セミナー・イベント

第36回国際学生セミナー
アメリカ発経済危機と現代世界

実施報告

期間 2009年11月28日(土)~29日(日)
場所 大学セミナーハウス (東京都八王子市下柚木1987-1)
主催 財団法人大学セミナーハウス
参加状況 <大学等別>
早稲田、白鴎(3)、駒沢、埼玉、愛知教育(2)、法政、慶応義塾、桜美林、首都大学東京、上智、青山学院、千葉商科、大妻女子、筑波、中央、帝京、成蹊、東京、日本、明治、立教、一橋、茨城、横浜市立、玉川、国士舘、拓殖、福岡経済、立正、立命館アジア太平洋(1)、八王子いちょう塾(7)

企画委員

委員長・青山学院大学国際政治経済学部教授 中兼和津次
副委員長・在フランス日本国公使 渡邊啓貴
法政大学経済学部教授 絵所秀紀
東京大学大学院情報学環教授 園田茂人
JICA研究所 上席研究員 武内進一
東京大学大学院総合文化研究科教授 能登路雅子
東京大学大学院総合文化研究科教授 山影 進
 

趣旨

一昨年来のサブプライムローン問題、それに昨年のリーマンショック以降、世界の経済は「100年に一度」とも言われる激震に見舞われている。全世界はまさに1929年の大恐慌以来の同時不況に陥った感がある。日本やアメリカ、それにEUといった先進各国・地域ばかりではなく、あれほど急成長してきた新興工業国(ブラジル、ロシア、インド、中国)やアジア各国も大きな曲がり角に立たされている。その上、アメリカ発のこの世界的経済危機は単に国内経済だけではなく、国際政治にも、国際関係にも、さらには各国国内の社会関係にも、あるいは人々の考え方そのものにも、大きな影響を及ぼしている。
「グローバリズムの終焉」とか、「市場万能主義の弊害」、さらには「資本主義の終末」とか「社会主義の復興」などといったことさえ叫ばれるようになった。1929年の大恐慌はその後の第二次世界大戦勃発の引き金になった。また「ケインズ主義」、「修正資本主義」の登場のきっかけになった。それでは日本は、アメリカは、ヨーロッパや、それにアジアや中国は一体これからどこに行くのか、嵐が過ぎ去れば再び明るい未来が開けてくるのだろうか?各国・地域の抱えている現状と問題を整理し、将来の方向を探りつつ、同時にそもそもこの危機をどう捉えるべきか、さまざまな視点から全国各地から集う仲間たちと議論してみませんか?
(国際学生セミナー企画委員長・中兼和津次)

開会式

荻上紘一館長開会のご挨拶

中兼和津次委員長のご挨拶

特別講演

金融危機以後の世界―意識の変革、伝統回帰、アジアの役割―
国際交流基金理事長・青山学院大学教授・元駐仏大使 小倉和夫

セクション講演

続いて、各セクション演習の講師からそれぞれの課題に関連する講演がありました。この後、セクション演習に入り、日本人学生と留学生、違う分野の専攻を持つ学生同士で新しい知と出会い、互いに理解を深めていきます。

 
A アメリカの覇権と経済危機  
  桜美林大学教授 五十嵐 武士

現在の経済危機はアメリカ発だが、それが国際的に大きな影響を及ぼしているのは、経済がグローバル化してその中心にアメリカ経済が位置しているからである。日本の経済が悪化したのもアメリカへの輸出が減少したからであり、この点はアメリカへの貿易黒字が大きい中国などの国も同様である。オバマ大統領が当選できたのも経済危機が深刻になったからであり、その経済政策の舵取りを今や世界中が注目しているといえる。
B ヨーロッパの金融危機
                                                                                                法政大学教授 長部 重康

