第3回アメリカセミナー
「コロナ禍が変えるアメリカ、世界」
実施報告
日 程 | 2021月10月16日(土) |
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開催形式 | Zoomを用いたオンラインセミナー |
対象 | 大学生(大学院生、留学生を含む)、社会人 |
会 場 | Zoomミーティングルーム |
主催 | 公益財団法人 大学セミナーハウス |
【開催趣旨】
軍事力や経済力で他国を圧倒してきた米国は、このたびの新型コロナ感染の広がりの中で、世界最大の被害国となっている。新型コロナ感染による死者は、2021年2月末の時点ですでに50万を超え、その後も増え続けている。50万という死者数は、2度の世界大戦の死者、ベトナム戦争での死者を加えた数に相当する、凄まじい数字だ。まさに戦争以上の被害を出しているのである。今回のコロナ禍は、アメリカの安全保障、政治外交、社会にもさまざまな影響を与えており、その影響は、相当に永続的なものとなると見込まれる。本セミナーには、5名のさまざまな分野で活躍する講師たちが集い、現在アメリカに起こっている変化を多面的に掘り下げ、受講生との間で徹底的に議論し、今後のアメリカ、日米関係、世界政治のありようを展望する。(企画委員長 三牧聖子)
【開会の辞】
参加者の皆さんおはようございます。ウィークエンドにも拘らず、セミナーハウスのアメリカセミナーにお集まりいただき、主催者として厚く御礼申し上げます。今回も、コロナがある程度は沈静の兆しを見せているとはいえ、まだ慎重な行動が必要な時期だけに、対面ではなくオンラインでのセミナーとなります。
お忙しい中にも拘らず、企画委員長の三牧聖子先生をはじめ、講師の先生方の積極的なご努力、ご協力を得ましたことを厚く御礼申し上げます。先生方には今回、実に興味深いテーマであります「コロナ禍が変えるアメリカ、世界」を取り上げて頂きました。昨年はちょうど大統領選挙の直前でありましただけに、異端の大統領トランプがはたしてどうなるかという推測も手伝っていろいろな推理がなされておりましたが、今年はバイデン大統領による民主党政権が返り咲き、世界的危機と言われる地球温暖化などの諸問題を解決するための国際的取り組みにアメリカが復帰するという積極的な動きを見せているのは評価できるかと思います。しかしながら、アメリカがリードする立憲民主主義による国際秩序を否定するかのような中国、ロシア、北朝鮮、ベラルーシなどの強権政治、またアフガニスタンをはじめイスラム世界との向き合い方など、コロナ禍がたとえ去ったとしてもその後の世界秩序、平和はどう維持されてゆくのか、もはや世界の警察であることを放棄したかの言動を続けるアメリカ政府は今後国際社会でいかなる位置をしめるのか、興味津々たるものがあります。今回はまさにアクチュアルな問題が先生方から提起されており、参加者の皆さんには実に実りのあるセミナーになると存じます。どうぞ充実した時間を過ごされ、先生方との交流を楽しんでくださるよう願いまして私のご挨拶といたします。
お忙しい中にも拘らず、企画委員長の三牧聖子先生をはじめ、講師の先生方の積極的なご努力、ご協力を得ましたことを厚く御礼申し上げます。先生方には今回、実に興味深いテーマであります「コロナ禍が変えるアメリカ、世界」を取り上げて頂きました。昨年はちょうど大統領選挙の直前でありましただけに、異端の大統領トランプがはたしてどうなるかという推測も手伝っていろいろな推理がなされておりましたが、今年はバイデン大統領による民主党政権が返り咲き、世界的危機と言われる地球温暖化などの諸問題を解決するための国際的取り組みにアメリカが復帰するという積極的な動きを見せているのは評価できるかと思います。しかしながら、アメリカがリードする立憲民主主義による国際秩序を否定するかのような中国、ロシア、北朝鮮、ベラルーシなどの強権政治、またアフガニスタンをはじめイスラム世界との向き合い方など、コロナ禍がたとえ去ったとしてもその後の世界秩序、平和はどう維持されてゆくのか、もはや世界の警察であることを放棄したかの言動を続けるアメリカ政府は今後国際社会でいかなる位置をしめるのか、興味津々たるものがあります。今回はまさにアクチュアルな問題が先生方から提起されており、参加者の皆さんには実に実りのあるセミナーになると存じます。どうぞ充実した時間を過ごされ、先生方との交流を楽しんでくださるよう願いまして私のご挨拶といたします。
