セミナー・イベント

第39回大学職員セミナー
大学を牽引する職員を目指して--大学とスポーツを考えるⅠ--

実施報告

期間 2019年7月5日(金)
場所 法政大学市ヶ谷キャンパス(ボアソナードタワー26階・スカイホール)
主催 公益財団法人大学セミナーハウス
協賛 公益社団法人学術・文化・産業ネットワーク多摩

参加状況 :45名・31校(順不同)

静岡産業大学・東海大学・法政大学(各3)、青山学院大学・志學館大学・筑波大学・中央大学・東京国際大学・東洋大学・白鷗大学(各2)、大阪体育大学・関西大学・岐阜聖徳学園大学・岐阜大学・共栄大学・甲南大学・国士舘大学・札幌大学・四国大学・摂南大学・創価大学・大正大学・高岡法科大学・高崎経済大学・東京大学・東京農業大学・東洋学園大学・同志社大学・新潟医療福祉大学・日本体育大学・名城大学(各1)その他(各1)
                                                  

趣旨

 東京オリンピック2020を目前にして、「スポーツ」への注目度がより高まりをみせています。そうした中で、自校のブランディング強化策として重点化を行う大学や、スポーツアドミニストレーション組織の整備に取り組む大学、「スポーツマネジメント」を教育プログラムに積極的に活用しようと考える大学等、「スポーツ」と「大学」の関わりはより密接になっています。
 また、日本版NCAAと言われる「一般社団法人大学スポーツ協会」(“UNIVAS”)が設置され、多様な視点から様々な見解が述べられています。あらためて「大学」と「スポーツ」のありかたを見つめ直し、大学職員としてどのように関わっていくべきか、スポーツの持つ「健全性」や「素晴らしさ」をどのように大学の活動に結びつけていくかを考えたいと思います。
 

■開会式

 第39回大学職員セミナーは今年も盛大に開催されました。開催に当たりましては当セミナーの企画委員長である法政大学常務理事近藤清之様のご好意で会場を利用させていただき、公益社団法人学術・文化・産業ネットワーク多摩の協賛をいただいております。
 梅雨のシーズンで雨の日が続いておりましたが、当日は終了まで雨も上がり多くの参加者の方をお迎えすることができました。
 開会初めに、大学セミナーハウスの鈴木康司館長から次の挨拶がありました。

