世界の中の中国と日本-現代中国理解Ⅳ
―新たな世界秩序?の下で中国共産党新政権の目指すもの―
実施報告
期間 | 2022年12月3日(土)~4日(日) |
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会場 | 大学セミナーハウス(東京都八王子市下柚木1987-1) |
主催 | 公益財団法人大学セミナーハウス |
参加状況 10校 22名 社会人4名 合計26名
学習院女子大学(10名)、青山学院大学(3名)、大東文化大学(2名)、上智大学、東京外国語大学、日本女子大学、学習院大学、京都外国語大学、城西大学、東京大学(各1名)
社会人(4名)
社会人(4名)
【趣旨】
新型肺炎感染症、そしてロシアのウクライナ戦争によって、世界は新たな時代を迎えているのかもしれない。たとえ、新たな時代とは言えないとしても、2010年代と2020年代とでは世界的な、またこの東アジアの国際関係は大きく変わった。米中「対立」は激化し、台湾海峡の緊張は増している。
この新型肺炎感染症に中国はいかに立ち向かい、ロシアのウクライナ侵攻を中国はいかに捉えたのだろうか。そして経済安保の重要性が提起される中で中国はいかなる持続可能な経済発展像を描いたのだろうか。中国では2022年秋に新政権が成立した。この講座では新政権の立ち上がりに注目しつつ、目下の中国の立ち位置を政治的、経済的、社会的に確認するとともに、その国内情勢の延長上にある外交、台湾政策などの面からも考察してみたい。この講座を受講し、講師や他の参加者との学びや議論を通じて、一般的に言われる「西側先進国vs中露専制主義国」といった二項対立的な見方や、中国は「こうあるべき」と言った議論を相対化していくきっかけを受講者が得られれば幸いである。(川島真企画委員長)
この新型肺炎感染症に中国はいかに立ち向かい、ロシアのウクライナ侵攻を中国はいかに捉えたのだろうか。そして経済安保の重要性が提起される中で中国はいかなる持続可能な経済発展像を描いたのだろうか。中国では2022年秋に新政権が成立した。この講座では新政権の立ち上がりに注目しつつ、目下の中国の立ち位置を政治的、経済的、社会的に確認するとともに、その国内情勢の延長上にある外交、台湾政策などの面からも考察してみたい。この講座を受講し、講師や他の参加者との学びや議論を通じて、一般的に言われる「西側先進国vs中露専制主義国」といった二項対立的な見方や、中国は「こうあるべき」と言った議論を相対化していくきっかけを受講者が得られれば幸いである。(川島真企画委員長)
【開会】
開会の挨拶:大学セミナーハウス 鈴木康司館長
鈴木館長挨拶全文
皆さん今日は。大学セミナーハウスにはグローバルなテーマを掲げ、国際的視野を養う主催セミナーがいくつかありますが、現代中国理解を目的としたこのセミナーもその重要なひとつであります。
第二次世界大戦が終わった直後の中国は蒋介石率いる国民政府とこれに対立して共産党指導の政府を樹立しようとする毛沢東や周恩来率いる勢力が激しい内戦の形で権力争いを繰り広げておりましたが、その後の経過は皆さんもご存じの通り蒋介石側は台湾に逃れ、中国は香港やマカオを例外として、ほとんど全部を支配し、今日ではその二つもまた共産党政府に飲み込まれた結果、一つの中国という原則を掲げながらも政治体制の違う本土政府と台湾政府の二つが厳然と存在して、いまにも火を噴きそうな国際的緊張のもとになっているのは衆目の一致するところでありましょう。
日本としても、好むと好まざるとにかかわらず大昔からの隣人である中国との関係を今まで以上に意識せざるを得ないのが現実でありましょう。
20世紀にはそれほど目立たなかった中国の国際的存在感も21世紀も20年以上経た今では大きく変わり、ソ連崩壊後のロシアにとって代わり、独裁的社会主義国家の代表として国民主権を掲げる民主主義国家アメリカ合衆国と、政治、社会、経済、国際関係全般にわたって対抗しており、その存在は実に大きいと言わざるを得ません。
今回のセミナーも企画委員長川島先生はじめ前回と同じく小嶋,金野、森の三先生のご指導の下、一般に言われている中国の実状が本当のところどうなのか、メディアによる情報が果たしてどの程度の事実を我々に伝えているのかを検証する良い機会であると考えております。久しぶりに対面で行われる今回のセミナーでぜひ複眼的思考を豊かに養ってくださることを主催者として願いつつごあいさつに代えさせていただきます。ありがとうございました。
皆さん今日は。大学セミナーハウスにはグローバルなテーマを掲げ、国際的視野を養う主催セミナーがいくつかありますが、現代中国理解を目的としたこのセミナーもその重要なひとつであります。
