第6回EUセミナー
「EUの連帯と統合の新段階 ―ポピュリズム・移民・単一市場―」
実施報告
期日 | 2017年9月22日(金)~24日(日) |
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会場 | 大学セミナーハウス |
主催 | 公益財団法人大学セミナーハウス |
趣旨
昨年決定したBREXITがいよいよ交渉を開始した。今後この交渉をめぐる展開の中でEUはどのように揺れていくのであろうか。そこにはEUそのものの本質が浮き彫りにされよう。オランダとフランスではEU離脱派の勢力は押しとどめられた。しかしいずれの政権も安定しているとは必ずしも言い難い。9月にはドイツで国民議会選挙が予定されている。岐路に立つEUの現在をBREXITを切り口に様々な角度から議論する。
(EUセミナー企画委員長渡邊啓貴)
開会式 9/22
EUセミナーは第6回目を迎え、今年も大勢の学生さんが参加してくださいました。主催者側として、休日で、しかも雨の中、この多摩の丘に集まってくださった皆様に敬意を表します。
開会式の挨拶で大学セミナーハウス鈴木康司館長が、本セミナーを企画してくださった先生方に感謝し、参加者へ励ましと期待の言葉を述べました。鈴木館長はEU連盟圏のフランス演劇を専攻し、中央大学学長、日仏会館副理事長、セミナーハウス理事を歴任しております。
開会式の挨拶で大学セミナーハウス鈴木康司館長が、本セミナーを企画してくださった先生方に感謝し、参加者へ励ましと期待の言葉を述べました。鈴木館長はEU連盟圏のフランス演劇を専攻し、中央大学学長、日仏会館副理事長、セミナーハウス理事を歴任しております。
鈴木館長の挨拶に続き、EUセミナー企画委員長の渡邊啓貴先生による第6回EUセミナーの開催主旨説明がありました。その後のパネルディスカションにおいて、各分科会担当講師の先生が課題提起のスピーチを行いました。
全体会1 9/22
分科会討論 9/22~9/23
分科会討論は、セミナー全体のプログラムの中でも圧倒的に長い時間をかけるもので、各分科会において参加学生が先生の指導のもと、それぞれのテーマをめぐり、議論、解明、さらに全体会での発表の準備をするといった進行になります。全体会での発表には中間報告と最終発表があります。
中間報告では他の分科会の学生からの質問や講師の先生方からの啓発的な指摘をうけ、それについて分科会で再度調べ、議論し、より深まった内容をまとめて最終発表へと進みます。今回の第6回EUセミナーには4つの分科会がありましたが、それぞれ中間報告と最終発表の内容が明らかに違うように感じました。最終発表では中間報告で指摘された問題に応え、解決策を示すなど、充実した内容となっていました。
参加の皆様は徹夜で資料を調べたり、パワポでの発表準備に没頭したりして、かなりお疲れだったことと思いますが、最終発表では、発表者もその他の参加者も皆活気にあふれ、真剣に議論を展開し、会場がその熱気に包まれていました。
中間報告では他の分科会の学生からの質問や講師の先生方からの啓発的な指摘をうけ、それについて分科会で再度調べ、議論し、より深まった内容をまとめて最終発表へと進みます。今回の第6回EUセミナーには4つの分科会がありましたが、それぞれ中間報告と最終発表の内容が明らかに違うように感じました。最終発表では中間報告で指摘された問題に応え、解決策を示すなど、充実した内容となっていました。
参加の皆様は徹夜で資料を調べたり、パワポでの発表準備に没頭したりして、かなりお疲れだったことと思いますが、最終発表では、発表者もその他の参加者も皆活気にあふれ、真剣に議論を展開し、会場がその熱気に包まれていました。
第1分科会
テーマ | イギリスのEU離脱 ― 単一市場と関税同盟へのアクセス― |
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指導講師 | 田中 素香(中央大学経済研究所客員研究員、東北大学名誉教授) 太田 瑞希子(亜細亜大学国際学部講師) |
第1分科会趣旨:イギリス国民は2016年6月、国民投票によりEU離脱(Brexit)を選択した。イギリスはユーロ非加盟なので、EU離脱は経済面では関税同盟、単一市場、共通通商政策、共通農業政策などからの離脱になる。ブレグジットの方式はソフト、ハード、超ハード、スムーズの4つを区別すると分かり易い。イギリスのメイ政権は「ハード・ブレグジット」を強調しつつ、自国に有利な離脱条件を引き出そうと考えている。一方、EU側の方針は、イギリスに居住するEU市民約300万人の安全(永住権など)を求めるほかは明確でない。仮に「ハード」となった場合、イギリスの金融市場シティは単一パスポートに代表される単一市場アクセスを喪失し、金融機関の大陸への拠点移転やシティの地位低下を招きうる。製造業が関税同盟アクセスを喪失すると、新たな関税賦課、税関手続き、原産地規則適用という課題に同時対処する必要に迫られる。
第1分科会では主として単一市場および関税同盟の観点からイギリスのEU離脱の経済的影響と課題について考える。
第1分科会では主として単一市場および関税同盟の観点からイギリスのEU離脱の経済的影響と課題について考える。
第2分科会
テーマ | 成功ゆえの反動 ―EUの「東」― |
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指導講師 | 蓮見 雄(立教大学経済学部教授) 中西 優美子(一橋大学大学院法学研究科教授) |