【講師講演】
(5人の講師先生は独自のアメリカに関する見識を話してくださいました)
講演1
テーマ:米中の体制間競争をどう見るか
担当講師:三牧 聖子先生(高崎経済大学)
主旨:2021年に大統領に就任して以来、ジョー・バイデンは、民主主義や人権を基軸とする外交を掲げ、中国政府による新疆ウイグル自治区での人権侵害や香港での民主派弾圧を厳しく批判してきた。しかしアメリカは果たして、世界に向かって人権促進のリーダーを誇れるような外交政策をとってきたのだろうか。新型コロナ感染症が広がる中でも、アメリカがイランやベネズエラへの経済・金融制裁を継続したことは、非人道的な「経済戦争」と多くの国の批判を集めている。パレスチナ人への抑圧姿勢を強めるイスラエルに対する支援は、バイデン政権も根本的には変更しようとしていない。8月には、女性や宗教的マイノリティーが迫害されないような仕組みなどを整えることなく、アフガニスタンから性急に撤退した。本講演ではこうした事例や、ドローン攻撃や経済制裁など、相対的に「犠牲が少ない」とされ、不問に付されがちであったアメリカの暴力を改めて考えたい。
講演2
テーマ:ノン・ヒューマンと作るアメリカの安全保障
:前田 幸男先生(創価大学)
主旨:気候危機とコロナ禍というノン・ヒューマンからのシグナルを人類は受けているが、その応答の仕方をめぐって、アメリカは今後の日本の動向を考える上でも最も注目されるべき場所の一つといえる。気候関連で言えば、北米西海岸で起きている熱波や森林火災は命を脅かすレベルになっており、結果、飢饉からくる食料問題、エネルギー問題、海面上昇問題など、複数の課題が一気に噴出してくる。また新型コロナウィルス関連で言えば、「反科学的態度」という問題、共和党州と民主党州で起きている対照的な動き、社会的弱者に集中する様々なしわ寄せの問題などが顕在化している。以上を踏まえ、ノン・ヒューマンとの共存という観点から、社会保障のあり方、都市設計やライフスタイルの見直し、さらには自然との向き合い方といった様々な論点を掘り下げて新しい安全保障のあり方を考える機会としたい。
講演3
テーマ:アメリカ中心のリベラルな国際秩序は権威主義秩序に敗北するのか?
講 師:五野井 郁夫先生
主旨:こんにちアメリカを中心とする自由民主主義の国際秩序は危機に差しかかりつつある。アフガニスタンにおけるアメリカを中心とする自由民主主義諸国の「撤退」とタリバーンの政権奪還は、21世紀の世界秩序に変更を迫る国際政治上の大事件だった。タリバーンの後ろ盾となったパキスタンや、早々に友好的立場を打ち出したロシアや中国のような権威主義体制の政府が、近年では民主主義の政府よりも増加傾向にある。本講演では冷戦期から論じられてきた非民主主義体制のほうが資本主義における生産性や効率性に寄与するとの開発独裁論や、その現代版であるコロナ禍での非民主主義国のほうが統治効率性がよいというプロパガンダ、さらには人権よりも経済を優先する暗黒啓蒙のような新たな政治思想を装った新自由主義の現在を検討し、国際秩序の今後を検討したい。
講演4
テーマ:「ポスト・コロナ」時代の米中対立
講 師:峯村 健司先生
主旨:中国で新型コロナが発生後、トランプ政権は速やかに人的往来を遮断して「デカップリング(分離)」にかじを切った。米国内の中国人留学生や中国メディアの記者の数を制限している。中国政府の隠蔽疑惑を批判しており、米国内の反中感情が高まっている。これに対し中国も応酬し、自らの共産主義体制の優位性を強調。互いの憎悪が高まっており、イデオロギー対立の様相を帯びている。コロナはいわば「触媒」として、米中対立をより深めることとなった。
講演5
テーマ:NHKワールドJAPANプロデューサーの視点から見るアメリカと世界
講 師:高木 徹先生
