古田武彦記念古代史セミナー2021
セミナー実施報告
期間 | 2021年11月13日(土)~14日(日) |
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場所 | 大学セミナーハウス (東京都八王子市下柚木1987-1) |
主催 | 公益財団法人大学セミナーハウス |
共催 | 多元的古代研究会 東京古田会 古田史学の会 東海古代研究会 |
参加状況 | 63名(会場参加者34名・オンライン参加者29名) |
【趣 旨】
「倭の五王」の時代
昨年開催した「古田武彦記念古代史セミナー2020」では卑弥呼の時代(3世紀)に焦点を当てましたが、今年は、「倭の五王」の時代(5世紀)に焦点を当てることにしました。
私は子供の時から歴史に興味がありましたが、日本古代史に強い関心を抱いたのは、大学1年生の時に井上光貞助教授(当時)の講義を聴いたときからでした。井上先生は講義の中で「倭の五王」を採り上げられ、「讃≒仁徳又は履中」「珍≒反正」「済≒允恭」「興≒安康」「武=雄略」であることを説明されました。しかし、そこで井上先生が挙げられた「=」又は「≒」の根拠理由の殆どが私には「≠」の根拠理由に思えました。例えば、「武の在位期間は478年から502年、雄略の在位期間は456年から479年」は私には「武=雄略」の根拠ではなく「武≠雄略」の根拠に思えました。1959年のことでした。しかし、それ以上深く疑ってみることはありませんでした。
私が次に「倭の五王」に興味を持ったのは、古田先生の第2書『失われた九州王朝』(朝日新聞社 1973年8月8日発行)に接した時でした。物語として古代を語るのは夢がありこの上なく楽しいのですが、古代史学においては科学的な「史実」の確認が基本であり、その作業はevidence-basedでなければなりません。古田先生は『失われた九州王朝』において、「倭の五王」の時代を含めて九州王朝に関するevidence-based historyを垂範して下さいました。
とはいえ、「倭の五王」の時代は卑弥呼の時代に比べて情報量が少なく、同時代史料といえるものは『宋書』と高句麗好太王碑くらいしか知られていません。そのために、「倭の五王」が「どこにいたか」「何をしたか」に関するevidence-basedな解明が進んでいないと言わざるを得ません。
その様な中にあって、河内春人先生の近刊『倭の五王 王位継承と五世紀の東アジア』(中公新書 2018年1月25日発行)は、「倭の五王」の時代を学ぶ者にとって必読の書であると考え、河内先生に特別講演をお願い致しました。
このセミナーでは、河内先生のお話をお聴きし、『失われた九州王朝』をもう一度読み返すことにより、古田先生の古代史学の研究方法を再確認した上で、「倭の五王」の時代のevidence-based historyについて建設的な議論が盛り上がることを期待しています。
このセミナーは、研究者のみならず、古代史に関心を持つ全ての人を歓迎します。このセミナーが、若い人々が真実の古代を覗く窓になれば幸いです。
このセミナーは、大学セミナーハウスと多元的古代研究会、東京古田会、古田史学の会及び東海古代研究会が共同で開催します。
私は子供の時から歴史に興味がありましたが、日本古代史に強い関心を抱いたのは、大学1年生の時に井上光貞助教授(当時)の講義を聴いたときからでした。井上先生は講義の中で「倭の五王」を採り上げられ、「讃≒仁徳又は履中」「珍≒反正」「済≒允恭」「興≒安康」「武=雄略」であることを説明されました。しかし、そこで井上先生が挙げられた「=」又は「≒」の根拠理由の殆どが私には「≠」の根拠理由に思えました。例えば、「武の在位期間は478年から502年、雄略の在位期間は456年から479年」は私には「武=雄略」の根拠ではなく「武≠雄略」の根拠に思えました。1959年のことでした。しかし、それ以上深く疑ってみることはありませんでした。