第2分科会趣旨:EUの「東」=中東欧・バルト諸国は、EU加盟を契機として経済発展を遂げ、ポーランドやハンガリーは「欧州の工場」となった成功例である。ところが、これらの国々の新政権は、排外主義を強め、民主主義および法治主義を否定するなどEUの基本的価値を揺るがす事態が生じている。この背景には、格差の広がりやEUに対する信認の低下がある。経済学者と法学者が協力しながら、この問題について考えてみたい。
第3分科会
テーマ | EUの民主的ガバナンスと市民社会 |
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指導講師 | 福田 耕治(早稲田大学政治経済学術院教授、日本EU学会理事長) 武田 健(東海大学政治経済学部講師) |
第3分科会趣旨:EU/欧州諸国は、金融・財政危機、難民・移民危機、テロリズムの脅威など多様かつ深刻なリスクに直面している。「ブレグジット」以後、他のEU諸国でも欧州懐疑派を勢いづかせ、反EU統合を訴える極右政党・ポピュリズムが台頭し、EU脱退の「ドミノ倒し」が懸念されている。EU統合が、移民・難民危機、ユーロ危機、格差の拡大や貧困、労働市場の分断など、国民、市民社会の分断を深刻化させ、反グローバル化の世論を勢いづかせてきた。第3部会では、欧州デモクラシーとEU統合の危機を招くリスクの社会的背景を明らかにし、市民社会の民主的ガバナンスの在り方について議論する。
第4分科会
テーマ | ヨーロッパのポピュリズム |
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指導講師 | 渡邊 啓貴(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授) 小久保 康之(東洋英和女学院大学国際社会学部長・教授) |
第4分科会趣旨:ヨーロッパにおいて大衆迎合主義(ポピュリズム)が勢力を急激に伸ばしている。英国のEU離脱、フランスにおける国民戦線の伸張などはその最たるものであろう。反既存体制、反エリート支配、反EU統合、移民・難民排斥といった主張を掲げるそうした政治運動がどのようにして生まれ、大衆を巻き込んでヨーロッパ政治にどのような危機をもたらしているのか、その行く末はどうなるのか、皆さんと共に考えてゆきたい。
特別講演 9/23
テーマ | Update on the EU-Priorities and Challenges- |
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講演者 | Mr. Viorel ISTICIOAIA-BUDURA駐日欧州連合大使 |
随時通訳 | 鶴田知佳子 東京外国語大学教授 |
特別講演後の質疑応答
全体会2(分科会討論の中間報告) 9/23
第1分科会
第2分科会
第3分科会
第4分科会
全体会3(分科会討論の最終発表) 9/24
第1分科会
第2分科会
第3分科会
第4分科会
(各分科会の発表を受けて質疑応答)
全体会の司会を務める四つの分科会幹事の小野哲さん、阿部和弥さん、秋元海人さん、小林慶さん
修了書交付 9/24
分科会担当講師から一人ずつ修了書が手渡されました。
第1分科会
第2分科会
第3分科会
第4分科会
全体会終了後、元都立大学総長で、長年学位授与機構の教授を務める大学セミナーハウス荻上理事長より、4つの分科会の最終発表を聞き、皆さんに確かな収穫があり、EU地域に対する知識を深められたことを高く評価するとともに、セミナーハウスとしてこのような知的な場を提供できたことを大変嬉しく思っているとの閉会の挨拶がありました。
また、挨拶の中で、会場でよく耳にした「学生」を「生徒」と表現することについて、教育基本法ではそれぞれを定義してあり、大学生は「生徒」ではなく「学生」である。正しく区別して使うべきとのコメントがあり、的確な指摘に会場も沸きました。こうして第6回EUセミナーは参加学生の皆さんの楽しい笑い声の中、閉会することができました。
また、挨拶の中で、会場でよく耳にした「学生」を「生徒」と表現することについて、教育基本法ではそれぞれを定義してあり、大学生は「生徒」ではなく「学生」である。正しく区別して使うべきとのコメントがあり、的確な指摘に会場も沸きました。こうして第6回EUセミナーは参加学生の皆さんの楽しい笑い声の中、閉会することができました。
参加状況
亜細亜大学21名、青山学院大学2名、慶應義塾大学2名、白百合女子大学1名、東京外国語大学11名(内特別講演参加者4名を含む)、東洋英和女学院大学9名、一橋大学8名(内特別講演参加者1名を含む)、立教大学11名、立正大学8名、早稲田大学1名、高校生1名、社会人1名 (計77名)
ご参加の皆様、2泊3日の間、お疲れさまでした。来年9月28日~30日に開催予定の第7回EUセミナーでお会いできることを楽しみにしております。
EUセミナーは、講師の先生のゼミ生のみではなく、EUに関心をお持ちの学生、社会人の方々のご参加を歓迎いたします。セミナーの開催情報は年度初めに大学セミナーハウスホームページに掲載いたしますのでご注目くださいますようお願いいたします。
ご参加の皆様、2泊3日の間、お疲れさまでした。来年9月28日~30日に開催予定の第7回EUセミナーでお会いできることを楽しみにしております。
EUセミナーは、講師の先生のゼミ生のみではなく、EUに関心をお持ちの学生、社会人の方々のご参加を歓迎いたします。セミナーの開催情報は年度初めに大学セミナーハウスホームページに掲載いたしますのでご注目くださいますようお願いいたします。
(EUセミナー担当:孫 国鳳)