セミナー・イベント

「世界の中の中国と日本-現代中国理解」セミナー

実施報告

期日 2018年12月1日(土)~2日(日)
会場 大学セミナーハウス
主催 公益財団法人大学セミナーハウス

趣旨

   現在、世界は大きな転換期にあるのかもしれません。19世紀以来のデモクラシーと自由貿 易に疑義が唱えられ、また欧州の地域統合も大きな課題に直面しています。そうした中で中国 は世界第2位の経済大国に躍進し、昨今には新たな地域、世界秩序構想を提起しています。
  アメリカが従来通りの役割を果たせなくなる中、東アジアに住むわたしたちも、中国について、 またこの地域の将来について真剣に考えなければなりません。このセミナーでは、その中国を 内政、外交、経済、社会から考察し、日本の中国への関わり方をあらためて考えたいと思いま す。
(「世界の中の中国と日本―現代中国理解」セミナー企画委員長 川島真)

実施概要

開会式会場

 グローバルアカデミーセミナー「世界の中の中国と日本―現代中国理解」は12月1日13時半に開会しました。開会式においては大学セミナーハウス鈴木康司館長から開会の挨拶があり、続いて川島真先生の基調講演に入りました。
企画委員長の川島真先生は多様なバックグラウンドを持つ参加者の方々が1泊2日で中国を理解することは困難であることを考慮して、中国理解のきっかけを参加者の方々が得ることができればと考えました。先生はセミナー冒頭の基調講演で、政治、社会、経済、外交の四つの分科会からの問題設定の基盤作りとなるような内容を示し、四つの分科会が提示する問題(論点)同士の関連性を考えるヒントを参加者に提示しました。それによって、各分科会では参加者それぞれが問題を提起して、資料を購読し、議論を展開していき、そこで得た結論をまとめて最終発表に持っていくという作業が進められました。こうして、四つの分科会、政治、社会、経済、外交の4面から提起された問題意識(論点)、議論して得た結論をセミナー参加者全員に共有していただくことによって、「現在の中国はどのような状態にあるのか、また将来像はどのようになる蓋然性が最も高いか、世界や日本はその中国とどのように関わるべきか」を理解するセミナーとなりました。
1泊2日のプログラムは川島企画委員長のセミナーの運営方針を反映したもので、1日目の夜の全体会Ⅱにおいて各分科会の問題設定を発表し、2日目の午前は分科会で議論し、午後は全体会Ⅲで各分科会がその結果を発表しました。
 

開会式  12/1
大学セミナーハウス鈴木康司館長挨拶

鈴木館長挨拶全文
 皆さん、こんにちは。現代中国を理解するために企画しましたこのセミナーにご参加くださいまして、ありがとうございます。
隣国である中国と日本の関係は、それこそ紀元1世紀頃からといっても過言ではなく, 我々が昔日本史で習った「漢委奴国王」の時代から存在していたわけであります。そこまでさかのぼらなくても、遣隋使から始まる、中国からの歴史的、文化的恩恵は計り知れず、現代までつながる両国の関係は、好むと好まざるとにかかわらず切っても切れないものであるのは自明の理であると考えます。
 セミナーハウスも2013年までの40回にわたる国際学生セミナーの中で何回も中国に関するセミナーを実施し、特に、今回の企画の中心となってくださいました東京大学の川島真先生にはお世話になってまいりました。残念ながら、セミナーハウス側の対応がきちんとできなかった為に、この企画が中絶してしまいましたのはまことに申し訳なく思っておりました。
 幸いにして今般、川島先生のご理解により、現代中国に関するセミナーをグローバルアカデミーセミナーとして復活できましたのは、誠に喜ばしく、感謝に堪えません。
 特に、企画委員長としてこの企画を進めてくださいました、川島先生はじめ、委員としてご尽力くださいました慶應義塾大学の小嶋華津子先生、学習院女子大学の今野純先生、大東文化大学の内藤二郎先生に厚く御礼申し上げます。
 日本は1945年の敗戦以降、立憲民主主義制度を採用しておりますが、隣国である中国はご承知の通り共産党独裁による政治が続いいております。それでも経済開放政策により今や世界第二の経済大国となり、アメリカとともに世界に及ぼす影響は極めて大きいものがあります。それだけに今後の世界全体がどう動くか知るには、アメリカ、中国、さらにEU、中近東まで視野に入れて知識を得てゆく必要があると思います。私自身は1960年にフランス政府の給費留学生として渡仏以来、ついヨーロッパの情勢に目が向きがちでありますが、セミナーハウス全体としての視座はそれではならず、グローバルな展開を考えて試行錯誤を繰り返しております。
 国際関係というのはえてして隣国同士、近いが故の軋轢を生じやすい条件が重なることがあります。現在の日中関係を見るとそのような軋轢が国民感情に火をつけたり、また収まったりしている状況ですが、結局は相互理解に欠けるために起きなくてもよい問題が発生することが繰り返されているようです。このような出来事を少しでも減らすためにも今回のようなゼミが役に立つのを希望する次第です。二日間にわたる研修で参加者の皆さんが素晴らしい収穫を得て帰られることを心から願ってご挨拶といたします。ありがとうございました。
 