私が次に「倭の五王」に興味を持ったのは、古田先生の第2書『失われた九州王朝』(朝日新聞社 1973年8月8日発行)に接した時でした。物語として古代を語るのは夢がありこの上なく楽しいのですが、古代史学においては科学的な「史実」の確認が基本であり、その作業はevidence-basedでなければなりません。古田先生は『失われた九州王朝』において、「倭の五王」の時代を含めて九州王朝に関するevidence-based historyを垂範して下さいました。
とはいえ、「倭の五王」の時代は卑弥呼の時代に比べて情報量が少なく、同時代史料といえるものは『宋書』と高句麗好太王碑くらいしか知られていません。そのために、「倭の五王」が「どこにいたか」「何をしたか」に関するevidence-basedな解明が進んでいないと言わざるを得ません。
その様な中にあって、河内春人先生の近刊『倭の五王 王位継承と五世紀の東アジア』(中公新書 2018年1月25日発行)は、「倭の五王」の時代を学ぶ者にとって必読の書であると考え、河内先生に特別講演をお願い致しました。
このセミナーでは、河内先生のお話をお聴きし、『失われた九州王朝』をもう一度読み返すことにより、古田先生の古代史学の研究方法を再確認した上で、「倭の五王」の時代のevidence-based historyについて建設的な議論が盛り上がることを期待しています。
このセミナーは、研究者のみならず、古代史に関心を持つ全ての人を歓迎します。このセミナーが、若い人々が真実の古代を覗く窓になれば幸いです。
このセミナーは、大学セミナーハウスと多元的古代研究会、東京古田会、古田史学の会及び東海古代研究会が共同で開催します。
実行委員長 荻上紘一
【開会の挨拶】
大学セミナーハウス館長・鈴木康司
2年にわたり世界中を荒廃させているコロナ禍にも拘わらず、今年も古田先生の衣鉢をつぐこの古代史セミナーが、ハイブリッド形式で行われますことは、我々主催者にとって誠にうれしく、かつ光栄と存じます。いつもながら実行委員として結束してくださいました9名の方々にまず感謝申し上げますとともに、共催者として支えてくださいました多元的古代研究会、東京古田会、古田史学の会、東海古代研究会の皆様にも厚く御礼申し上げます。
また、本日、「5世紀の倭王権とその実体」という興味深いテーマで特別講演をしてくださいます関東学院大学準教授の河内春人(こうちはるひと)先生には御多忙の中、快く引き受けてくださいまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
さて開催をお知らせするちらしに荻上紘一実行委員長が述べておりますように、昨年の3世紀、卑弥呼の時代から200年ほど下って今年は5世紀、倭の5王の時代に焦点が当てられます。荻上委員長が大学時代に受講された日本史の担当、井上光貞先生の名前に、私も遠い昔の大学受験の経験を思い出しました。私が東大を受験したのが昭和27年、当時は理科、文化の別なく受験科目は8科目、社会科は日本史、世界史、人文地理、一般社会のうち2科目を選択でした。私は当時から歴史は好きでしたので躊躇なく日本史と世界史を選びましたが、そこで出題された問題が倭王「武」に関するものだったのです。おそらくこれは井上先生の出題だろうと後から思ったのですが、それは「第10代崇神天皇から数えて11代目の倭王「武」は日本のなに天皇に当たるかというような問題で空欄に天皇名を書き込むものでした。
私の世代は小学校6年の時に敗戦を迎えましたから小学校では徹底した軍国教育を受けており小学校3年ぐらいから歴代の天皇名を覚えさせられました。ですから、今の学生諸君には全くわからない伝説のかなたの天皇名でも平気で、占めたとばかり「雄略天皇」と書き込んだ覚えがあります。若い時の記憶力というのはしっかりしたもので、このおかげというわけでもありませんでしょうが浪人しないで東大に進学することができました。雄略天皇という名前を見聞きしますと今でも何となく懐かしい感じがするのはそのせいでしょうか。