第二次世界大戦が終わった直後の中国は蒋介石率いる国民政府とこれに対立して共産党指導の政府を樹立しようとする毛沢東や周恩来率いる勢力が激しい内戦の形で権力争いを繰り広げておりましたが、その後の経過は皆さんもご存じの通り蒋介石側は台湾に逃れ、中国は香港やマカオを例外として、ほとんど全部を支配し、今日ではその二つもまた共産党政府に飲み込まれた結果、一つの中国という原則を掲げながらも政治体制の違う本土政府と台湾政府の二つが厳然と存在して、いまにも火を噴きそうな国際的緊張のもとになっているのは衆目の一致するところでありましょう。
日本としても、好むと好まざるとにかかわらず大昔からの隣人である中国との関係を今まで以上に意識せざるを得ないのが現実でありましょう。
20世紀にはそれほど目立たなかった中国の国際的存在感も21世紀も20年以上経た今では大きく変わり、ソ連崩壊後のロシアにとって代わり、独裁的社会主義国家の代表として国民主権を掲げる民主主義国家アメリカ合衆国と、政治、社会、経済、国際関係全般にわたって対抗しており、その存在は実に大きいと言わざるを得ません。
今回のセミナーも企画委員長川島先生はじめ前回と同じく小嶋,金野、森の三先生のご指導の下、一般に言われている中国の実状が本当のところどうなのか、メディアによる情報が果たしてどの程度の事実を我々に伝えているのかを検証する良い機会であると考えております。久しぶりに対面で行われる今回のセミナーでぜひ複眼的思考を豊かに養ってくださることを主催者として願いつつごあいさつに代えさせていただきます。ありがとうございました。
【基調講演】
テーマ:「新たな世界秩序?の下で中国共産党新政権の目指すもの」
講演者: 川島 真(東京大学大学院教授・当セミナー企画委員長)
【講師紹介】川島 真(かわしま しん)東京大学大学院 教授
1968年東京生まれ。東京外国語大学卒、東京大学大学院人文社会系研究科(東洋史学)修士課程・博士課程修了。博士(文学)。1998年に北海道大学法学部助教授、2006年に東京大学大学院総合文化研究科准教授を経て、2015年より現職。専門はアジア政治外交史。
1968年東京生まれ。東京外国語大学卒、東京大学大学院人文社会系研究科(東洋史学)修士課程・博士課程修了。博士(文学)。1998年に北海道大学法学部助教授、2006年に東京大学大学院総合文化研究科准教授を経て、2015年より現職。専門はアジア政治外交史。
【パネルディスカッション】
企画委員長の川島真先生からセミナーの開催趣旨に基づく講演があり、 4人の分科会講師によるパネルディスカッションへと続きます。
下記4つのテーマを念頭に置いて、次の分科会討議に移行するにあたっての論点整理となりました。
◇テーマ1(第1分科会)
「政治班」
◇テーマ2(第2分科会)
「社会班」
◇テーマ3(第3分科会)
「経済班」
◇テーマ4(第4分科会)
「国際関係+台湾班」
参加者の方からは、「川島先生のご講演はそのまま新書になる程のクオリティの高さだと感じます。又他方で確りとパネルディスカッションの時間も確保して頂き、進行への細やかな配慮を感じます。」「多分野から中国に対するお話を聞くことができたので、とても良かったです。」との感想をいただきました。
分科会の部屋に移動する前に、参加者26名の自己紹介を行いました。
参加者の皆さんに経歴、および、参加の動機や目的について語っていただきました。
また、スケジュールの変更がありました。
19:00~21:00 全体会Ⅱを 19:00~20:30 分科会討論Ⅱとし、
懇親会は、20:30~となりました。
下記4つのテーマを念頭に置いて、次の分科会討議に移行するにあたっての論点整理となりました。
◇テーマ1(第1分科会)
「政治班」
◇テーマ2(第2分科会)
「社会班」
◇テーマ3(第3分科会)
「経済班」
◇テーマ4(第4分科会)
「国際関係+台湾班」
参加者の方からは、「川島先生のご講演はそのまま新書になる程のクオリティの高さだと感じます。又他方で確りとパネルディスカッションの時間も確保して頂き、進行への細やかな配慮を感じます。」「多分野から中国に対するお話を聞くことができたので、とても良かったです。」との感想をいただきました。
分科会の部屋に移動する前に、参加者26名の自己紹介を行いました。
参加者の皆さんに経歴、および、参加の動機や目的について語っていただきました。
また、スケジュールの変更がありました。
19:00~21:00 全体会Ⅱを 19:00~20:30 分科会討論Ⅱとし、
懇親会は、20:30~となりました。
【分科会討論】12/3(土)・12/4(日)
第1分科会
テーマ | 「政治班」 |
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担当講師 | 小嶋 華津子先生(慶應義塾大学教授) |
第1分科会主旨