■大学セミナーハウス 鈴木康司館長挨拶

【鈴木館長挨拶全文】
 大学セミナーハウスからご挨拶申し上げます。毎年、7月と9月ごろ、この職員セミナーを開催しておりますが、7月は当セミナーの企画委員長である法政大学常務理事近藤清之(きよゆき)さまのご好意でいつもこのボワソナードタワーの会場を利用させていただいており、誠に感謝しております。特に前回は法政大学総長田中優子先生に講演をして頂きまして、多数の参加者を得ましたことを御礼申し上げます。また今回も公益社団法人学術・文化・産業ネットワーク多摩の協賛をいただきましたことにも感謝申し上げます。2回目のセミナーはは9月20日、21日に一泊2日の予定でセミナーハウスに会場をうつして行いますので、ぜひご参加ください。
 さて39回目のテーマは「大学を牽引する職員を目指して」サブタイトルは「大学とスポーツを考える」というものであります。来年は久しぶりで東京オリンピックが開かれますが、そういう時事的な話題を別にしても、このサブタイトルは非常に大きな問題を含んでおります。今回は講師として法政大学経済学部教授の杉本達勇(たつお)先生をお迎えできました。日本の大学スポーツの今後の歩みはどうあるべきか、私どもも大いに関心のあるところであります。示唆に富んだお話を伺えるものと期待しております。
 日本における大学スポーツはその発足当時から、国公私立を問わず、それぞれの大学における学生の自治活動として行われてきました。それだけに大学自治の問題ともかかわっており、なかなか全国を統一的に包含するルールが確立していないのが現状です。さらにあくまでも自治活動でありますので、学生及び卒業生の団体によって管理・運営されるのが大方の大学ではないかと存じます。私もかつて、中央大学の学長当時、学内規則により、学生自治を教学が保証するという形で、学生自治会によるスポーツ・文化活動全体を統括する学友会の会長を務めましたので、この自治活動が意味する状況や運動部に所属する学生諸君の学生生活の在り方について問題意識を持っておりました。大学スポーツを学生の自治活動の一環ととらえるか、それとも大学教育と密接に結びついたものととらえるかによって、考え方も実状も大きく変わります。
 昨年暮れから今年の初めにかけ、スポーツ庁の音頭取りによって日本版NCAAと言われる大学スポーツ協会UNIVASが発足しました。この団体が今後、日本の大学全体を統括できる巨大な組織になるか否かはまだ何とも言えない現状です。
 そもそもアメリカのNCAAすなわち全米大学スポーツ協会というのは1905年にアメリカ大統領セオドア・ルーズヴェルトの肝いりで始まり、現在では全米約2300大学中約1200大学が加盟しいている大組織で大学や地域リーグのスポーツ競技の統括・管理その中には人気種目のアメリカンフットボールやバスケットボール、野球、陸上競技、ホッケーはじめ23競技が含まれています。重要なのは、スポーツと学業を両立させるための厳密なルール作りを行い、優秀なスポーツ選手には、奨学金や、授業料などの援助を行いますが、反面、学期ごとに成績が基準に達しない学生は、出場停止、奨学金はく奪などの厳しい処置がとられます。これは学生のスポーツ活動をあくまでも教育の一環と位置付けているからにほかなりません。
 これに対し日本の現状はどうかと言いますと、運動部に属するのは学生の自治活動とみなされるために、4年間の学業とは別のものと解釈され、成績が振るわなくても、それは自己責任という解釈で、卒業できないまま大学を離れる学生がしばしばみられます。スポーツで名前を売る私立大学では、いわゆる下駄をはかせるというやり方で特別扱いをするところもないとは言えないようです。これに輪をかけているのが最近のほとんどの有力私立大学にあるスポーツ推薦入学制度です。これは自治活動とは明らかに矛盾する大学側の変則措置ではありますが、背に腹は代えられないというのでしょうか。厳然と存在しております。中には入学はおろか卒業まで何とかしてしまう丸抱えの大学までも存在するといわれるほどです。
 それだけにスポーツ庁が掲げる日本版NCAAはこれらの問題に対していかなる対応を示し、いかなる方向づけを行うのか、またスポーツの有力大学は大学自治との関わりにも触れる、この新組織にどう対処するのか、私はすでに現役の大学教員を離れておりますが、今日の杉本先生のお話しをじっくりと伺いたいと思っております。
 参加者の皆様には、ご自分の大学の学生スポーツがこの新しい組織とどうかかわるのかじっくりとお考えいただければ幸いです。今日が皆様にとって、収穫の多い一日でありますことを願って私のご挨拶といたします。有難うございました。
 

■イントロダクション・問題提起
                    法政大学常務理事 近藤清之

 大学スポーツ協会(UNIVAS)の創設に伴い、大学スポーツは大きな転換期を迎えています。法政大学常務理事である近藤氏は、各大学における大学スポーツの位置づけと、法政大学の取り組み事例を紹介しながらグループワークに向けた問題提起をされました。参加者からは「スポーツに関わる問題は大小問わず、どの大学も持っていると知ることができました。」「内容も濃く、あらゆる視点で大学スポーツについて考えながら、セミナーに参加できました。」「現状について率直なお話いただき、参考になりました。」との感想が寄せられています。