全くの私事を述べて貴重なお時間を消費してしまいました。では高いレベルの学問研究セミナーが今回も自由闊達な議論の場となり、参加者の皆さんが豊かな果実を手にされることを心から願って、私のご挨拶といたします。ありがとうございました。
また、本日、「5世紀の倭王権とその実体」という興味深いテーマで特別講演をしてくださいます関東学院大学準教授の河内春人(こうちはるひと)先生には御多忙の中、快く引き受けてくださいまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
さて開催をお知らせするちらしに荻上紘一実行委員長が述べておりますように、昨年の3世紀、卑弥呼の時代から200年ほど下って今年は5世紀、倭の5王の時代に焦点が当てられます。荻上委員長が大学時代に受講された日本史の担当、井上光貞先生の名前に、私も遠い昔の大学受験の経験を思い出しました。私が東大を受験したのが昭和27年、当時は理科、文化の別なく受験科目は8科目、社会科は日本史、世界史、人文地理、一般社会のうち2科目を選択でした。私は当時から歴史は好きでしたので躊躇なく日本史と世界史を選びましたが、そこで出題された問題が倭王「武」に関するものだったのです。おそらくこれは井上先生の出題だろうと後から思ったのですが、それは「第10代崇神天皇から数えて11代目の倭王「武」は日本のなに天皇に当たるかというような問題で空欄に天皇名を書き込むものでした。
私の世代は小学校6年の時に敗戦を迎えましたから小学校では徹底した軍国教育を受けており小学校3年ぐらいから歴代の天皇名を覚えさせられました。ですから、今の学生諸君には全くわからない伝説のかなたの天皇名でも平気で、占めたとばかり「雄略天皇」と書き込んだ覚えがあります。若い時の記憶力というのはしっかりしたもので、このおかげというわけでもありませんでしょうが浪人しないで東大に進学することができました。雄略天皇という名前を見聞きしますと今でも何となく懐かしい感じがするのはそのせいでしょうか。
全くの私事を述べて貴重なお時間を消費してしまいました。では高いレベルの学問研究セミナーが今回も自由闊達な議論の場となり、参加者の皆さんが豊かな果実を手にされることを心から願って、私のご挨拶といたします。ありがとうございました。
【特別講演】「五世紀の倭王権とその実体」
河内春人(こうち はるひと)先生(関東学院大学准教授)
従来、五世紀以前の列島における支配のあり方については、記紀の記述が主軸としたうえでその他の史料を記紀の叙述に合わせるかたちで理解することが多かった。ヤマト政権の成立について記紀には、神武東征、四道将軍派遣、ヤマトタケルの遠征、神功皇后の三韓平定など軍事的な拡大として記している。しかし、考古学的な実態を勘案するとヤマト政権の軍事的成立という視点は成立しない。また、記紀に記される皇統譜は、それが成立した八世紀の皇位継承を念頭に置いて再編集されたものであり、五世紀の王権の実態を示すものではない。本講演では、五世紀の倭王権について外からの視点で記された中国・朝鮮史料と考古学的成果に基づいて、その実像について探るものである。
参加者からは、「若い河内先生のような研究者がいることに感激です。」「古田史学とは別の立場の方の考えを聞くいい機会になった。」「学者ゆえに整理された明瞭な論旨展開で理解し易い内容でした。」などの感想が寄せられました。
参加者からは、「若い河内先生のような研究者がいることに感激です。」「古田史学とは別の立場の方の考えを聞くいい機会になった。」「学者ゆえに整理された明瞭な論旨展開で理解し易い内容でした。」などの感想が寄せられました。
【記念撮影】
【講 演】
古田武彦先生が他界された後も先生に学んだ方々が各地で研究を継続されています。
今年度は、河内先生のお話をお聴きし、古田先生の著書『失われた九州王朝』をもう一度読み返すことにより、古田先生の古代史学の研究方法を再確認した上で、「倭の五王」の時代のevidence-based historyについて建設的な議論が盛り上がることを期待し、9名の方に講演をお願いしました。