主旨:NHKが世界への発信を行う国際放送の中でも主力である英語TV放送「NHKワールドJAPAN」のプロデューサーとして、アメリカ発のその時最も旬な話題にダイバーシティ豊かなキャスターが切り込む対談番組「DEEPER LOOK from New York」や、世界の“もっとも話を聞くべき”識者をオンラインでつなぐ大型討論番組「GLOBAL AGENDA」、そして環境をテーマにアメリカの公共放送ネットワークPBSと共同制作する「Zeroing In: Carbon Neutral 2050」の最新の放送を紹介しながら、”コロナがもたらした社会の変質”、”トランプ大統領の「負の遺産」としての最高裁判事の保守化の影響”、”カーボンニュートラルをどう達成するか、現場からの報告”、”激動のアフガニスタンをアメリカと世界がどう見るか”そして、東京五輪でも大きな話題となった”スポーツ選手のメンタルの問題とどう向き合うか?”といったトピックなどの中から関心の高いものを選んで考える。(最新の情勢に合わせて内容は変更の可能性があります)
【グループ討論結果発表】
講師講演後にグループに分けて講師を囲み、参加者議論を行いました。各グループの議論結果を最後の全体会においてグループごとに参加者全員が各自の見解を述べました。それを受け、講師からコメントがあり、閉会となりました。
【修了書交付』
メールにて送付いたします。
【参加状況】
12大学32名、社会人6名
青山学院大学4、亜細亜大学1、桜美林大学2、国際基督教大学9、埼玉大学大学院1、上智大学1名、政策研究大学院大学1名、創価大学4、高千穂大学6名、東京大学1名、獨協大学大学院1名、明治学院大学1名、社会人6名
【閉会時参加者写真】
【参加者の声】
全体会1
- 様々な角度からアメリカを見ようとしている姿勢がわかった。
- 各先生方のお時間をもう少し設けていただき、じっくりとお話を伺いたかった。
- 各先生の異なる視点を知ることができて興味深かった。
- ほとんどの人が発言をして皆さんがどんなことを考えているか知れたのが良かったです。
- 本当にいろいろな人の考え方を知ることが出来て新しい発見を頂きました。民主主義のこと、 メディアリテラシーを身に付ける大切さを改めて感じました。
- 米中関係や中国の引き締め強化について非常に面白い話が聞けて満足した。参加していた他の方の質問のレベルが高く、怖気づいてしまった。
- みなさんの多様な意見を聞くのがとても楽しかったです。一人ひとり指名していただいたのも よかったと思います。口に出さなくてもおもしろい考え方を持っている人はたくさんいるので、そういう人の声が聞けてよかったです。それについてさらに先生が一歩先のご指摘をしていただいた おかげで議論が深まったとも思います。
- どのグループの報告もとても面白かったです。アメリカの負の面と良い面をきちんと見つめ、 民主主義を押しつけるのではなく、なぜそのような状況になっているのかを世界の中で権力を持ている国が振り返ることが重要であると感じます。
- インプットした内容について参加者の方々がそれぞれの中でどのように消化し、そしてどのような考えを持たれたのか聞くことができて面白かった。
- 全大会1では規模が小さいので参加者全員が発言することで議論が深まりましたが、全大会2で 参加者全員の意見を聞いていると、どうしても時間が押してしまうかなと思います。2では、できればただの成果発表ではなく、各グループの枠を超えた議論がしたかったです。ですので、各グループのまとめや成果発表は5分程度と時間を決めて、そこから自由に多角的な視点から今回の「アメリカ」という議題について話す、とかでもよかったとも思います。
【企画委員】
企画委員長
三牧 聖子(高崎経済大学経済学部国際学科准教授)
委員
前田 幸男(創価大学法学部教授・国際基督教大学社会科学研究所研究員)
五野井 郁夫(高千穂大学経営学部教授・立憲デモクラシー会呼びかけ人)
峯村 健司(朝日新聞社編集委員国際関係・米中関係担当)
【お問合わせ先】
公益財団法人 大学セミナーハウス
セミナー事業部
〒192-0372 東京都八王子市下柚木1987-1
TEL:042-676-8512(直)FAX:042-676-1220(代)
E-mail:seminar@seminarhouse.or.jp
URL:https://iush.jp/
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