【全体会Ⅰ】 12/1 基調講演・一帯一路事情紹介

基調講演中の川島真先生

一帯一路事情説明(内藤二郎先生)

基調講演の様子

【分科会討論】 12/1~2

第1分科会

テーマ 中国の内政—共産党の統治はどこに向かうのか—
担当講師 小嶋 華津子先生(慶應義塾大学)

第1分科会討論模様

第1分科会主旨
この分科会では、外交を規定する内政上の要因について考察します。習近平政権の下で、共産党は、政策決定の権限や行政機能を一手に掌握しつつあります。党中央への集権化と同時に、習近平個人の権威を高める動きも顕著に見られます。マルクス主義イデオロギーが再び強調されるようになったのも近年の特徴の一つです。こうした動きが、中長期的に中国の政治や外交にどのような影響をもたらすのかについて議論したいと思います。

第2分科会

テーマ 中国の「国家と社会」関係
担当講師 金野 純先生(学習院女子大学)

第2分科会討論模様

第2分科会主旨
この分科会では、中国の社会について考察します。とりわけ、国家と社会との関係を考えていきます。中国社会は現在、高齢化という大きな課題に直面しつつあります。また、一党独裁という体制の下で格差問題などは一層深刻になり、経済発展しているというのに若い人々は就職難、住宅難にあえいでいます。この分科会では、これらの中国の社会問題とその原因、対策、そして政府のガバナンスについて考察します。

第3分科会

テーマ 中国の経済—新たな経済モデルと「新常態」
担当講師 内藤 二郎先生(大東文化大学)

第3分科会討論模様

第3分科会主旨
中国経済は改革開放以来、比較的順調な発展を続けてきていました。しかし、現在、生産労働人口が減少し始め、次第に安定成長へと向かっています。習近平はそれを「新常態」という言葉で表現しました。共産党政権にとって、経済発展は統治の正当性を維持する大きな要因です。また、中国経済には新たなイノベーションも見られています。この分科会では、現在の中国経済の抱えている課題、それへの対策、そして今後について考察します。

第4分科会

テーマ 中国の外交—中国の目指す秩序とは−
担当講師 川島 真先生(東京大学)

第4分科会討論模様

第4分科会主旨:中国の外交は大きくそのスタイルを変えつつあります。自らを発展途上大国と位置づけ、西側の先進国と異なる立ち位置で新たな国際秩序の形成を目指しているようでもあります。しかし、だからといって、既存の国際秩序のすべてに反対してはいません。このような中国の対外政策をどのように理解すればいいでしょうか。この分科会では、中国の国内状況や経済も踏まえつつ、中国の外交を考察します。

【全体会Ⅱ】(分科会での「問題設定」の報告) 12/1

第1分科会

第1分科会問題設定発表

小嶋先生コメント

第2分科会

第2分科会問題設定発表

金野先生コメント

第3分科会

第3分科会問題設定発表

内藤先生コメント

第4分科会

第4分科会問題設定発表

【全体会Ⅲ】(分科会討論の結果発表) 12/2

第1分科会

第2分科会

第3分科会

第4分科会

質疑応答

【修了書交付】 12/2

第1分科会

第2分科会

第3分科会

第4分科会

参加者全員写真(12月1日)

参加状況

参加者 47名
 お茶の水女子大学5名、学習院女子大学9名、慶應義塾大学6名、東海大学 2名、東京外国語大学3名、東京大学7名、日本大学1名、一橋大学1名、武蔵野大学1名、ラトガース大学1名、立教大学1名、早稲田大学1名、八王子市学園都市大学1名、社会人8名(基調講演のみ参加2名を含む)。
                                                                                     
 

開催を終えて

皆様、1泊2日大変お疲れさまでした。セミナー実施報告として問題設定、結果発表の内容をまとめて公表すべきと考えましたが、膨大な量で今すぐここでは到底できないもので、ここではまず上記のようなセミナーの進行状況をご報告いたします。
四つの分科会より提起された問題意識が多方面からのもので、それについて議論され発表された内容もまたさまざまな角度からのもの、政治、社会、経済、外交の中の一つの分野においてもいくつかの問題点を挙げて各自の見識が発表されました。全体会Ⅲ時の各分科会の結果発表を聞いている内に、立体的な現代中国が見えてきた感さえありました。来年も引き続き開催していきたいと思います。(担当者 孫)