その詳細は、発表原稿(PDFファイルにリンク)をご覧ください。
今年度は、河内先生のお話をお聴きし、古田先生の著書『失われた九州王朝』をもう一度読み返すことにより、古田先生の古代史学の研究方法を再確認した上で、「倭の五王」の時代のevidence-based historyについて建設的な議論が盛り上がることを期待し、9名の方に講演をお願いしました。
その詳細は、発表原稿(PDFファイルにリンク)をご覧ください。
【セッションⅠ】 文献を徹底して読む…………司会 冨川ケイ子
【セッションⅡ】 倭の五王は何処にいたか………司会 橘髙 修
●内倉 武久: 倭(ヰ)の五王」は太宰府に都していた
●草野 善彦:「倭の五王と都城」および古代国家形成と都城問題
●古賀 達也:「倭の五王」時代(5世紀)の考古学―古田武彦「筑後川の一線」の再評価―
●長谷川宗武: 「太陽の道」は倭王の居所を指し示す
●草野 善彦:「倭の五王と都城」および古代国家形成と都城問題
●古賀 達也:「倭の五王」時代(5世紀)の考古学―古田武彦「筑後川の一線」の再評価―
●長谷川宗武: 「太陽の道」は倭王の居所を指し示す
【セッションⅢ】 倭の五王時代の日本列島………司会 大越邦生
【総合セッション】……………………………………司会 大墨伸明
【情報交換会】…………………………………………………司会 西坂久和
今年度は、会場参加とオンライン参加の皆様で、夕食後に情報交換会の場を設けました。
(コロナ禍の為、お席が密にならないように、また各自には除菌シートをご用意しました。)
初参加の方を中心に、ご紹介とコメントをいただき、例年より時間は短縮されましたが皆様楽しんでいただけたようでした。
(コロナ禍の為、お席が密にならないように、また各自には除菌シートをご用意しました。)
初参加の方を中心に、ご紹介とコメントをいただき、例年より時間は短縮されましたが皆様楽しんでいただけたようでした。
【閉会】
今年度は、特別講演に河内春人先生をお招きし貴重なお話を聴いていただきました。そして、倭の五王についての活発な研究交流が行われました。
最後に和田昌美実行委員から総評をいただき、荻上紘一実行委員長から来年度に向けてのお話をいただき閉会となりました。
司会進行を努めていただきました実行委員の大墨氏・冨川氏・橘高氏・西坂氏・大越氏を初め、企画を進めていただいた10名の実行委員の方に感謝申し上げます。
今年度も、会場とオンラインでのハイブリットセミナーという形にさせていただいたにも関わらず、全国から多くの方にご参加いただきありがとうございました。これからも大学セミナーハウスが、この会の継続の一助になれば幸いです。
最後に和田昌美実行委員から総評をいただき、荻上紘一実行委員長から来年度に向けてのお話をいただき閉会となりました。
司会進行を努めていただきました実行委員の大墨氏・冨川氏・橘高氏・西坂氏・大越氏を初め、企画を進めていただいた10名の実行委員の方に感謝申し上げます。
今年度も、会場とオンラインでのハイブリットセミナーという形にさせていただいたにも関わらず、全国から多くの方にご参加いただきありがとうございました。これからも大学セミナーハウスが、この会の継続の一助になれば幸いです。
実行委員会
【実行委員長】
荻上 紘一
【実行委員】
大越 邦生
大墨 伸明
荻野谷 正博
橘高 修
竹内 強 / 畑田 寿一
西坂 久和
冨川 ケイ子
和田 昌美
荻上 紘一
【実行委員】
大越 邦生
大墨 伸明
荻野谷 正博
橘高 修
竹内 強 / 畑田 寿一
西坂 久和
冨川 ケイ子
和田 昌美
開催状況
お問い合わせ
公益財団法人 大学セミナーハウス・セミナー事業部
TEL:042-676-8512(直)FAX:042-676-1220(代)
E-mail:seminar@seminarhouse.or.jp
URL:https://iush.jp/
〒192-0372 東京都八王子市下柚木1987-1
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