このグループでは、秋に発足した新指導部が直面している政治・経済・外交上の課題(汚職腐敗、景気の減退、地方債務、少子化、少数民族問題、香港統治、米中対立、台湾問題など)をリストアップした上で、それぞれの課題をどのような政治的ツールを用いて解決しようとしているのかを学ぶ。日々メディアには、中国に関する情報や評論が溢れている。本グループでは、外在的な視点からの評論とは一線を画し、できる限り共産党政権の目線、習近平自身の目線に立ち、統治者の立場から諸問題を捉え直してみたい。
このグループでは、秋に発足した新指導部が直面している政治・経済・外交上の課題(汚職腐敗、景気の減退、地方債務、少子化、少数民族問題、香港統治、米中対立、台湾問題など)をリストアップした上で、それぞれの課題をどのような政治的ツールを用いて解決しようとしているのかを学ぶ。日々メディアには、中国に関する情報や評論が溢れている。本グループでは、外在的な視点からの評論とは一線を画し、できる限り共産党政権の目線、習近平自身の目線に立ち、統治者の立場から諸問題を捉え直してみたい。
第2分科会
テーマ | 「社会班」 |
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担当講師 | 金野 純先生(学習院女子大学教授) |
第2分科会主旨
「中華民族の偉大なる復興」を掲げる共産党政権であるが、中国は多種多様な社会的問題(人口減少と社会保障、環境破壊、民族対立、世代による政治的価値観の変化…等々)を抱えており、その前途は多難である。本グループでは、講師が準備したコースパックに基づいて、こうした課題についてより深く理解し、共産党一党独裁体制下における中国社会の持続的な発展可能性について自由に議論する。
「中華民族の偉大なる復興」を掲げる共産党政権であるが、中国は多種多様な社会的問題(人口減少と社会保障、環境破壊、民族対立、世代による政治的価値観の変化…等々)を抱えており、その前途は多難である。本グループでは、講師が準備したコースパックに基づいて、こうした課題についてより深く理解し、共産党一党独裁体制下における中国社会の持続的な発展可能性について自由に議論する。
第3分科会
テーマ | 「経済班」 |
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担当講師 | 森 路未央先生(大東文化大学准教授) |
第3分科会主旨
米中対立、新型肺炎感染症、ロシアのウクライナ侵攻などをきっかけに、中国経済の先行き不透明・不確実性が高まっているといわれる。このグループでは、「西側先進国vs中露専制主義国」という二項対立の見方があるなかでの日本の立ち位置について、中国経済と日系企業という視点から考察する。まず、2010年代までの中国経済と日系企業の発展、2020年代の新たな問題を共有し、日系企業の今後の事業展開に向けた課題や解決策を議論する。そして、国内外の2つの経済循環を相互促進することで新たな発展を目指す「双循環」戦略のもと、今の中国政府が強化する政策(イノベーション、都市化、技術導入の推進など)について共有し、中国経済発展の核心的ポイントに日系企業がどうマッチしていくかについても考察する。
米中対立、新型肺炎感染症、ロシアのウクライナ侵攻などをきっかけに、中国経済の先行き不透明・不確実性が高まっているといわれる。このグループでは、「西側先進国vs中露専制主義国」という二項対立の見方があるなかでの日本の立ち位置について、中国経済と日系企業という視点から考察する。まず、2010年代までの中国経済と日系企業の発展、2020年代の新たな問題を共有し、日系企業の今後の事業展開に向けた課題や解決策を議論する。そして、国内外の2つの経済循環を相互促進することで新たな発展を目指す「双循環」戦略のもと、今の中国政府が強化する政策(イノベーション、都市化、技術導入の推進など)について共有し、中国経済発展の核心的ポイントに日系企業がどうマッチしていくかについても考察する。
第4分科会
テーマ | 「国際関係+台湾班」 |
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担当講師 | 川島 真先生(東京大学大学院教授) |
第4分科会主旨
このグループでは、中国自身が設定した2049年の「中華民族の偉大なる復興の夢」の実現に向けて、どのような国際秩序や地域秩序を想定しているのか、そこに向けて何をしようとしているのかということを踏まえた上で、そこでの課題や困難、諸外国の視線について学ぶ。また、新型肺炎感染症やロシアのウクライナ侵攻などで激化した米中「対立」、そして台湾海峡をめぐる緊張の高まりがなぜ生じたのか、台湾社会はそれをどのように受け止めているのかといったことを学び、中国の対外政策や台湾政策に関する今後の可能性、中国にとっての課題などについて考察を深める。その際、国内政治、経済、社会といかに結びついているのかということに特に留意する。