ヨーロッパを襲った金融危機はアメリカ発であったとはいえ、ヨーロッパもまた独自の住宅バブルや金融証券化という深刻な要因を抱えており、危機を加速させた。また欧州銀行はアメリカからドルを調達して新興国を中心に世界に資金を還流させる主役を演じてきただけに、ヨーロッパの金融危機は中東欧の苦境を含めて、アメリカ以上に深刻といえる。
その上統合通貨ユーロは、金融監督機能と財政権限との加盟国間での分散、というドルや円にはない「片肺飛行」の脆弱性を抱えている。金融危機勃発時にはこの弱点が露呈し、欧州各国は「近隣窮乏化」に走って傷口を広げた。
だが仏のサルコジ大統領が、偶然ローテーションで2008年下期の「ヨーロッパ大統領」(閣僚理事会議長国)に就いていた。彼の「すさまじいスピードと向こう見ずな規則無視」(Economist)という獅子奮迅の活躍によって、ヨーロッパは救われた。これまで何事につけ「ソフト、緩やか、分裂」のヨーロッパであったが、今や「果敢、スピード、統一」に変身でき、政権末期のアメリカを助けて国際金融秩序再編で主導権を発揮しえのたである。
C 世界経済危機とアジアの地域統合
                                                                                                早稲田大学教授 浦田 秀次郎

東アジア諸国では活発な域内貿易および投資を通じて相互依存を高めながら高成長を達成してきたことから、域外に依存することなく高成長を持続できるとする「デカップリング」論が注目を集めていた。そのような中で世界経済危機が発生し、東アジア諸国は深刻な打撃を受け、デカップリング論の妥当性は否定された。世界経済危機の影響を受けて、東アジア諸国では、これまでの域外輸出依存型の経済成長モデルから域内依存を高め、バランスのとれた経済成長モデルを模索している。具体的な政策としては通貨危機に陥った場合に外貨を相互に融通するチェンマイ・イニシアティブの充実、加盟国間で貿易障壁を撤廃する自由貿易協定の東アジアでの構築などが議論されている。本セクションでは、東アジアにおける経済統合の実態を把握し、統合に影響を与える政策を分析してみたい。
D 世界経済危機と中国
                                                                                           青山学院大学教授 中兼 和津次

高成長を続けてきた中国経済も昨年末には急速に減速し、政府は4兆元の大規模な内需拡大政策をとって、必死に立て直そうとしている。失業、農民工、格差拡大、幹部の腐敗など、さまざまな困難に直面している中国であるが、この危機をうまく乗り切れることができるだろうか?中国経済と社会の抱える難題を整理しながら、あの国の持つ「しぶとさ」について考えてみたい。
E 日本社会と日本政治は危機を乗り越えられる
                                                                                          東京大学准教授 宇野 重規

グローバル化が加速するなか、人々の暮らしは否応なく、世界経済の動向によって左右されている。世界経済危機は、日本社会にとってまさに激震をもたらした。日本社会はこの激震に耐えられるのだろうか。また、日本政治はグローバルに展開する経済的圧力に対応することができるのか。今まさに問われている日本政治の力量を問い直しつつ、日本社会のあるべき姿について考えてみたい。
最終日は、各セクション演習からの発表者たちがそれぞれ議論した結果をまとめ、発表しました。参加者からの質問を発表者が真剣に答え、時には講師の先生からの厳しい問いかけを受ける場面もありました。

セッションA

セッションD

セッションE

【お茶会】

ハウス中村勲総務課長(伶風会会長)の尺八演奏はなお一層優雅な雰囲気になりました。

日本の文化を堪能していただこうと、ハウスOBの渡辺礼子様(表千家)は笑顔で参加者の皆様にもてなしをしました。(本館ラウンジにて)

【懇親会】

【開催後通信】

今回の大学セミナーに出席でき、うれしく思います。それぞれの分野の第一人者である先生の方々がわかりやすく講演をいただき、今回の金融危機について異なった角度から理解を深めました。 
美しい景色に包まれているセミナーハウスで、リラックスしながら、多くの大学からの日本人学生、留学生と仲良く切磋琢磨し、濃密な議論ができました。短い期間ですが、皆様と情報交換し、いい友達もたくさん作りました。 また機会があれば、参加したいと思います。(早稲田大学 邱兆鋒 Dセクション)
日本人学生や留学生、他の大学の学生同士の絶好な交流の場として来年もぜひセミナーハウスでお会いしましょう。