ご支援のお願い

50周年記念事業への応援メッセージ

伝統・革新・次の50年

教育は百年の大計

大妻女子大学名誉学長・東京都立大学元総長 佐野 博敏

大学セミナーハウスが発足して半世紀が近づく。大学教員の一利用者として、新入生歓迎、大学紛争、さらに大学改革の問題への参加・討論などの思い出や多くの方々との出会いが懐かしくよみがえる。
大地にくさびを打ち込む形の本館もそのユニークさで評判になった。しかし四半世紀以上も経て、ハウスの理事長や館長として経験してみると、楔形の本館の斜めの壁面には書棚の配置も難しく、永年の間には垂直の壁に比べて埃や汚れも貯まり易いのには困惑させられた。
その貯まった塵埃が象徴したのか、その頃には各種の「立派な」活動とは裏腹のおぞましき規範無視の弊害や因襲の存在に戦慄させられ、宿痾と闘いながらの故岡宏子館長と共に何とか改革はできたが、教育の基本を考えさせられた。その後に岡館長の寿命の尽きたのは残念であったが、追悼式に皇后陛下のご来館を戴いたのは有難いことであった。
開館当初は意図的に設けられていなかった手すりなども最近は随所に整備され、ウォシュレットまで持つ宿泊設備を備えた優しいセミナーハウスに生まれ変わりつつある。半世紀をかけて教育に素直さや優しさの重要性が認められてきた時代の流れであろうか。教育は百年の大計と言われるが、世紀を超えて今後ともハウスの素直で健康な成長を期待したい。

開館50週年に寄せて

早稲田大学学事顧問・早稲田大学元総長 奥島 孝康

大学セミナーハウスの開館は、私の大学を卒業した年であった。つまり、私には在学中1度もセミナーハウスなどで合宿して討論するなどというぜいたくな経験をする機会はなかった。中学・高校まではボーイスカウトで年中キャンプを楽しみ、テントの中で仲間と実に濃厚な時間を過ごした私にとって、大学の仲間とそうした時間を共有する機会がなかったことは真に残念であった。
だから、教員としてゼミを担当するようになると、セミナーハウスを利用してゼミ合宿を大々的に行ない、その結果、わがゼミの団結力は全学に鳴りひびいた。セミナーハウスの1 日は、通常の授業の優に5回分以上の効果があるばかりか、ゼミのまとまりを強めるという大きなおまけがある。そして、これこそが大学時代を充実して過すことができるか否かの決め手なのである。

セミナーハウス50年の「不易」と「流行」

大妻女子大学学長 萩上 紘一

大学セミナーハウスの基本理念のキーワードは「High Thinking」と「Plain Living」である。セミナーハウスにおいて、前者は「不易」であるが、後者は「流行」でなければならないと思う。
2004年に館長を拝命した時には、セミナーハウスの年間利用者数は24000人程度、つまり25%程度の充足率であった。通常の旅館やホテルであれば、確実に倒産するレベルである。主たる原因は「Plain Living」の内容が開館当時と殆ど同じであり、時代の変化に対応出来ていなかったことである。さくら館の新築、バス・トイレの改善を中心とする既存の建物の改修などにより、35%程度の充足率まで回復したものの、建物の老朽化の進行に改修が追いつかない状況が続いており、苦戦を強いられている。
かつてのセミナーハウスにはなかった「営業努力」、「サービス」などの概念が芽生え、根付いたことは大きな変化であるが、ハード面の「流行」遅れは依然として深刻である。就中、食堂が現代の「Plain Living」に対応出来ていない状況は一刻も早く改善しなければならないと考える。現在の食堂を、現代の「Plain Living」に対応出来る様に改修することは不可能と判断し、食堂棟の新築を50周年記念事業の柱に据えている。新食堂棟がセミナーハウスの発展に繋がる「流行」をもたらすことを願って已まない。