このグループでは、中国自身が設定した2049年の「中華民族の偉大なる復興の夢」の実現に向けて、どのような国際秩序や地域秩序を想定しているのか、そこに向けて何をしようとしているのかということを踏まえた上で、そこでの課題や困難、諸外国の視線について学ぶ。また、新型肺炎感染症やロシアのウクライナ侵攻などで激化した米中「対立」、そして台湾海峡をめぐる緊張の高まりがなぜ生じたのか、台湾社会はそれをどのように受け止めているのかといったことを学び、中国の対外政策や台湾政策に関する今後の可能性、中国にとっての課題などについて考察を深める。その際、国内政治、経済、社会といかに結びついているのかということに特に留意する。
【各分科会討論結果発表・総括講師コメント】12/4(日)
分科会毎に、2日間討論した結果報告(15分)と質疑応答(15分)が行われました。
最後に、各講師に報告の補足コメントと、全体の講評をいただきました。
最後に、各講師に報告の補足コメントと、全体の講評をいただきました。
【閉会】
修了書交付
閉会の挨拶:大学セミナーハウス 外村幸雄専務理事
【修了証書交付】
講評後、各分科会講師より、参加者に修了証書を交付していただきました。
【閉会の挨拶】
大学セミナーハウス外村専務理事より閉会の挨拶があり、閉会となりました。
この後、参加者の皆さんはそれぞれの分科会講師を囲み、修了証書を手に記念写真を撮影しました。
参加者の方からは「コロナ禍で第1、2回の約半数の参加人数に絞っているにも関わらず、参加者の意欲的姿勢の様子が随所に伺われた。」「分科会討論では、限られた時間の中で問いを立て発表の準備をすることが、とても自分の力になりました。また、初対面の方と協力することも非常によい経験になりました。」「懇親会は、分科会を越えて講師の皆様や参加者同志でカジュアルな雰囲気で交流出来、翌日の英気を養えた。」「どの分科会の発表も見応えがあり、聞き入ることができた。」などの感想が寄せられました。
今回のセミナーには多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました。
また、セミナーの企画から運営までご尽力いただき、2日間にわたって熱心に参加者と向き合っていただいた4人の講師の先生方に心より感謝申し上げます。
講評後、各分科会講師より、参加者に修了証書を交付していただきました。
【閉会の挨拶】
大学セミナーハウス外村専務理事より閉会の挨拶があり、閉会となりました。
この後、参加者の皆さんはそれぞれの分科会講師を囲み、修了証書を手に記念写真を撮影しました。
参加者の方からは「コロナ禍で第1、2回の約半数の参加人数に絞っているにも関わらず、参加者の意欲的姿勢の様子が随所に伺われた。」「分科会討論では、限られた時間の中で問いを立て発表の準備をすることが、とても自分の力になりました。また、初対面の方と協力することも非常によい経験になりました。」「懇親会は、分科会を越えて講師の皆様や参加者同志でカジュアルな雰囲気で交流出来、翌日の英気を養えた。」「どの分科会の発表も見応えがあり、聞き入ることができた。」などの感想が寄せられました。
今回のセミナーには多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました。
また、セミナーの企画から運営までご尽力いただき、2日間にわたって熱心に参加者と向き合っていただいた4人の講師の先生方に心より感謝申し上げます。
【記念撮影】12/3(土)
【参加者懇親会】12/3(土)
【各分科会毎に記念撮影】12/4(日)
現代中国理解セミナー企画委員会
川島 真【委員長 】(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
小嶋 華津子(慶應義塾大学法学部 教授)
金野 純(学習院女子大学国際文化交流学部 教授)
森 路未央(大東文化大学外国語学部 准教授)
小嶋 華津子(慶應義塾大学法学部 教授)
金野 純(学習院女子大学国際文化交流学部 教授)
森 路未央(大東文化大学外国語学部 准教授)
お問い合わせ
公益財団法人 大学セミナーハウス セミナー事業部
〒192-0372 東京都八王子市下柚木1987-1
TEL:042-676-8512(直)FAX:042-676-1220(代)
E-mail:seminar@seminarhouse.or.jp
URL:https://iush.jp/
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