セミナーを終えて参加者から次ような感想が寄せられました。

★いろいろな問題について、緻密に、体系的に議論することができた。大変勉強になりました。(吉見様・学生)

★様々なバックグラウンドを持つ人達と中国の様々な面に対して議論し、検証し、結論を導出すという一連の流れを短い間ではありましたが、行うことができ、満足しております。(齋藤様・学生)

★大学内でのディスカッションを超えて、より内容の濃いもので、中国に対する知識が深まったと思います。(熊井様・学生)

★このようなイベントにあまり参加しなかったですが、参加してみて議論やチームワーク、プレゼンに関して自分が足りないところが多いと感じました。議論するうえで下調べと積極性が大事だと思います。チームワークに関しても自己が果たすべき役割をもっと明確して、自分が担当する分だけでなく、他人への配慮もフォロー、サポートも大事だと思います。プレゼンに関しては、うまく発表できるためにもっと練習することが必要があると思います。(任様・学生)

★中国関連学科の学生、博士課程の中国人留学生、1980年代に中国で工場を立ち上げた方など、日常お話を聞けない方たちの考え方に触れられました。ゴール設定が「考えるきっかけ」でしたので、各本の発表内容にも満足できました。(横井様・学生)

★大学ではグループワークをする機会がほとんどなく、グループ内で話し合いを進めて、一つの問いに対して一つの答えを出していく過程がとても新鮮でした。また大学院生や社会人の知識が豊富な方も多く、様々な意見を聞くことができて、ためになりました。また、研究するにあたって、同資料を活用するかわかってきたような気がします。(学生)

★中国に関心を持っている方々と出会ってとてもうれしく思います。また先生方々に貴重なご意見とコメントをいただき、セミナー参加の皆様と意見の交流ができてありがたく思います。今回のセミナーを通じて、中国について政治、社会、経済、外交という4つの側面から考え直す機会を頂きました。(学生)

★今までの経験の中で最も勉強になった2日間でした。分科会での課題が多く午前4時半まで資料を読み込んだことも良い思い出です。本当に来ている方々のレベルが高く終始緊張していましたが、同時にかっこイイなとも思いました。自身の得rベルアップにもつながり、中国研究への意識が今まで以上に高くなりました。大変なことも多かったですが、様々な人と出会うことができ、たくさん考える機会を頂け、充実した密度の濃い2日間を過ごすことができました。(学生)

★僕にとってはとても難しい討論会でかなり疲れました。しかし、とても充実した2日間でした。年上の方が多く知識量も僕よりあり、刺激をもらいつつ、その中でも僕の意見を主張できたこともあり、とても良い経験になりました。今回は一帯一路について討論をし、それに関しての知識が付いたことに加えて、物事を考えるときは様々な角度から見ると、まったく違う見え方があることを学びました。(小林様・学生)

★問題の設定が、現実の生きた世界であり、外国、中国のテーマであり、事実(先生方、留学生からの)に基づいた情報・指導に新鮮さを感じた。ますます中国の研究(現在は中国共産党)を深堀して世界と東アジアの安定、秩序のための民意に役立てれば幸いである。孫世代との交流ですが、しかも中国等の留学生との良い機会を頂いて、感謝しています。(大久保様・社会人)

★関心のある人たちで、集中的に議論するのは学習の面で効果的なのではないかと思います。(稲田様・大学教員)

★いろいろな分野と背景の方々と交流できて、よい経験になりました。(学生)

★様々な大学、国籍、世代の方々とのお話、議論する機会はまずないので、貴重かつとても面白い2日間だった。ただ、2日間という短い期間で、中国について議論するには時間が全然足りなかった。中国について、まだまだ議論すべき問題は多いなという印象を受けた。質問やコメントなどレベルが高くて圧倒されてしまったが、理解して様々なポイントで疑問点を持つことの大切さに気付いた。(学生)

★非常に良かったです。ぜひまた参加したいと思います。4人の教授方、専門性を持った様々な方と討論することができ、とても幸せな気持ちになることができました。中国についてもっと勉強したいという気持ちになることができました。

★講師陣の木目細かいご指導を頂き、感銘をうけております。私個人としては、社会人参加者として学生参加者と積極的に交流し、活動できました。(坂本様・社会人)

★大変有意義な会になりました。(山口・学生)