問題提起をする近藤清之委員長

大学スポーツ協会(UNIVAS)について解説する近藤委員長

■講演
大学スポーツの現在
                 法政大学経済学部教授 杉本龍勇

ご講演中の杉本龍勇先生

 大学スポーツの現在を、スポーツを取り巻く環境・体育会の傾向から分析し、そこからの問題点を大学職員としてどのように解決していくべきか、今後の方向性についての私見を述べられました。
 参加者からは、「杉本先生もアスリート出身なので、分析や学生行動解説に説得力がありました。体力低下が経済に与える影響や働き方改革にも話がつながり興味深かった。」「スポーツ経済・経営の先生とあり、様々な事例と、トップアスリートとしてのご経験をもとにお話されて、大変興味深くすばらしい内容でした。」「“大学スポーツ”を単なる部活動という位置づけだけでなく、幅広い視点(一般学生や今取りまいている社会状況等)でご講演いただき、スポーツへの関心度はさらに上がった。」「最近の学生の傾向について大変勉強になりました。私の学生時代と異なり、思考・環境等が大きくことなることを意識して学生指導に取り組みたいと思います。」「体育会の学生ばかりに目を向けがちだが、一般学生の体力低下についての情報には非常に目からウロコでした。」「ユニバスという言葉が先行している中、今考えるべき大学スポーツについて考えることができました。今後、持ち帰ってどう活かしていくか、考えたいと思います。」など、新しい発見があり大変参考のなったという感想が多く届きました。

大学スポーツの実状についてのお話を熱心に聞き入る参加者の方々

■グループワーク

 参加者が受け身の受講者にならないように全員が発言できる機会をつくるためにワールド・カフェ形式で6グループに分かれて、6つのテーマ(「A:学生アスリート支援の位置付け」「B:経営資源の投入」「C:成果の実現」「D:正課の学修支援」「E:学生生活支援」「F:卒業後のキャリア支援」)を掲げて議論しました。1回20分で自由に意見交換しメンバーチェンジを2回、3ラウンドを展開するので、参加者は3つのテーマを経験します。
 その結果、参加者からは「各大学の取り組みを知ることができた。新たな視点を獲得できた。」、「20分ごとに3つのテーマを議論できたが、興味深いテーマも多かったので、もう少し時間をかけて他大学の取り組みを聞いてみたかった。」、「各大学の取り組みや、スポーツをしている学生に対しての取り組みなど、とても新鮮でした。大学の規模によってやれることやれないことはあると思うが、どんどん取り入れていきたいです。」との感想が寄せられ。国公私立大学の壁を越えて、部署・年齢・立場など多様な参加者が意見交換する貴重な機会となりました。

ワールドカフェ形式でのグループワーク

各グループから意見の変遷を発表

■総評
■閉会式

 各グループからの発表後、筑波大学大学研究センター准教授加藤氏より総評がありました。杉本先生のご講演と対比しながら、6つのテーマについてまとめていただきました。
 最後に大学セミナーハウス専務理事より挨拶があり第39回大学職員セミナーは閉会いたしました。

各グループ発表後に総評をする加藤毅委員

閉会の挨拶をする外村幸雄専務理事

■情報交換会

 閉会式後に会場を移し、17時15分より『情報交換会』が始まりました。ご講演後一度ご退室された杉本龍勇先生もお忙しい中ご出席くださり、参加者の皆様に囲まれ歓談されていらっしゃいました。
 和やかな中にも多くの参加者との交流を図り、情報交換し、自大学の今後のために熱心にお話されていらっしゃった参加者からは、「他大学の方との交流は、とても貴重な機会です。」「大学スポーツに関すること。ユニバスに関することを細かく認識できたので、参加してよかったです。大学としても、個人としても、他大学の方々のお話をたくさん聞けましたので、今後に活かしていきたいと思いました。」「色々な大学からいらっしゃっていたので、スポーツをしている学生に対する修学支援など、様々な意見を聞くことが出来、よかった。」などの感想をいただきました。
 名残りおしい中、19時少しまわりまして解散となりました。
 多くの方にご参加いただきありがとうございました。このセミナーが、大学職員の方々の今後の一助になれば幸いです。

杉本龍勇先生を囲んでのお話は尽きないようです

国公私立を壁を越えて交流する参加者

自己紹介とコメントを述べる参加者の方々

和やかな雰囲気の中で各大学の悩みも共感し合えます

大学職員セミナー企画委員会

<委員長>法政大学常務理事 近藤 清之 
<委 員>高崎経済大学教育グループキャリア支援チーム 青木加奈子
       中央大学入学センター入学企画課課長 大久保陽造
     筑波大学大学研究センター准教授 加藤毅
     慶應義塾塾監局総務部課長・協生環境推進室事務長 黒田絵里香

開催状況

お問い合わせ

公益財団法人 大学セミナーハウス・セミナー事業部
 TEL:042-677-0141(直)FAX:042-676-1220(代)
 E-mail:seminar@seminarhouse.or.jp
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