見の他、「生成AIを実際に使用できたのが大きかった。」「1番最後にふさわしい内容だったと思います。活動そのものに対する質疑応答の時間があればなと思いました。」という感想もいただきました。

【ハーベスト(集合知の共有)】

受講者の先生方全員に、順に研修の感想をいただきました。
最後に、各講師からのチェックアウトの言葉をいただきました。

◇◇Slackにも同時に掲載していただきました。一部紹介いたします。◇◇
●アクティブラーニングはあくまでも手法であり、授業の目標を明確にする。そして、目の前の学生に合わせてやっていきたいです。たくさんツールを用意しながらも、その場の雰囲気に合わせて当日はツールを3つだけ出してワークをしていた佐順先生の姿を目に焼き付けておきます。
●学生にどうなってほしいのか、何を学んでほしいのかを明確にすることの大切さを感じました。
自身の講義を振り返ると、させたいことが先行し講義の目的や目標を置いてけぼりにしていると感じました。
AIなどの新しい技術を用いながら堅実かつ刺激的な講義をすること、学生が求めているか否かに関わらず、熱量がある(楽しそうに喋る)講義を行えるよう努めます。
●アクティブ・ラーニングについて、さまざまな実例を聞くことができて非常に有益であった。また、諏訪先生のトレーニングはゼミでも活用できると思った。
全体を通じて感じたことは、大学の教員というのは無免許であるが、それが許容されていた時代は終わりつつあり、我々は真剣に対応していかなければならないということである。
●1コマ90分の限られた時間の中で学生に何を見つけてほしいのか、学生にどうなってほしいのか、目的を明確にして目的達成のための授業を設計していきたいです。
●クリティカルリーディングは対象の文献によって講義そのものの難易度も変わってくると思うので、学部の講義に留まらず院やゼミ、研究会等でも重用できる内容だった。非常に実りのある研修でした。
●事前学習の段階で学生によるAI学習を、続いて、授業冒頭に学生間のWGによる調査内容のブラシュアップを、その後、教員による補足説明を取り入れてみようと思います。
●今回のセミナーを通して、学習目標を明確に示し、学生の意欲を刺激することや生成AIを活用して、学生が深くまなべるような学習のスタイルを提供することが重要だと学ぶことができました。
●本セミナーを通して、自身の専門分野、研究領域、今後のキャリアも包括した上で、「大学における教育とは?」という問いを考え続けることができたのではないかと思っています。
●先生方とディスカッションしながら課題に取り組んだことで,自分が抱えている問題意識が明確になったと感じています。
●今回学んだChatGPTのクリティカルリーディングを活用して、複数の文献を把握して、本当に考えるところに時間を使えるように教育に取り入れたいと思いました。
●普段は、他の先生方との横の繋がりが薄く、試行錯誤しているため、昨年に引き続きこのような場に参加できて、講師や参加者の色々な先生方にアドバイスを頂きとても貴重な機会でした。
●生成系AIについては、まず自分で使いこんで、自分なりに教育的利用方法を考えていこうと思います。大変有意義な研修でした。

【閉会式】

菊地滋夫運営委員長から
一番若い先生へ参加証明書授与

最後に、新任教員研修セミナー運営委員長の菊地滋夫先生から参加証明書を授与していただき、記念撮影の後、閉会となりました。
運営委員の先生方には、企画立ち上げから、当日の講師まで務めていただき本当に感謝申し上げます。

また、全国からご参加いただいた受講者の方からは、「期待していたものよりも遥かに良かった。現時点では「大学セミナーロス」になっています。」「他大・他分野の先生方とお会いし、じっくりお話できる貴重な機会だと感じます。」「教育手法について、まさにホットな分野を丁寧にお教えいただけました。」など、多くの感想をいただきました。
このセミナーが、ご参加いただいた大学教員の方々の今後の一助になれば幸いです。

 

【記念撮影】
皆様、一か月間お疲れ様でした。

対面セミナーショートムービー(2日間を振り返って)

新任教員研修セミナー運営委員

<委員長>
菊地 滋夫(明星大学人文学部教授)
<委員>
諏訪 茂樹(東京女子医科大学統合教育学修センター准教授)
福山 佑樹(関西学院大学ライティングセンター教授)
藤井 恒人(東京農工大学グローバル教育院教授)
田原 真人(IAF JAPAN 理事、参加型社会学会理事、デジタルファシリテーター)

お問い合わせ

公益財団法人 大学セミナーハウス・セミナー事業部
 TEL:042-677-0141(直)FAX:042-676-1220(代)
 E-mail:seminar@seminarhouse.or.jp
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